2022年5月9日(月)
フーディンだよ。
インフレの心配が出てきたんだな~。ロシアによるウクライナ侵攻、円安、そして、ドルの利上げ。すでに小麦などの値上がりが始まっているけど、そのうち肉や野菜も値上がりするんだろうね。農家の「持続可能性」が心配なんだな~。
肉用豚1頭の出荷で得られる農家の手取り平均額って知ってる?約8000円なんだって。びっくりだよね~。半年もの間、エサをやって、病気にならないよう世話をしての収入がこれだけって感じがしない?儲けを出そうとしたら数を増やして育てなくちゃならないよ。アニマルウェルフェア(動物福祉;AW)という考え方があるけれども、アニマルウェルフェアが推奨する放牧なんかやってたら儲からないよ。事実、先進国ではそのおかげで肉の価格が上がったんだな~。(山本謙治「エシカルフード」角川新書)
こうした動物福祉や環境問題、労働への配慮がなされている食べ物を「エシカルフード」と言うんだ。今後、エシカルフードを追求する流れは避けられないだろうね。一方で、農業は基本的に環境に負荷を与えるものだからつらいね。特に畜産は、農業分野における温室効果ガス(GHG)排出量の約3割を占めているから目の敵にされるんだ。社会への負荷が大きい割に、肉の価格は安く、人々は食べ過ぎてるってことなんだな~。ドイツなど一部の国では、肉税の導入を検討しているみたいだよ。(下川哲「食べる経済」大和書房)
野菜も大変だよ。価格は雰囲気で決まっているようなもので割に合っていないんだ。加えて、燃料、箱代、運賃、包装用ビニール袋代といった農業資材は年々高騰しているし、日本人は見た目を重視するから栽培や選定の手間暇も半端ないよ。農家の苦労が価格にちゃんと反映されていないんだな~。遺伝子組換え技術を使えば手間暇を省けるって言う人もいるけど、これはこれで肥料や農薬をたっぷり使わねばならなくなるみたいだよ。
そうやってまでして出荷商品として選ばれなかった農作物が廃棄されると、「食品ロス」にはならないけれど、立派な「フードロス」だね。決して「エシカル」とは言えないよ。日本では「食品ロス」の量は徐々に減少しているけど、これからは「フードロス」にも目を向けるよう消費者のマインドを変えていく必要があるね。
振り返ってみると、これまでの日本の農業政策は、平等にかつ広く農作物を提供することに主眼が置かれてきたんだ。戦後の食糧危機を克服するため、農薬と化学肥料で生産性をアップ、農業技術を「農業改良普及制度」で一般化し、農地改革で解放された零細農家の救済のため、お互いを助け合う農業協同組合体制が整えられていったんだ。こうして、品質のよい農作物が広範囲に安く手に入るようになったんだ。
でも、弊害も生じたよ。農家間の競争はご法度になったから、農業技術の「飛躍的な向上」には結び付かなかった。そもそも日本は耕作地が少ないから、主要な食料輸出国との間にはちょっとやそっとの努力で埋められないほどの差があるし、中国のような大規模農業国が相手だと、技術が拮抗しているくらいでは勝負にならないな~。
いずれにしても、安定供給が当たり前になって、消費者の関心は、味や見た目に移っていったんだ。そして、農業の「社会的価値」はほとんど認められなくなって、単なる食糧生産係としての役割だけが求められているんだな~。
(野口憲一「『やりがい搾取』の農業論」新潮新書)
これからの食糧確保のことを考えると、大切なのは、過保護にされている消費者ではなく、生産者の「持続可能性」だよ。そのためには、まず、生産現場をもっと身近に感じられるようにすることだね。フェアトレードの世界では、例えばカカオ豆やコーヒー豆の販売に合わせて、産地で作業する生産者の写真を見せて説明する場面があるけど、あれって大事だよね。生産者への敬意がかきたてられるよ。
さらに、食料市場のDXが進めば、「生産の見える化」が進むだろうね。消費者で「常にエシカル」な行動をとる人はごくわずかだけれど、「ときどきエシカル」な人は60~75%もいて、圧倒的なバイイングパワーを持っている。彼らが買い物をする時に、ふと立ち止まって商品を選択できるよう、売り場で生産現場の情報を表示したらどう?
そして、より重要なのは、現在の肉や野菜などの価格に、農業による社会的損失が十分に反映されていないってことなんだな~。「食べる」=「環境・労働への負荷」なんだから、消費者はもっと責任を感じなくちゃ。肉税や野菜税で財源を確保した上で、「エシカル度」の高い手法を用いる農家には補助金を充て、出荷時の価格を抑えてはどうかな。また、多少見た目が良くなくても出荷できれば、選別のコストを下げられるよね。消費者意識を変えつつ、農家の努力が肉や野菜の価格に反映される仕組みにすべきなんだな~。