そこのけそこのけ!「繊細さん」が通りま~す

2022年3月21日(月)

 ソシエッタです。

 

 「繊細さん」という言葉が市民権を得ています。正確には、アメリカの心理学者アーロン氏が唱えた「HSP(Highly Sensitive Person)」、すなわち、「敏感すぎる人」のことです。アーロン氏によると、こうした人は全人口の20%ほどいるようです。コロナ禍の中、近くにいる人が咳をしたら、ぎくりっとしません?ひょっとしたら、あなたもその1人かも。

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 HSPの人たちは、人知れず疲れています。疲れない方法を身に付けなくてはなりません。周囲の理解や協力も必要となります。こう言うと、「面倒くさい人たちなんだなあ」と思うかもしれませんが、とっておきの話があります。HSPの人たちには、残りの80%が持っていない特殊能力があるのです。

 HSPがどういった人かは、チェックリストで理解することができます。全部で23個の質問項目のうち半数以上が該当すればHSPに該当します。以下は、代表的な項目です。

・自分をとりまく環境の微妙な変化によく気づく

・他人の気分に左右される

・痛みにとても敏感である

・豊かな想像力を持ち、空想にふけりやすい

・すぐにびっくりする

・デリケートな香りや味、音、音楽などを好む

 

 みなさんの自己診断はいかがだったでしょうか?当てはまる人も多いのではないでしょうか。こうした繊細さは生まれつき備わっています。ハーバード大の心理学者ケイガン氏によると、彼らは赤ん坊の頃から刺激に反応しやすいそうです。

 では、HSPの人たちが持つ特殊能力とはどのようなものでしょうか。以下がその4つの能力です。

エンパス力~感情を読み取る能力。医師、セラピストなどが向いています。

直観力~見逃されがちな情報を感知する能力。刑事、起業家などが向いています。

視覚力~視空間を認知する能力。デザイン、イノベーション分野が向いています。

表現力~身の回りで感じとったことを表現する能力。俳優や作家が向いています。

 

 こうした能力を活かすことで社会に大いに貢献することができます。エンパス力が強い人はうそを見抜きます。うそつきによく見られる、無意識的な行動や微細な表情の変化、ボディランゲージ等に気づくことができるからです。

 直観力はマーケティング分野でも威力を発揮します。コンサルタントであるジルベール・ラパイユ氏は、ミシュランタイヤの広告キャンペーンを成功に導きました。タイヤの中に座るかわいい赤ちゃんの画像をコマーシャルにして、タイヤが家族を守ってくれるというイメージを演出したのです。子どもを守るという人の心理の利用方法を直観的に理解していたのです。ちなみに、特殊な直観力を持つ人の脳をMRIで調べると、尾状核被殻を結ぶ神経細胞がより多く存在し、連結が強いことが分かっています。

 視覚力には「夢」も含まれます。ドイツの化学者ケクレは、自分の尾に嚙みついている蛇を夢で見たことでベンゼンの環状構造を発見するに至りました。表現力はストレスあふれる現代社会では重宝されます。

(コートニー・マルケサーニ「『繊細さん』の4つの才能」SB Creative)

 

 でも、こうした能力を発揮する以前に、感じる力が強いため、刺激量が自身のキャパシティを超えることがあります。典型的な症状は、「人といると疲れる」というものです。こうしたストレスは溜め込んでおくと精神的ダメージに発展する可能性があります。対処方法は自分に合った環境に身を置くことです。

 簡単にできることとして、ストレスのもとになる様々な刺激を物理的に防ぐことが挙げられます。メガネやコンタクトレンズの度を落としたり、ノイズキャンセリングイヤホンを使ったりすることで視覚や聴覚の刺激を和らげます。また、コロナ予防もありますが、マスクをすることもお薦めです。食べ物はできる限りシンプルな味付けを選んで、刺激の強いものを避けることです。

 仕事面では、完璧を目指すのではなく、「とりあえず」を採り入れることです。これによって、日々の仕事や生活がぐっとスピーディに進みます。また、人に頼るのが苦手な人も多いことでしょう。思い切って「頼る」という発想を持つことが大切です。そうしないと自分が潰れてしまいます。

 人間関係では、苦手な相手を遠ざけることが重要です。その際、第一印象は正確です。問題が起きていなくても、「この人とは合わないな」と感じたら最初から近づかないことです。(武田友紀「『繊細さん』の本」飛鳥新社

