2020年11月2日(月)
ソシエッタです。
菅政権がスタートしました。日本学術会議等の問題がある中、臨時国会は慎重な滑り出しです。歴代最長となった安倍政権を継承しつつ、今後、政治はどのように動いていくのでしょうか?
実は、大半の方が、これまでと変わらない状況が続くことを願っています。安倍政権時代の番頭を務めた菅氏が総理大臣になったこと自体がそうですし、当初の支持率が高いものでは74%にものぼったこともその証拠と言えるでしょう。
もちろん、未だ終息していない新型コロナウイルス感染症対策への期待もあるでしょう。でもそれ以上に、雇用、株高に一定の成果を出したこれまでの経済対策が継続されることを国民が望んでいるのです。
「失われた30年」という言葉に代表されるように、多くの人が経済成長を実感できない状況が続いています。閉塞感を打破して欲しいと民主党政権に期待を寄せたこともありましたが、その混乱ぶりに失望感が広がりました。今の日本人にとって「変化」は「不安」でしかないというマインドが固定しました。(佐藤優ら「長期政権のあと」祥伝社新書)
このような政治への姿勢の硬直化は危険です。もうどんな改革も期待できません。誰もが今の既得権を手放そうとしないでしょう。そして、分け前に預かろうとパイの争奪戦にいそしみます。アメリカの政治学者ロバート・ダールが指摘するように、自由民主主義とは「部分的」利益を政治のプロセスに乗せたものなのです。
経済が成長している時はうまくいきます。誰もが相応の分け前を期待できたからです。政治家にとって調整を行うことは簡単だったでしょう。
しかし、経済成長が止まり、マイナスの局面になると話は違ってきます。パイにも限界が生まれます。政治家は全体最適をとることができず、どうしても「部分的」犠牲を強いる場面が生じます。ところが小選挙区制がそれを許しません。
小選挙区制は、合意形成に過ぎると批判された日本政治を「多数決型」に作り直すことを念頭に1994年に導入されました。そして、日本も代表制民主主義を採っている以上、「経済利益」が政権を支える重要なファクターとなります。哲学者ヘーゲルは、市民社会は人間同士の利用・被利用を基本とする「欲望の王国」と表現しました。
「経済利益」によって「お客様満足度」を高めることが一層求められることになった結果、政治家は耳障りの良いことしか言えません。そして、誰も傷つかないよう、赤字国債を発行してその場をしのぐという手法が繰り返されるのです。(中野晃一「私物化される国家」角川新書)
全国の中で、既に厳しい状況に置かれている県があります。沖縄県です。沖縄県は県民所得が全国で11年連続最下位、貧困率は全国平均の2倍です。
原因は基地問題にあります。多くの県民が被害を受けました。このため、日本政府はインフラや観光資源の整備など多額の経済援助を行いました。でも、守られた経済では現状維持が「経済合理性」になります。
このように、社会問題への対応が検討されると対症療法が優先されます。症状を和らげますし、反対の理由がありません。でも、長期的には貧困状態をさらに悪化させることになります。沖縄の問題は日本全体の問題なのです。(樋口耕太郎「沖縄から貧困がなくならない本当の理由」光文社新書)
そこへ国際危機が加われば政治に利用されます。「ポスト真実」と呼ばれる事態です。トランプ大統領が代表例ですが、仮に格差拡大の原因が国内にあっても、「それは外国のせいだ」と目を外に向けさせたほうが票につながるのです。(大前研一「日本の論点2020~21」プレジデント社)
もう日本はジリ貧状態なのでしょうか?
抜け出すヒントはやはり経済にあります。まず、ここで何度も紹介されているように、ベーシック・インカムを導入することです。ベーシック・インカムは「安定」をもたらします。「安定」があれば「改革」を進めることが可能となります。
次に、財政バランスを損なう政策提案を厳しく評価します。提案者は政治家であれ官僚であれ、国の監視下に置くこととし、私腹を肥やさせないようにします。そして、提案した政策について経済・財政の両面で効果が出ないと判断された場合は、政党や行政における人事評価の査定対象とします。要は出世が遅れます。
そして、優れた人材を輩出する仕組みは欠かせません。国策を担う者に対するエリート教育の徹底です。倫理を最低要件とし、経済学的視点や語学力を身に付けます。さらに歴史を学び、世の中が常に変化していくという認識を持ちます。こうしてバランス感覚を養うのです。
国における取組が軌道に乗ったら地方にも展開していきます。息の長い話にはなりますが、これらこそが、今の代表制民主主義、自由主義、資本主義を守りながら実践できる唯一の「改革」処方箋なのです!