2023年7月3日(月)
トランだ。
蒸し暑い日が続くぜ。熱中症対策ではエアコンの使用が推奨されている。であれば、ちゃんと電力を確保しておかなくちゃならない。これが意外に難しい。その難しさは、歴史を知ることで理解できる。
電力体制の骨格は1920年代から40年代に形作られた。もともとは民間主導だったが、軍国化の流れで国営化が進められ、配電線は統一、周波数も現在の西日本60Hzと東日本50Hzの2つに整理された。戦後は9つの地域ごとに、発電から小売りまでを一貫経営する体制となり、豊富で安価な電力供給が実現した。
ここからが問題だ。まずは70年代の石油危機。火力発電にブレーキがかかり、原子力発電への流れが本格化する。石油価格の高騰は電力自由化の流れを呼んだ。
次に地球温暖化対策。日本は原子力発電の供給割合を最大4割にしようと計画したが、その矢先、東日本大震災による福島第一原発事故が発生した。全原発がいったん停止し、現在では36基のうち10基が再稼働している。2050年のカーボンニュートラル達成は大きなプレッシャーだ。
電力システム改革も進められた。再エネ導入と併せ、電力が自由に売買されることになった。9電力は不採算の火力発電を廃止していった。その後、価格高騰のため新電力が事業撤退する事例が相次いでいる。
2022年からのウクライナ戦争により、天然ガスの価格が上昇した。今は落ち着いているが、資源を輸入に頼る日本のエネルギー事情は、依然、地政学的リスクにさらされている。(宇佐美典也「電力危機」星海社新書)
近年起きた電力ひっ迫事例を紹介する。2022年3月22日、東京電力管内で「警報」が出された。福島沖地震の影響で複数の火力発電所が停止していたところに予想を超える気温低下が起こり、発電の余力が無くなる見通しとなったためだ。ここは、家庭の節電により事なきを得た。同年6月30日は、逆に猛暑日となり、やはり東京電力管内で「注意報」が出された。(竹内純子「電力崩壊」日本経済新聞出版)
電力危機なんて首都圏のことと思うかもしれないが、複合危機があれば、全国どこでも大停電は起きる。起きれば影響は甚大だ。夜は真っ暗で、酷暑か極寒だろう。上下水も流れない。長引けば食の流通もストップ。混乱は必至だぜ。
こんなSFみたいな事態が起きないよう、関係者は努力している。その上で、「分散型の電源確保」を提案したい。自動車を持っている人は軽EVに乗り換えることで、蓄電池を持つことになる。ガスを使って電気を作る家庭用燃料電池(エネファーム)も「買い」だ。(小山堅「エネルギー業界のしくみとビジネスがしっかりわかる教科書」技術評論社)
歴史を振り返ると電力確保は決して安泰ではないことが分かる。集中管理を基本としつつ、一人ひとりが電源を確保し、節電に努めるなどしてリスクを最小化しておくことが大事だぜ。