 新型コロナウイルス感染症は「繊細さん」にとってラッキーだったかもしれません。「ソーシャル・ディスタンス」と称して、堂々と人との距離感を保つことができるからです。でも、それだけでは狭い世界にますます自分を追い込んでしまうことになります。自分を活かせる方法を見つけ、人との関わり合いの中で、「能力」を思う存分発揮して下さい

 

ありますか?「絶滅」への覚悟

2022年3月14日(月)

 エンヴィです。

 

 暖かくなってきました。生物たちも活動を再開します。その様子を見ていると、地球が6度目の大絶滅時代に入っているとは感じられません。一般に、「絶滅」は良くないこととされています。でも、冷静に考えれば人にも生物にも寿命があります。個体の「死」が避けられないのであれば、種の「絶滅」も避けられないのではないでしょうか。もし、そうだとしたら、僕たちは「絶滅」というものにどう向き合っていくべきでしょうか

 

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早良朋「へんなものみっけ!④」小学館

 哺乳類だけみても、この数百年で80種が絶滅しています。ニホンオオカミピレネーアイベックスなど人間の手によって絶滅した動物もいます。(うすくらふみ「絶滅動物物語」小学館

 国際組織IPBESによると、地球上の推定800万種の動植物のうち少なくとも100万種は、数十年以内に絶滅の可能性があります。一つの種が絶滅すれば、これに依存して生きていた種もドミノ倒し的に絶滅していくおそれがあります。それぞれの「種」は平均すると約100万年続くと考えられていますが、そうじゃなくなるのです。

 

 絶滅を食い止める活動がなされています。典型的なのが、つがいごと囲って繁殖させる方法です。日本では佐渡のトキ保護センターの取組が有名です。でも、人の手で作られた環境の中でうまく生きられたとしても、野生に返した場合の生存率は必ずしも上がりません。こうした、人間が何でも管理する方向について疑問の声が挙がっています

 同様のことが「復活の科学」に当てはまります。これは、映画『ジュラシック・パーク』のように、保存標本のDNAから絶滅種を蘇らせることです。マンモス復活プロジェクトなどがそうです。仮に蘇ったとしても、時代や環境が絶滅前のものと大きく異なる場合、その種にとって「復活」と言えるのでしょうか。生命体は環境との相互作用の中で、自分をつくる遺伝子スイッチを入れたり止めたりします。そのスイッチが異なっていく可能性があります。もはや別の「種」になるのではないでしょうか。人間の手で絶滅に追いやることと同様、絶滅を人間の手で食い止めようとすることも人間の「エゴ」なのです。(M・R・オコナー「絶滅できない動物たち」ダイヤモンド社

 

 ここで、いったん「生」とは何かを考えてみます。生物のはじまりはRNAとされています。化学反応が頻発するドロドロの原始地球において、偶然が重なり、生物が生まれ、その中で効率的に増えるものが生き残り、死んだものが材料を供給する「正のスパイラル」が作られました。やがて、よりたくさんの情報を持つDNAが登場します。細胞分裂をしますが、10億分の1程度のミスしか起こりません。しかも、RNAと違って2本鎖なので、片方が壊れても、もう片方で修復が可能です。セーフティが優れているのです。でも、時間が経つにつれて変異が蓄積される確率が高まります。これが、「がん」という「バグ」なのです。このため、がんリスクを最小限にする機能が、無制限に細胞が分裂することを防ぐことである「老化」なのです。つまり、「老化」そして「死」は、進化の過程で生物が獲得した、生命を連続させる仕掛けなのです。(小林武彦「生物はなぜ死ぬのか」講談社現代新書

 生命の連続性について、かのダーウィンは、環境に適応した変異が子孫へ受け継がれるという「自然淘汰説」を唱えました。木村資生は、突然変異は生物の生存競争において有利でも不利でもないという「中立進化論」を唱えました。僕たちは、たまたま生き残ったに過ぎないのです。

 そして、進化の過程で生物は何かを捨ててきました。例えばハツカネズミは食べられて死ぬ確率を減らすため多産の能力を得る一方で、長生きに関わる機能を失っていきました。もちろん、これは結果論です。たまたまそうした種が生き残ったに過ぎません。人間もそうです。直立二足歩行によって発達した脳を獲得しましたが、当時の猿人にとっては、むしろ、パワフルなチンパンジーとの生存競争では不利な立場にありました。最初から「敵無し」だったわけではないのです。しかも、二足歩行によって生じたデメリットに、痔、腰痛、難産などが挙げられます。人間だけが素晴らしいわけではないのです。(斎藤成也「人類はできそこないである」SB新書)

