危機突破に効いてくる「多様性」の学び!

2023年1月9日(月)

 エディカです。

 

 「HUNTER✕HUNTER」っていう漫画のこと、ご存知かしら?少年ジャンプに掲載されている大人気漫画よ。一言で言うと、異なる背景と能力を持った仲間たちによる冒険譚ね。主人公のゴンは野生的センス、同い年のキルアは暗殺一家の子、クラピカは一族の復讐を胸に秘め、レオリオは医師を志している。彼らが一つになって力を合わせることで、「ハンター試験」などの課題をクリアしていくところが醍醐味なのよね。

 

冨樫義博「HUNTER✕HUNTER」集英社

 もし彼らが、リーダーの声が強いチームだったらどうなってたかしら?危機突破にはもってこいの気もするわね。実際、過去のヒマラヤ登山隊にこうしたチームがあったみたい。果たしてその結果は・・・1996年に起きた「エベレスト大量遭難事件」。8人もの死者を出す大惨事になったわ。

 事件の原因には複合的なものがあったにせよ、チーム内でどういうわけか、「悪天候になりそう」とか「満タンの酸素ボンベがまだ残っている」といった重要な情報が共有されなかったの。そして、こうした雰囲気を作り出したのが、「山ではリーダーに対する反論を一切認めない」とする権威の勾配なの。

 

 登山は不確実性の高い「VUCA」な環境で行う活動よ。複雑な問題に対処する場合、支配的な環境はかえって逆効果よ。「集合知」や「集団心」って言葉があるように、みんなでフラットに臆することなく意見が言える環境が必要ね。これからますます難しくなっていく世の中で生き残るためにも・・・。日頃から「多様性」を受け容れる能力を養うことが必要よ。これからの学校教育のキーワードね。(マシュー・サイド「多様性の科学」Discover)

 

 今、ウクライナ危機がいろんなことを教えてくれている。その一つが「教育の大切さ」ね。これには2つの側面があるわ。

 一つは、非常時にこそ教育を遂行することが大事ってこと。紛争地帯には不発弾や地雷が転がっている。子どもたちが不用意に触らないよう学ばせなくちゃならない。社会が壊れて若者がドラッグや犯罪に走らないよう保護する役割もあるわ。そして、何と言っても日常性の回復は大きいわ。友達とふれ合い、先生とつながることでケアされるし、生活のリズムが心の安定を生むわ。

 

 もう一つは・・・ズバリ「平和教育」。平和の重要性を伝えることね。国連の「SDGs」の基本的な考え方は、次世代に対する責任よ。暴力を行使すると必ず禍根が残り、ずっと後の世代まで引きずるわ。ちなみに日本のように戦争の悲惨さを伝える教育は世界ではあまり行われていないみたい。

 気を付けなくちゃいけないのは、教育は平和の実現に貢献できる一方で、正反対に向かわせる可能性もあるってこと。旧ソ連の崩壊後、構成国でそれぞれ国民教育が行われたけれど、民主主義と一緒に新自由主義的な考え方も導入された結果、大きな経済格差が生まれたの。すると、人々は国土や民族に心の安定を求めることとなり、他者に対する排外的な態度につながっていったの。

 

 大事なのは、「〇〇人はこうだ」と短絡的に解するのではなく、集団にも様々な人がいて、一人をとってみても複数の背景を持っていると理解すること・・・アマルティア・センが言う「マルチ・アインデンティティ」を意識することよ。

 こうした教育は大変重要だけれど、実施するとなると容易じゃないわね。学校の先生だって必ずしも「多様性」に馴染んできたわけじゃないし・・・。教室の中での営みだけに終わらせるんじゃなくて、それこそ「多様」な学びの環境をつくることが必要ね

日本教育学会 国際交流委員会編「『戦争』と『教育』」教育開発研究所)

 

 考えてみれば、学校で身に付けるスキルはどれも「脳」を使うものばかり。逆説的だけど、脳を使い過ぎると理性的に考える力が失われるの。必要なのは「脳の外」の力を借りること・・・体の感覚や動き、物理的な空間、周囲の人々の知性なんかを、頭の中で行う処理に利用することよ。しかも、テクノロジーのせいで、生徒たちは個別的かつ非同期的で細分化された経験を強いられているわ。これでは「多様性」は実感できやしない。(アニー・マーフィー・ポール「脳の外で考える」ダイヤモンド社

 

 例えば、外部講師、それもバックグランドが異なる複数人の講師に授業をお願いしてはどう?こんな視点もあるんだという気づきが生まれるわ。オンラインでもいいわ。だけど大事なのは、同時に学ばせることよ。集団で一緒に思考するほど人は賢くなるの。学ぶ側も組み合わせを試してはどう。学校間で協定を結んで、互いの生徒を一部交換して授業を受けさせるの。海外の学校やインターナショナルスクールが参加してくれたら素敵ね。実現させるのは簡単じゃないでしょうけど、平和教育+「多様性」ある教育を世界に先駆けてやってみて!