2020年3月9日(月)
ハルです。
新型コロナウイルス(COVID-19)が猛威を奮っています。国内の感染者数は回復した人も含め400名を超えました。クルーズ船もそうでしたが、屋形船やライブハウスなど閉鎖的空間での「クラスター」と呼ばれる密集感染が報告されています。
そして、専門家会合の設置、学校の休校、イベントの中止・延期、さらには中国・韓国からの渡航者に対する検疫の強化など政府は次々と手を打っており、確実にパンデミック防止策のステージが上がっていることが感じられます。
( 撮影者:三浦邦彦/読売新聞AP写真)
国際的な感染症としては、昔であればペストやインフルエンザ、最近ではSARS(重症呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)などが有名です。これらの疾患が恐れられているのは、以下の理由からです。
・感染者数が多いこと。
・死亡者が出ていること。
・根本的な治療薬が無く、その開発に時間を要すること。
中国における新型コロナウイルスの感染者数及び死亡者数はSARSのそれを超えました。脅威としては十分です。さらに、現代においては、国際的に観光産業や人の移動がさかんです。新型コロナウイルスは昨年12月に初めて出現が報告されましたが、3月6日時点で世界の感染者数は回復した方を含め15万人を超えています。
今後も、一部の地域で風土病とされていたものが瞬く間に世界中に拡がるパターンは続くでしょう。日本においても、「水際作戦」と言われる検疫体制をはじめ、国内における常時からの危機管理体制は大事になります。
こうなると、声として挙がりそうなのが、
①個人の感染可能性を極力少なくする。
②人の移動を監視する。それができなければ移動を制限する。
という方策の実現です。
①については、日本人の意識は十分高いです。手洗いやうがいは学校教育の段階から教え込まれています。マスクや消毒剤も様々な商品が売られています。また、「健康」や「抵抗力」への意識も高いです。健康関連書籍は本屋のコーナーひとつ分を占拠します。サプリメントも人気です。新型コロナウイルスについても、ニュースや雑誌等で様々な予防法が紹介されています。
こうしたことから、新型コロナウイルスについても、日本国内に関して言えば、感染例が多数認められたとしても死亡にまで至るケースは、高齢者や持病を持っているなど免疫力が低い方を除けば少ないと思われます。それくらい日本はリスクが低い社会になっているのです。
課題は②です。中国の場合、監視社会とはいえ実際に捕捉できるのは中流階級以上の人に限られています。一方の貧困層については、監視システムから抜け落ちているどころか、そもそも身分証を持ってない、身分証が必要な鉄道や飛行機でなくバスや相乗りのトラックを利用する、という形でその網に引っかかりません。この結果、中流階級層にも感染のリスクが及ぶ事態となっています。(NEWSWEEK 2020.2.4)
感染者を発見した場合に放置することは許されません。感染者の行動履歴をトレースし、いち早く接触歴を確認する必要があります。そして、接触が確認された人については迅速に健康状態を確認の上、必要な行動制限を求めることとなります。このようにして、一刻も早く事態の収拾を図ることにより、健康被害だけでなく経済活動への影響を最小限にすることが重要です。
このため、非常事態に至る前の段階から、個人を特定してその移動をトレースすることを可能とする仕組みの構築を望む声が出てもおかしくありません。今回の騒動が落ち着けば、中国は本気を出して監視システムの整備を急ピッチで進めていくことが想定されます。
日本の姿勢も問われるでしょう。当面は東京オリンピック・パラリンピックの開催の是非に焦点が当たっていますが、2025年の大阪万国博覧会へのプレッシャーは一層強まることが想定されます。国際イベントのさらなる招致にも支障をきたすおそれがあります。
監視システムの構築は非現実的だとする声もあるでしょうが、「個人の人権」を上回る「国全体の危機管理」の議論があることが今回露わとなったと言えるでしょう。
これからの感染症対策は新たな段階を迎えます。感染の拡がりに伴う主な対策(学校休校、イベント中止、行動監視、外出禁止など)を、段階ごとに予め提示しておくこと、そして、対策が後手に回ることによる健康被害やコストを算出し、こうした危機管理のための「統制」がいかに必要であるかについて、国内のコンセンサスを得ておくことが重要です。
今、毎日のように新たな対策が提示されていますが、いちいち驚くことなく冷静に受け止められるだけの知識と心の準備を、一人一人が日頃から持っておくことが求められるのです。