 

 こうした大きな観点で見ると、「絶滅」の受け止め方も変わります。もちろん、それは悲しいことです。僕たちは多様性の恩恵を受けています。多様性が失われた場合、人間も絶滅するかもしれません。それだけ、自然というのは人間の理解や想像を超えるものなのです。環境保護活動でさえ、突き詰めれば僕たち人間が絶滅しないようにする試みです。大事なのは、絶滅していく種を見ながら、「明日は我が身」という覚悟を持つこと、そして、自然の多様性に敬意を持つことなのです。

 

ペットの命があぶない!医療体制を整備せよ!

2022年3月7日(月)

 フーディンだよ。

 

 みんなはペットを飼ってるかい?今や3人に1人がペットを飼っているんだって。特に多いのは犬と猫で、両方を合わせた頭数は約1800万頭。日本の15歳未満の子供は1500万人だから、これをはるかに上回る数なんだな~。もう、家族の一員どころか国民の一員だね。だとしたら、国としても、ちゃんとケアしていかなくちゃあいけないよ。ペットの医療体制を整える必要があるんだな~。

 

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 犬や猫の平均寿命は1980年頃の3~4歳から現在の13~14歳と、この40年間に10歳も延びたよ。こうなるとペットだって、がんや心臓病、関節疾患といった病気のリスクを抱えることになる。おいらたち人間と同じなんだな~。こんな事態になるなんて誰も予測していなかっただろうね。遺伝子もびっくりだ。

 しかも、ペット特有の病気だってあるよ、例えば、犬や猫がかかる腫瘍の3分の1は「乳腺腫瘍」なんだ。人間ではあまり聞かない病気だよね。他にも、心臓病については「僧帽弁閉鎖不全症」と人間では多くないものが、犬の心臓病では9割を占めるんだ。犬座姿勢をとって呼吸が苦しそうなら疑ってみて。それから、まさかの「認知症」にもなるんだな~。ずっと泣き止まない、トイレ以外でおしっこしてしまうなど大変だよ。治療薬も人間のアルツハイマー認知症に使われているものと同じのを使うよ。椎間板ヘルニアも発生するよ。水中トレッドミルを活用した水中療法が徐々に知られるようになっているんだな~。(中村泰治「もしものためのペット専門医療」幻冬舎

 

 こうして病気を並べてみると、人間と大きくは変わらないって感じがするね。問題は、動物病院の多くは1人の医師が全てを診る「1人総合病院」状態になっていて、必ずしも専門医療を提供できるわけじゃないってことなんだな。これだと、適切に処置されないおそれが出てくるよ。

 今、獣医師さんは毎年約1000人ずつ新人さんが生まれて、全国に4万人ほどいる。その内訳は小動物獣医師が39.3%とペット関連の獣医師は多いんだな~。こうした状況から考えると、1人で何でも診ようという体制ではなく、獣医師の地域ネットワークの中で連携して対応できる仕組みを作るべきなんだな~。「リファレンスセンター」方式といって、普段からそれぞれの獣医師の専門を相互に情報共有しておいて、自分のところでは扱いづらい症例があったら、速やかに、ネットワーク内で専門医療を提供できる獣医師に、相互に紹介するよう取り決めをしておくんだな~。地域のペットショップにも情報共有しておくべきだよね。(中山裕之「獣医学を学ぶ君たちへ」東京大学出版会

 

 医療体制だけでなく、飼い主の「準備」も大切だよ。気付いた時には手遅れという可能性があるから、おかしいと思ったらすぐに動物病院に連れて行くことだよ。今、ペット総数は横ばいでもペット関連市場は拡大しているんだ。つまり、1匹当たりにかける金額は増加しているってことなんだ。エサ代に加え、日頃の健康管理や医療にどれだけ費用を割くことができるかがポイントだよ。金銭的に余裕がなくてこれらが支払えないとなると動物虐待って言われちゃうよ。

