祈ります・・・信じる人が「だまし」にあいませんよう

2023年1月30日(月)

 ソシエッタです。

 

 今年の初詣は行きましたか。神社に参ったりすることは、立派な「宗教行為」です。日本人は信仰を持っている人が約2割で、圧倒的多数が「無宗教」です。でも、みんな心の「よりどころ」を求めて、無自覚のうちに宗教行為を行っているのです。

 

 

 昨年、安倍晋三元総理の暗殺事件を機に、旧統一教会と政治との関係があぶり出されました。統一教会と言えば、かつて、霊感商法や国際合同結婚式が話題となり、批判も受けました。現在では団体名を「世界平和統一家庭連合」と変えて活動しています。多額の献金によって家庭が崩壊するなど、本人や「宗教2世」たちのエピソードを聞くと、「宗教って怖い」と感じた人もいることでしょう。また、多くの政治家が選挙活動で統一教会の支援を受けて当選し、秘書に信者が送り込まれ、教会と縁が切れない様子を見て、問題の根深さを知ったことでしょう。(有田芳正「統一教会とは何か」大月書店)

 

 でも、今は宗教を「脅威」と感じる時代ではなくなっています。信者数で言えば、新宗教であろうと既成宗教であろうと1990年前後がピークでした。ほとんどの宗教団体が信者数を減らしています。

 信者数が、特に新宗教で増えたのは、高度経済成長期に、地方から都会に出て商店や工場で働く人々を取り込んで急成長したからです。代表格は創価学会です。学会員は都市下層の人たちで、生活保護一歩手前の生活をしていました。もう一つは、対共産主義です。自民党をはじめとする保守勢力にとってはありがたい存在でした。関係する宗教団体として、創価学会のほか、統一教会生長の家が挙げられます。

 

 経済成長が鈍化し、東西冷戦が終了するに伴い、こうした勢いは弱まりました。また、新宗教の教えや活動は現代社会に合わなくなっています。宗教をことさらに恐れる必要はないのです。(島田裕巳新宗教と政治と金」宝島社新書)

 もっと言えば、日本国憲法によって「信教の自由」が保障されている中、心の「よりどころ」としての宗教活動を温かく見守る態度が求められます。歴史を振り返ると、徳川家康は、一向一揆に悩まされながらも浄土宗の思想に共感し、教団の廃絶ではなく、政治的に無力化することでその存続を図りました。一方、キリスト教については、日本侵略の気配を感じ、厳しい態度で臨みました。要は、宗教団体と政治との癒着を防ぐべきなのです。(茂木誠「『戦争と平和』の世界史TAC-PG)

 

 重要なのは、一部の宗教活動でも見られた強引な勧誘や霊感商法は、商業活動においては「だまし」の行為として厳然と存在することです。私たちは「だまし」の構造を学び、用心深くならなくてはなりません。

 霊感商法では、対象者の「不安」につけ込み、これをあおりたてます。「悩みをお持ちではありませんか?」と近づいて、それは霊の力だとか悪い因縁によるものだとか言って、対象者がどんどん不安になるように仕向けます。そして、高額な壺などの商品を買わせたり、販売活動を強制して得られた売上げを上納させたりします。マルチ商法もよく似た構造をとります。詐欺行為も基本は同じです。対象者の不安や欲望を探り出して解決方法を提示し、高額のサービスを購入させたり、お金を振り込ませたりするのです。

 巧妙なのは、対象者の警戒を解くため、最初は何気なくサークル活動に誘って打ち解けさせたり、複数人で分担して「役」を演じ、対象者を信用させたりする点です。

多田文明「信じる者は、ダマされる。」清談社)

 

 多くの日本人が、物質的には豊かでも、心の中は満たされていません。不安なのです。国はこうした状況を分析し、解決策を見出す必要があります。消費者相談センターのような「待ち」の対応だけでなく、積極的な取組が求められます。

 教育が大切です。本年度から高校の家庭科で「資産形成」に触れた授業が行われるようになりました。とすれば、同時に「だまし」のパターンについても学ぶ必要があります。現代はスマホが「だまし」の道具になります。無防備にサイトにアクセスして個人情報を登録しないようにしなければなりません。SNSに写真など個人情報をアップすることも注意が必要です。 

 「だまし」の根っこを抑えるためにはマイナンバーカード制度の活用が有効です。商業行為を行う者は、サイトでも電話でも、代表者自身のマイナポータルを経由しなければならないという仕組みにしてはどうでしょう。トラブルが発生した場合の追跡も可能となります。マイナポータルを経由しないケースは怪しい取引と考えればよいのです。かなりの抑止効果が期待できます。

 最後に、地域コミュニティの再活性化です。行政が健康づくりなどの活動を、コミュニティを通じて展開するのです。個人が「ぼっち」で社会でもがくことがないよう、心の「よりどころ」を用意することが大事です。