コロナだからこそ、「グリーンリカバリー」(緑の復興)!

2021年7月5日

 エンヴィです。

 

 東京オリンピックパラリンピックの開催が近づいてきました。でも、新型コロナウイルス感染症の猛威は止まりそうにありません。国内ではワクチン接種が進んでいます。ワクチンの効果が出てくれば、今の日本全体を覆う雰囲気は変わってくるでしょうか。 

 

 新型コロナウイルス感染症拡大は「環境問題」です。人間の活動によって引き起こされた不都合は全て環境問題と言えるからです。人口が多く密な環境と、人や物が自由かつグローバルに行き来するシステムが感染拡大を引き起こしました。

 人為的に引き起こされたものなら、人の手でコントロールすることが可能と考えてしまいがちです。しかし、公害問題など過去の環境問題を振り返ってみて下さい。いったん「環境問題」にまでなったものをコントロールすることは至難の業です。新型コロナウイルス感染症も人為的にコントロールするのは容易ではありません。かえって新たな問題を生む可能性があります。(池田清彦「環境問題の嘘令和版」MdN新書)

 では、どうしたらいいのでしょうか。「環境問題」と捉え直して、ポストコロナのあり方を考えることです

 

f:id:KyoMizushima:20210505221120j:plainf:id:KyoMizushima:20210505223003j:plain

 

 答えとなる考え方は「グリーンリカバリー」(緑の復興)です。新型コロナに対応するため、各国で都市のロックダウンなど経済活動や人の移動を制約する措置が導入されました。二酸化炭素排出量などが減少し大気汚染も改善しました。ハワイの海やベネチアの運河も甦りました。「グリーンリカバリー」は、こうした効果を一時的なものとして終わらせず、以前よりも持続可能で健全な経済につくり変えようとする考え方です。 

 各国の反応は早かったですEUは2020年7月、「次世代EU復興基金」の設立に合意しました。7500億ユーロ(約92兆円)を調達し、このうち少なくとも30%は気候変動に充てることとしました。対象は、再生可能エネルギー、省エネ、水素などクリーンエネルギーへの資金提供、電気自動車の販売やインフラへの支援、農業の持続可能性を向上させるための措置といったものです。

 新型コロナの抑え込みに成功しているアジア諸国も自信をつけたのでしょうか。苦しむ日本を尻目に一歩先を行っています。韓国の文在寅大統領は、環境分野での雇用創出を目指した「グリーン・ニューディール」政策に946億ドルを投じると表明しました。中国の習近平国家主席は、2060年までに二酸化炭素排出量と除去量を差し引きゼロにする炭素中立(カーボンニュートラル)を目指すと表明しました。

 環境問題に消極的だったあのアメリカでさえ、政権交代を経て、方針転換しました。2050年までに経済全体で温室効果ガスのネットゼロ排出、持続可能なインフラとクリーンエネルギーに投資、住宅の耐候化への投資で100万人以上の雇用創出といった方針を打ち出しています。(松下和夫「気候危機とコロナ禍」知の新書)

 

 通常であれば、目の前の感染症対策と経済対策が優先され、長期戦が強いられる環境対策は後回しにされがちです。しかし、新型コロナウイルス感染症は現代のシステムの脆弱性を顕わにしました。すなわち、大量のエネルギーを注ぎ込むことで成り立つ都市とモーダリゼーションが感染拡大にとって格好の餌食なのです。この本質を踏まえて、ポストコロナに向かって大きく舵を切ることが求められているのです。

 嵐を突破するヒントは、極端なシチュエーションを想定し、逆算的に考えることです。世界戦争などで大破局が起きた時、生き残った私たちはどうするかと・・・。

 例えば、エネルギーについては化石燃料の利用は制限されます。もはや再生可能エネルギーを使うしか選択肢はありません。太陽光や風力による発電が選択されます。都市交通はガソリンより電力が有利でしょう。かといって、これら再生可能エネルギーを作り出すコストや資源も無視できません。自然と使用目的や量を制限することになるでしょう。

 エネルギーの制約は農業にも影響します。現代農業は、食糧1カロリーのために約10倍の熱量分の化石燃料エネルギーを消費しています。ドイツで制度化されている貸し農園「クラインガルテン」を参考に、それぞれの地域で有機農産物を作ることを推奨してはどうでしょうか。自給の術を覚え、物の輸送を減らせます。(ルイス・ダートネル「この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた」河出文庫

 

 日本も思い切った方針転換を図るべきです。国民や産業界と危機感を共有し、理解を求め、「グリーンリカバリー」を前提にした復興を推し進めていくのです。それは、人や物の移動をできるだけ域内循環に止め、エネルギー利用の効率化を究めることです。そこから工夫(イノベーション)が生まれることが期待できますパンデミックが起こりにくく、かつ、環境リスクが最小化された、持続可能な社会を構築するのです。