 また、飼い主のほうが高齢化してしまい、将来にわたる飼育が心配になるって可能性もあるよね。こうしたケースに備えて保険制度を整備しておくべきだな。里親を探してもらったり、積立金から飼育費用を賄ったりするんだ。医療保険もセットにするといいね。ペットを飼う際に、ちょうど自動車を買う時の自動車損害賠償責任保険みたいにこうした制度への加入を義務化すべきだよ。飼い主には飼い主としての責任を全うしてもらおうね。医療体制も含めてこうした環境整備の費用を確保するため、ペット税」を導入してもいいかもね。ドイツ、オランダ、オーストリア、スイス、フィンランド、中国などでは導入されているんだな~。

 

 最後に、ペットを飼育するメリットだよ。飼い主が高齢の場合、健康寿命が延びる、認知機能が向上するなどの効果がみられるんだな~。病院を受診する回数も少なくなるし、犬と散歩することによって医療費の削減につながってるんだってさ。

 あと、言葉を喋らない動物との触れ合いは、相手の気持ちを考えるきっかけにもなるし、自分たちが医療にかかるのと同じ気持ちになれるんだ。例えば、自分が喘息持ちで症状がちょっとひどくなってきたなって感じたら、ひょっとしてペットのほうも苦しんでるんじゃないかなって想像できるよね。逆もそうだよね。お互いが病気の「モニター」として機能するんだ。

 アニマルセラピーに役立つという話もあるけれど、ペットを人間にとって都合の良い存在にしちゃあだめだよ。あくまでも、大切な家族の一員の命を預かっているという自覚を持つことが大事なんだ。それでこそ真の「伴侶動物」と言えるんだな~。

 

中学受験は正しいのか?

2022年2月28日(月)

 エディカよ。

 

 2月も終わりね。中学受験生のみなさん、親御さん、教育関係者の方々、お疲れさまでした。結果はそれぞれでしょうけど、ここでは改めて中学受験の意味って何か、振り返ってみない?

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日本テレビ「2月の勝者ー絶対合格の教室ー」

 大学受験対策を考えると、中学受験イコール中高一貫教育ね。中高一貫教育の良いところは、6年もの間、目先のことにこだわらず、地に足の着いた勉強ができること。特に進学校だと早い段階から幾何を徹底的に学んで数学的な素養を高めるとともに、古典を知ることで、自分たちが無意識に使っている日本語の論理的構造を改めて認識するの。つまり、思考のオペレーションシステム(OS)の性能がぐんと高まるのね。もともと中学受験に合格する時点で地頭の良い子なんでしょうけど、さらに頭脳が鍛え抜かれるの。

 また、高校受験に関わらないから、思春期という大事な時期をじっくり過ごせるわね。人は14歳くらいから抽象的な思考をするようになり、自分や社会を相対化してみることが可能になるの。だからこの時期は「反抗期」でもあるけど、大人になるための大事なプロセスよ。でも、最近の子は比較的おとなしいみたい。ひょっとして、中学校の成績表に「意欲・関心・態度」の項目が追加されたことで「骨抜き」になったのかしら?それとも、習い事づくめの生活の中で、勉強も塾任せになっていて、親が教育に口出ししなくなっているからかしら?

 ちなみに、小学生の習い事にかけるお金は平均1万5300円。内容は、スポーツ(63.6%)、通信教育(60.1%)、塾(49.1%)、アート(28.7%)などね。いずれにしても、この大事な時期を入試対策で追い回している国は世界的にも少ないわ。この日本特有のシステムは戦後の学制改革で生まれたの。全ての人に門戸を広げるため、中学を5年間にした上で、小・中の計11年間を義務教育にしようとしたのだけど、予算が足りなかったから、今のような「6・6・3」制になったのね。その後、一本調子じゃだめだということで、1990年代以降の「多様化」改革で、中高一貫教育や、小中一貫の「義務教育学校」が推し進められたけど、多感な時期を見守るという意味では、中高一貫教育のほうに軍配が上がりそう。中学生の25%が私学に通っているという東京都では、2023年度までに併設型中高一貫教育校の高校募集を止めて、完全中高一貫校化するわ。

 

 一方で、私学人気が復活していることに注目ね。コロナ禍で授業をこなすのに汲々としていた公立中学に対し、いち早くオンライン授業を始めた点が評価されたみたい。また、学業もそうだけど、野球やラグビーなどスポーツでも「私学強し」という好印象が後押ししているわ。もともとは正統派としての公立校に対し、異端としての私学というイメージがあるけれど、現代のように変化の激しい時代では、国の方針に右往左往する公立校に比べると、「建学の精神」という不動点を持ちつつ柔軟に対応をみせる私学は魅力的かも。(おおたとしまさ「なぜ中学受験するのか?」光文社新書

