コロナが導いてくれる、これからの公共交通システム

2021年6月7日(月)

 トランだ。

 

 新型コロナウイルス感染症は俺たちの「移動」を制限した。リーマンショックとは異なる経済影響の一つと言える。

 だが、少子高齢化・人口減少が避けられない日本だ。冷静に見れば、いずれ来るべきものが少し早めに来たとも言える。新型コロナによる経済影響を分析して、国家財政のことも考えながら、交通体系の抜本的見直しを進めるべきだぜ。

 

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 総務省家計調査によると、2020年3月に「平時と異なる大きな増減のあった消費品目」として交通関係の項目が多数挙がった。中でも「航空」は80%以上減で、鉄道は60%以上減。燦燦たる状況だ。さもありなんだな。航空路線については、2021年3月期の最終決算の見通しは、JALが3000億円の赤字、ANAホールディングスが約5100億円の赤字だ(鳥海高太朗「コロナ後のエアライン」宝島社)。他の公共交通については、2020年度の損失額試算ではあるが、鉄道大手(JR、大手私鉄)で1.8~4.2兆円、地域公共交通(船舶、タクシー、バス、中小私鉄)で1.0~2.3兆円という数字が出た(上岡直見「新型コロナ禍の交通」緑風出版)。

 JR本州3社、大都市圏の大手私鉄東京メトロでも利用者3割減なら赤字に転落するとされている。ちなみに、鉄道事業の利益率は人口密度に比例する。人口密度約350人/㎢を下回ると赤字になるらしいぜ。(石井幸孝「人口減少と鉄道」朝日新書) 

 

 ところで、実際のところは、人の移動が感染を「飛び火」させたにせよ、公共交通それ自体でクラスターになったとは考えにくい。IATA(国際航空運送協会)によると、2020年初頭からの総乗客数12億人に対し感染例44件という理由から、「航空機内で感染するリスクは非常に低い」としている。だが、感染拡大が収まらないのであれば移動は避けるべきだろう。今の沖縄、特に石垣島の感染爆発を見ると強く思う。 

 もちろん、人の移動が大事なことは否定しないぜ。ビジネスや観光など移動に伴って経済が活性化される。しかし、ここは割り切りが必要だ。今後の人口減少も踏まえて公共交通システムのあり方を考えてみようぜ。

 遠距離システムについては原則、人の移動を制限的にすべきだ。すでに、ITネットワークを使って人の移動を最小化する試みは進められている。そうは言っても移動が必要な場合もある。こうしたケースでは、感染が判明した場合の探索ができるよう、移動履歴を「記録」しておくべきだ。「記録」にはマイナンバーカードを利用するといい。専用アプリをインストールしたスマホを改札でタッチすれば精算できると同時にマイナンバーに移動「記録」を紐づけるようにする。いっそのこと新幹線の座席は、飛行機と同様全席指定として、座席情報も紐づけるといい。このシステムを利用しない者には料金を割り増しすればいいだろう。

 移動の自由や権利はどうなるかって?残念だが制限されるべきだろう。もはや、移動による感染拡大のリスクが半端ないって知ってしまった。自由や権利を主張するのであれば、引き換えに義務を果たしてもらおう。ちなみに国際線はもっとシビアになる。LCCのピーチのように国内線拡大に舵を切るところもある。移動の選択肢自体が少なくなるんだぜ。自由だ権利だなんて言ってられるかい?

 

 こうした絵姿を想定して供給体制や価格体系の見直しを行うべきだ。車両数や便数の削減は必至だ。コストは利用料金に上乗せだ。利用客が少ない地方空港は閉鎖すらあり得る。

 そして、交通システムをより物流に活用すべきだ。人の移動は何とかなるにしても、物の移動はさすがにどうしようもない。例えば、新幹線を拠点間貨物輸送に転用する。そうやって高速道路を走るトラックの負担をいくらかでも減らすべきだ。なお、これら基幹インフラは危機管理の観点から存続は必至だ。いざという場合の国による支援策を用意しておくべきだ。

 一方、都市内の近距離移動は維持していいだろう。ただし、自家用車の使用はなるべく制限しよう。道路容量の制約という問題がある上に、エネルギー面の課題もある。日本全体で1万9709ペタジュールの一次エネルギーを使用しているが、運輸部門の使用はその約6分の1にも上り、ほとんどは自動車用燃料だ。鉄道はわずか63ペタジュールしかないんだぜ。自動車を減らした分、レーン確保など自転車利用を促す環境整備をしようぜ。

 

 以上のように、公共交通システム全体を「統合的」に議論することが大事だ。交通には経済活動、観光やエネルギーだけでなく、医療、教育、地域活性化など様々な分野が関係してくる。繰り返しになるが、人口減少や国・地方の財政逼迫といった現実を見据えた冷静な議論だ。人流ー物流バランスも考えながら、取捨選択を断行し、システム全体の最適化が常に図られるような交通戦略が必要だぜ。