現代版「魔術」に魅かれる若者たち

2023年7月17日(月)

 エディカです。

 

 「魔術」が浸みわたっているわ。6月に開園した『ハリー・ポッター』の体験施設のことじゃなくてよ。若い子たちがリュックサックやカバンにぶら下げている可愛らしいマスコットを見ると「御守り」を思い起こさせるの。きっとこれも現代版「魔術」ね。

 

 「魔術」と聞くと身構えるかしら。黒魔術や魔女などイメージがよくないもの。

 でも、人類史を振り返ると、「魔術」は私たちの生活の身近にあるの。ドイツの洞窟で発見された4万年前のものとされる象牙の獅子人間像には、定期的に使用された痕が残っている。エジプトは「ピラミッドパワー」など神秘の宝庫。「ツタンカーメンの呪い」や「ホルスの眼」が有名ね。ハイチの「ブードゥ」は、植民地化への抵抗運動に火をつけたわ。映画「ゾンビ」は支配側アメリカがディスって作ったものよ。アフリカではサッカーの試合で呪術使用を禁止する通達が出されている。

 みんなも「星占い」くらいはやるでしょう。「今日の運勢」が悪いと気になるわ。世の中、何か見えないパワーで支配されているんじゃないかって心のどこかで思っているものなのよ。

 

 生死に関わる大きな問題に直面する時や、未来を知りたい、過去を理解したい、災厄から身を守り、病気を治し、生活を向上させたいと願う時、「魔術」は支えになる。その本質は、宇宙のパワーとつながろうとする人間の心にあるわ。

 関連するものとして宗教と科学があるけれど、今や宗教の権威は落ちているし、科学は客観性を求めすぎて温かみがない。かのマックス・ヴェーバーも、「魔術なき世界は冷たい世界」と言っているわ。(クリス・ゴスデン「魔術の歴史」青土社

 

 欧米では成人の75%が魔術や超常現象を信じている。こうしたふるまいを「非科学的」って笑い飛ばすのはナンセンスよ。宇宙には分からないことがたくさんある。ありえない可能性を受け入れる「態度」をどう持つかが重要なの。

 私たちは、世界は秩序や努力で保たれていると過剰に信じたがっている。だから、ものごとがうまくいかない時に激しく動揺するの。何にも頼れなくなった心の空白には、エセ科学陰謀論が棲みつくわ。(中村圭志「亜宗教」インターナショナル新書)

 この点、日本社会は巧妙ね。そもそもこの国にあるのは一神教的な宗教観ではなく、アニミズムや八百万神(やおろずのかみ)の世界観。何でもありのユルユルなの。そして、若者をとりこにするのはサブカルチャーやマスコットキャラクターなど。アニメキャラのコスプレは、キャラクターの持つパワーにあやかりたいという表れね。

 

 先が読めない時代ほど現代版「魔術」への傾倒が増えるわ。古代エジプトではナイルメーターと呼ばれる装置を使ってナイル川の氾濫を予測し、これに備えた。政治も「魔術」への依存度をバロメーターにして、「不安」の氾濫を防ぐことに使ってみては?