2020年10月26日(月)
エンヴィです。
ESG(環境・社会・企業統治)投資が注目されています。世界の資産運用額約280兆ドルの3分の1がESG投資で運用されています。日本でも投資家の約8割が投資をする際にESGを考慮しています。
でも、本当の意味でESGを理解している人はどれだけいるのでしょうか?このままだと日本はおいてけぼりを食わされます。大事なのは、僕たち一人一人が「投資家の気持ち」になることです。
ESG投資の概念は、2006年の「国連責任投資原則(PRI)」とともに誕生しました。それまで、グローバル経済が進展していく中、発展途上国が搾取されているという批判がありました。国連は世界から貧困を無くそうと動きました。そして、ESGは株主価値の上昇をもたらすということが判明し、多くの機関投資家が賛同するに至ったのです。
しかし、2008年のリーマン・ショックは日本と諸外国との認識の違いを浮き彫りにしました。日本では徹底的なコスト削減が進められました。一方、欧米は、「自分たちが気付いていないリスクが潜んでいるのではないか?」という視点に立ちました。そして、長期的な環境・社会の問題が回りまわって企業自身の損になることを突き止めたのです。
ハーバード・ビジネス・スクールのセラファイム教授によると、高いサステナビリティを持つ企業は株価が高いそうです。こうして、長期思考が経営の中に根づくこととなりました。(夫馬賢治「ESG投資」講談社+α新書)
こうした姿勢は日々の生活でも垣間見ることができます。ロンドンでは、プラスチックを全く使わないオーガニック専門のスーパーが人気です。ラップもサトウキビから出来ています。欧米で一番多い食品ロスはパンですが、イギリスでは売れ残ったパンから作った「リサイクルブレッド」が人気です。日本であり得るでしょうか?デンマークではごみの収集は有料なので、みんながゴミを出さないよう工夫しています。
(神田尚子「最先端のSDGs「ノハム」こそが中小企業の苦境を救う」楓書店)
環境問題に目を凝らすと、自然災害による経済的損害は年々深刻化しています。気温上昇に伴い台風が巨大化するとされています。豪雨の発生回数は日本列島で増える見込みです。実際、最近の台風や豪雨水害による被害は甚大です。世界の不動産会社の中で最もリスクにさらされているとして日本の大手不動産会社が挙げられています。
また、新型コロナウイルス感染症のように感染症による経済リスクも増大しています。一般に、気温変動が激しくなるとインフルエンザの流行が大きくなります。永久凍土が解けることにより未知のウイルスが放出されるおそれもあります。UNEP(国連環境計画)によると、1940年から2004年にかけて新たな感染症が生まれる頻度が増加しています。土地利用変化や農業活動が原因とされています
(夫馬賢治「データでわかる2030年 地球のすがた」日経プレミアシリーズ)
気候変動や感染症といった長期的リスクを見据えたアクションを打ち出せていない企業は、機関投資家からすれば魅力の薄い企業に映ります。
日本でも年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が存在感を放っています。気候変動に対してより高い基準を目標とする企業に優先投資する考えを披露しました。企業はESGへの姿勢を評価され、取捨選択される時代となったのです。(北川哲雄「バックキャスト思考とSGDs/ESG投資」同文館出版)
企業はESGに真剣に取り組まなければなりません。同時に企業の利益追求は僕たちの利益にも結び付いています。さらに言えば、運用会社の運用資産額の3分の2は一般人のマネーから成り立っています。つまり、株主利益を最も求めているのは一部の富裕層ではなく僕たち一人一人なのです!
経済がグローバル化している今、日常生活の便利さにはどこかの国の人々の犠牲によって成り立っています。僕たちはそこに思いを馳せながら、謙虚に、環境にやさしい消費行動を取ることが必要なのです。
プラスチック袋だけでなく、本屋による書籍の紙カバーサービスを断ることもできます。ペットボトル飲料を買い控え、水筒を持ち歩くこともできます。食品を買い過ぎないよう、摂取し過ぎないよう気を付けます。パソコンやスマホの電源は太陽電池を利用します。
日本では個が目立つことをあまり良しとせず、このため、自ら率先して動くことが少ないように思えますが、みんなが一斉に動けば一気に状況が変わるポテンシャルを持っています。大半の方が「このままじゃまずい。でも、何も言われてないからいいか」と思っているはずです。この『何』かを、国や地方自治体が明確にして取組みを促していくのです。そして、僕たちも「投資家の気持ち」になって、未来に思いを致しつつ行動を取ることが重要なのです。