止まらない人口減少への地方自治体の「受け」

2023年4月3日(月)

 ソシエッタです。

 

 1日、子ども家庭庁が発足しました。子どもや子育てに関する支援を通じて、少子化対策を推進することが期待されます。でも、「時、既に遅し」です。2022年の出世数は80万人を割りました。推計より11年も早いタイミングです。日本の人口減少が止まりません。これまでのような対策は通用しません。発想の切替えが必要です。

 

 

 日本の総人口は、2022年8月1日現在で1億2500万人です。約20年後の2045年は、ここから1500万人も減ります。東京都の人口がまるごとなくなるレベルです。高齢化も進み、20代前半は25%減少します。

 社会の活力も低下します。サービスを続けられる確率が半分となる商圏規模は、総合スーパーマーケットで47,500人、コンビニエンスストアだと2,200人です。お店の数はどんどん減っていくでしょう。

 市区町村では4割以上減少するところが4割にのぼります。住民税や固定資産税といった税収が減ります。行政サービスをどこまで届けるべきか、難題が立ちふさがります。(河合雅司「未来の地図帳」講談社現代新書

 

 この場合の自治体の反応は2つあります。一つは「開発」の暴走です。商業施設や工場を誘致して一発逆転を狙います。多くは失敗し、財政悪化を招きます。もう一つは「削減」の徹底です。とにかく予算を削るのです。結果、地域経済は低迷し、税収が減るという悪循環に陥ります。若者は仕事を求め、都市へ脱出します。

 隣の自治体との合併を考えるところも出てくるでしょう。でも、言うほど簡単ではありません。1999年からの「平成の大合併」はいくつもの禍根を残しました。合併特例債による公共施設の建設は、地方自治体にとって新たな財政負担となっています。

 しかも、合併のメリットは大きくありません。合併する自治体間で差が生じないよう、社会インフラやサービスを均一にしなくてはなりません。支出削減効果も大きいとは言えないようです。合併には慎重な判断が必要となります。(中山徹「人口減少時代の自治体政策」自治体研究社。砂原庸介「領域を超えない民主主義」東京大学出版会

 

 こうした局面では頭を切り替えなくてはなりません。手当をばらまくなどして他の自治体から人を引っ張ってでも人口減少を食い止めようという「エゴ思考」ではいけません。求められるのは、人口減少という現実を受け止めて、自治体の内外に存在する資源でもって、減少フェーズごとに最適化を目指す「エコ思考」です。

 必要となるのは、現状のまま進むとどのようなアンバランスが生じるのかを冷静に見極める視点です。その上で、「連携」視点で打ち手を考えます。この「連携」とは、地方自治体丸ごとの連携ではありません。自治体丸ごとだと「エゴ思考」が邪魔をするからです。求められるのは「分野ごとの連携」です。

 

 例えば、医療分野だと、都市部にある複数の基幹病院から交替で医師を地域に派遣します。医師の派遣費用は、派遣してもらう側の地方自治体が持つこととなりますが、その財源は国が用意します。福祉分野だと、老人ホームに周辺の自治体ごとの入居枠を設け、その割合に応じて、周辺自治体が運営費を拠出します。ここでも財源はやはり国が用意します。

 このように、分野ごとに自治体間の連携を考えることを優先するのです。連携のパターンは分野ごとに異なっても構いません。ポイントは、施設や人材といった資源を単一自治体で考えるのではなく、より広域的に捉えて、柔軟かつ有効に活用することです。

 検討すべき分野として、医療、福祉、教育、防災などが挙げられます。いずれも都道府県内で格差を生まないことが大切です。自治体間の「でこぼこ」を分析し、資源の投入量を考えます。こうした作業は都道府県が中心となって行います。そして、国は都道府県の作業をチェックし、財源に地方交付税を充てます。税収は全国にまぶされることになります。

 

 これから国全体が縮みます。そして、東京一極集中、都市部への集中も進みます。重要になってくるのは人口減少のスピードです。あまりに早いと、どんなに優良な手立てであっても追いつくことができません。

 人口減少スピードを減速させるには、地域の減少スピードを抑えること、そのために、地域で暮らす人が取り残されないよう、サービス格差を生じさせない取組みが必要です。これこそが、今、地方自治体に求められる「受け」なのです。