2019年9月9日(月)
Kyoです。
前回に引き続き、ドイツ訪問で感じたことを記します。
【長いのは昼?夜?】
ドイツは日本に比べて緯度が高いため、昼の時間が長いと感じられます。夜8時になっても明るいです。ところが、ドイツのお店は8時まで待ってくれないことがあります。
ケルンの繁華街は日中とても賑やかです。同じブロックの通りにカフェが3つも4つもあって、通りに出されたテーブルでは多くの人が座ってコーヒーを楽しみながらおしゃべりしています。かと思えば、夜8時前には閉店してしまい、同じ通りとは思えないくらいに閑散としてしまいます。「外はまだこんなに明るいのに」とギャップに驚かされます。
ドイツは閉店法により、小売店の閉店時間が決められています。日曜日・祝日の営業は原則禁止とされています。日本でおなじみの24時間営業のコンビニエンスストアなどを見ることはありません(駅構内ではコンビニに近い売店を見ることがあります。淹れ立てコーヒーを注文することもできます。)。
このため、旅行者などが観光していて遅い時間にホテルに着いたときに、周りのお店は開いておらず、小腹を満たすための食料を調達できなくなるという事態が起こります。
レーブだ。
ドイツの年平均労働時間は1356時間(2017年)だ。日本の1710時間と比べると「2割」も短い。さらに、この数字はOECD加盟国の中でも最短に位置する。また、連邦休暇法により、有給休暇を取得するしくみがとても充実している。集中力をもって、より効率的に仕事を行うべきという根本的な姿勢の表れと言える。(熊谷徹「ドイツ人はなぜ、年290万円でも生活が『豊か』なのか」青春新書)
なるほどですね。日本では仕事に追われてゆとりが少ない中、よくよく考えればさほど必要のなかったものまで、ついつい衝動的に買ってしまうといったストレス解消に走ってしまうのかもしれません。
今、コンビニエンスストアの24時間営業見直しの議論が高まりつつありますが、こうした「部分」だけを見て直すのではなく、国全体で働き方改革をさらに推し進めることによって平均労働時間を圧縮し一人一人がゆとりを持つこと、他人と比べて見栄を張るということはやめて個人個人が自分の生き方についてブレない考え方を持つようにすることなど、精神的な部分も含めて全体的にシステムを見直す視点を持つことが大事です。
【ドイツはボードゲーム大国】
「遊ぶ」にしても、日本ではお金を使うことが当たり前とされていますが、ドイツでは違うようです。 余暇は自然を満喫すること、家族と一緒の時間を過ごすことを重視しています。これならばあまりお金をかける必要はありませんね。
ドイツの冬の寒さは厳しいです。南部の大都市ミュンヘンでさえも日本の札幌よりも北に位置します。今回は真夏の訪問でしたが、あいにく雨の日が多く、半袖Tシャツ1枚では寒いと感じることが多かったです(あと、どうでもいい話ですが、雨傘ではなく服に付いているフードでやり過ごす人が多かったのも印象的です。当然、びしょぬれですが。)。
したがって、冬場は戸外での活動に制約がかかります。 こうしたことからでしょうか、ドイツではウィンタースポーツにいそしむほか、屋内で遊べるボードゲームが盛んです(街中にはプレーステーションなどのゲームショップがあるので、こうしたTVゲームも一定程度受け容れられていると思います。)。
ソシエッタです。
中道裕太氏のコミックス『放課後さいころ倶楽部」では、「カタン」、「パンデミック」などの大ヒットしたゲームが紹介されています。登場人物の一人はドイツ人ですが、家族や友達と屋内でボードゲームを楽しんでいる様子が描かれています。
Kyoです。ミュンヘンにある「Oblitter」というおもちゃ屋に行くと、たくさんのボードゲームが並んでいる光景を見ることができました。モノポリーのご当地版もありました。ただし、どれもドイツ語仕様です。店員に、「英語の解説書が付いているゲームは無いのか?」と尋ねたら、わずか数点のゲームを紹介してもらえました。
どれもぱっとしなかったので、英語版はあきらめて、ドイツの2017年ボードゲーム大賞を取ったという「EXIT」というゲームを購入しました。インターネットを使ってドイツ語の解説書を翻訳しながら遊ぼうと試みましたが、あまりにも難解で、残念ながら挫折してしまいました。
【効率的な働き方で経済は順調】
今年は、共通通貨ユーロの導入(1999年1月1日)からちょうど20年です。1992年に欧州連合(EU)が発足し、今や加盟国は28か国となりました。ユーロはその象徴です。今回はオランダ訪問も兼ねていましたので、用意する外貨が一種類で良いというのは正直とても楽でした。
フィナよ。
あまり知られていないと思うけど、ユーロ圏19か国の金融政策を担う中央銀行「欧州中央銀行(ECB)」の本拠地は、実はドイツにあるの。商都フランクフルトにセンタービルが建っているわ。これは、ドイツ連邦銀行やドイツ州立銀行をモデルにしたからよ。やっぱり、ドイツは経済・金融で強いのよね~。
そうでしたね。でも、2008年の世界金融危機以降は、必ずしもうまく機能している訳ではありません。統一通貨ユーロによって、スペイン、フランス、イタリアその他のEU諸国は平価切下げを構造的に妨げられているとされています。そして、ドイツからの輸出だけが一方的に伸び、EU域内における貿易不均衡が顕在化し、ドイツの独り勝ちとさえ言われています。
(エマニュエル・トッド「『ドイツ帝国』が世界を破壊させる」文春新書)
それでいて、ドイツ人はみんな金銭的に豊かなのかというとそうでもありません。驚くべきことに、年平均可処分所得は約290万円です!
理由の一つに、社会福祉制度が手厚く、公的年金保険や健康保険の保険料率が高いことが挙げられます。このため、あるアンケート調査では「全く貯金していない人」が27%もいたそうです。ちなみにこの数字はヨーロッパ13か国中2番目に高い数字でした。
ドイツでは合理的な考え方が尊重されます。フランスの歴史人口学者であるエマニュエル・トッド氏の分析によると、日本人もドイツ人と同じく「一子相続」を念頭に置いた「直系家族」社会だそうです。
こうした社会では、「農地」と「家」という不動産と密接に結びついたシステム、跡取りを育てるための教育熱心さ、地方分権型の連邦制(日本では戦国時代や江戸時代などが相当します。)などが特徴とされています。(鹿島茂「エマニュエル・トッドで読み解く世界史の深層」ベスト新書)
合理的できっちりしているという点にかけては日本人もドイツ人に劣らないはずです。人口動態、経済環境など日本社会をとりまく情勢は決して楽観視できないところですが、変な背伸びはせず、合理的な考え方でもって生活を楽しむことをもっと考えてもよいのではないでしょうか?ドイツ人の生き方や考え方は私たちにとって一つの参考になるかもしれません。
次回は、ところ変わってオランダ訪問についてレポートします。