「健康経営」で労働者を大切にして夢づくり

2023年7月10日(月)

 レーブだ。

 

 今の日本に「夢」がどれほど残っているだろうか。「頑張れば報われ、給料はアップする」など夢のまた夢だ。若者は出世に背を向け、最低限の生活を心配している。子どもを持つ余裕なんてない。少子化対策も大事だが、いったん労働者の「夢」を優先してはどうか

 

 

 日本には厳しい現実が横たわっている。

平均賃金はOECD加盟国38か国中34位最低賃金は22位。

・初任給はこの30年間で0.38%しか上昇していない。

労働生産性は世界36位。

・いずれ増税等がある。手取り収入は減る

デービッド・アトキンソン「給料の上げ方」東洋経済

 

 これらは、他の先進国にも起こり得る。このためだろうか、「人的資本経営」という言葉が飛び交うようになった。人材を資本として捉え、その価値を最大限に引き出し、企業価値を高める戦略だ。ISO30414は人的資本に関する情報開示まで求めている。経済成長にかげりが見られる中、労働者を大切にしないと経営が成り立たなくなることが認知されつつあるのだ。

 だが、日本の取組は進まない。例えばジェンダー。「ジェンダーギャップ指数」は世界146か国中116位だ。男女の就業格差が解消され、労働時間格差がOECD並みとなるだけで、日本のGDPは15%上がるにも関わらずだ。(小方信幸「実践人的資本経営」中央経済社

 

 できることからやろう。とっかかりとなるのは「健康経営」だ。これは文字どおり、労働者の健康に配慮した経営だ。日本では健康関連損失によってGDPが8%減少している。ターゲットは、頭痛や肩こり、抑うつや倦怠感によるプレゼンティーズムだ。職場にいるにも関わらずパフォーマンスが落ちる状態だ。メンタル不調も要注意だ。

 そして、「健康経営」への投資は3倍のリターンが期待される。健康経営銘柄選定企業の株価は東証株価指数を大きく上回る。

 問題は、せっかく産業保健スタッフを配備しても、ストレスチェックや健康診断がやりっぱなしで改善につながっていないことだ。そもそも、企業の約96%を占める中小企業にはスタッフ配置義務が無い。

 

 解決方法として、会社に一定の規模を求めたい。社員が増えれば、多様性に気を配る余裕ができる。女性活躍が進む国では企業の平均社員数が多い。若い人材も呼び込める。ドイツでは中堅規模の企業を大事にしている。

 もう一つは、複数の企業が一体となって外部支援を受けることだ。みんなで出資してサービスを求めてはどうだろう。外部の目によって企業の産業保健スタッフの質も向上する。(歌代敦「労働力減少時代の『もっとよくなる健康経営』」ダイヤモンド社

 

 誰もが労働者を大切にしたいと頭では分かっている。「健康経営」という、結果にコミットしやすい取組によって職場の安心感が得られる。それは企業の価値向上や給料アップにつながり、「夢」につながる。