2020年6月22日(月)
エンヴィです。
「あつ森」が大人気です。「あつ森」とは、任天堂のゲームソフト「あつまれ どうぶつの森」の通称です。新型コロナウイルス感染症の拡大で「巣ごもり消費」を強いられることとなった子供たちにはもってこいのゲームとなりました。
ゲームの内容は無人島で動物たちと一緒になって手作りの生活を始めるものです。登場する動物はペットではありませんが、ペットと同じように身近で可愛い存在として描かれています。
動物とあたかもコミュニケーションが取れるかのように感じる・・・・・そこに「落とし穴」があります。
ペットは身近な存在です。犬猫を飼っている世帯はそれぞれ約1割です。両者を合わせると2割に達します。そして、日本のペット産業は1兆5000億円にも上ります。
【参考】2018年全国犬猫飼育実態調査(一般社団法人ペットフード協会)
飼育世帯数(飼育世帯率) 飼育頭数
犬 715万世帯(12.64%) 890万頭
猫 554万世帯(9.78%) 965万頭
街中のペットショップに行くと、ゲージの中から可愛い犬や猫が顔を覗かせています。「飼いたい!」と衝動にかられる気持ちが分からなくもありません。しかし、そうやってペットを飼っている人たちはどこまで「現実」をご存知でしょうか?
ペットの価値は年齢で決まります。幼いほど可愛いし、しつけがしやすいので価値が高くなります。でも、体は未熟です。病気への抵抗力も十分ではありません。新型コロナウイルスで「3密」を避けるべきとされましたが、ペットには適用されません。ぎゅうぎゅう詰めの檻の中でひとたび感染が起きればあっという間に蔓延します。適切な治療を受けなければ命を落としてしまいます。
また、早くから親と引き離されています。飼い主の愛情があれば十分でしょうか?逆の立場になって考えてみてはいかがでしょう。「人間には思考や感情があるが、犬や猫にそのようなものは無い。だから、問題ない。」と言う人もいるでしょう。その可能性はあります。でも、そうでない可能性もあります。勝手に目を背けてはいませんか?
結局ペットも、現代社会においては、大量生産、大量流通、大量消費という畜産システムに組み込まれています。売れるから、関連業者もビジネスにします。では、売れなければどうなるでしょうか?「殺処分」が待っています。
ペットの購入客はこうした点まで想像力を働かせることはないでしょう。ただ「可愛い」ということで手元に置いておきたい、寂しさを紛らわせたい、アニマルテラピーに役立つかもしれない、とプラス思考で「不都合さ」を覆い隠していると思います。
僕たちは動物の気持ちに鈍感になっていると思います。といってもコミュニケーションが取れるわけではありません。気持ちが分かる、という気になっているだけです。「忠犬ハチ公」や「南極物語」といった美談も人間目線で美化されています。「かわいい投稿動画」は、視聴数を上げたいがため無理のある撮影が行われている可能性があります。(杉本彩「動物たちの悲鳴が聞こえる」ワニブックスPLUS新書)
コミュニケーションが取れず、圧倒的な力の差があるがゆえに、人間のエゴがもろにぶつけられている・・・それが現代の人間と動物との関係です。
人間は動物を虐げてきました。極端な例は、12世紀から18世紀のヨーロッパで行われた「動物裁判」です。そして、動物裁判を支えた原理は姿形を変えながらも現代社会の懐に深く潜り込んでいます。それが今日の生態系の危機的な状況を生み出しているのです。(池上俊一「動物裁判」講談社現代新書)
人間と動物の共存は大きな課題です。今、動物たちは、実験、畜産、展示など様々な形で利用がなされ、人間は大きな恩恵を受ける形となっています。(伊勢田哲治「マンガで学ぶ動物倫理」化学同人)
しかし、飼われなくなった犬猫は処分されます。少なくとも、必要以上に繁殖させ、必要以上に殺処分させる意義は薄いのではないでしょうか?それは、食肉などにも言えることです。
動物に思いを致せない人類が、同類に思いを致すことができるでしょうか。人同士でだってコミュニケーションが取れないこともあります。仮に取れたとしても分かりあえるレベルに至らない可能性があります。その結果、戦争や虐殺など悲劇も生じます。
動物に対する姿勢は人間に対する姿勢に通じます。僕たちは、今一度そのことに想像力を働かせる必要があります。思考力、そして圧倒的な力を持つ「人間」だからこそ、その責任はあるでしょう。