 改めて浮き彫りになるのは「教育」の位置付けね。本来、どんなに些細な教育でも役に立つはずだけれど、教育に投資すればするほどリターンが多いと多くの親が信じ込んでいるわ。(A・V・バナジー/E・デュフロ「貧乏人の経済学」みすず書房

 こうした中、「教育を選ぶ」自由を強調し過ぎると、「教育」が持っている公共性を損なうことになりかねないわ。全国的に90%以上の子どもたちが公立中学校に通っているけど、現実問題、中学校間の学力格差は拡大傾向にあるわ。「教育を選ぶ」声はますます強くなるでしょうね。そうなると、親の財力次第で、私学などを「選ぶ層」と「選べない層」との関係が固定化していくことになるわ。そこへもって親からの「押し付け」が加わると、子どもが歪んでいくことになるわ。思春期の時点で、金銭や安定した地位を大切にしたいという価値観が強い子どもほど、高齢期の幸福感が低くなる傾向にあるみたい。(志水宏吉「二極化する学校」亜紀書房

 

 そもそも学校で学ぶのは、道理を見極めるための「目」を良くすることよ。特定の分野からだけ見ていては現実社会における最適解にはたどり着けない。そして、才能を確認する正攻法は、たっぷり時間をかけて、何が得意なのかを自分で示せるようにすることよ。親にできるのは、せいぜい、「建学の精神」など学校の持つ「ハビトゥス」を見極めて教えてあげることね。「ハビトゥス」とは、フランスの社会学ブルデューが提唱する「文化資本」の一つよ。受験結果は、それはそれとして受け止めて、プロセスを楽しんで欲しいの。親子で受験の「正しさ」について話し合いながら信頼関係を築き、そのことが親子双方の人生を支える、そんな中学受験であって欲しいわ

 

目をそらさないで。ギスギス職場の「逃げない力」!

2022年2月21日(月)

 レーブだ。

 

 日本の職場がまずい状況にある。2015年ISSP(国際比較調査プログラム)の調査対象37カ国中で「職場の雰囲気」は最下位だ。日本生産性本部による新入社員調査では「何も好き好んで苦労することはない」という回答が37.3%と過去最高になった。このままでは職場の「ギスギス」が放置され、日本の労働生産性は底抜けする。今こそ、誰もが「逃げない力」を持つ必要がある。(沢渡あまね「なぜ、日本の職場は世界一ギスギスしているのか」SB新書)

 

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 新型コロナウイルス感染症は職場環境に影響をもたらした。最も大きいのはテレワークが一気に推進したことだ。さぞかし、職場の「ギスギス」から逃れられてひと安心と思うだろう。ところが、米国に比べて日本ではオフィスワークに比べて生産性が下がったと感じている人が多い。結局、日本の雇用・職場がジョブ型ではなくメンバーシップ型を採用しているため、嫌々ながら職場にいて「ギスギス」を覚悟しなくてはならないという構造的問題が存在するのだ。

 これまではメンバーシップ型にもメリットがあった。複雑な問題に柔軟に対応できた。しかし、現代は社会の複雑化が加速化し、既存の職場単位で対応できる事案は少なくなった。そうなると、個々の職員の負担は以前に比べてはるかに増大する。以下は、職場がギスギスする主な要因だが、これらが一斉に襲いかかってくるのだ。

・部門間の連携が取りにくい。

・情報共有が無い。または、上から段階を踏むために遅い。

・管理職や上司が現場を知らず、その意思決定によって現場が振り回される。

 これに、日本特有の問題も加わる。「無謬性の原則」と言って、ある政策やプロジェクトを成功させる責任を負った組織は、失敗した時を想定したり議論したりしてはいけないとする信念がはびこる。つまり、イケイケドンドンはできるが、いざという時に退却することができないのだ。方針を変更する場合は根回しなどにものすごいエネルギーを必要とする。だから、皆、破局に突き進むのを黙認してしまう。(足達英一郎「SDGsの先へ ステークホルダー資本主義」インターナショナル新書)

 

 解決方法として、ものごとの流れの「上流」部分で解決してしまおうという考え方がある。「下流」では問題が起こってからの事後対応がメインだが、「上流」ではシステム全体のことを視野に入れ、問題を未然に防ぐことに注力する。野球の守備に例えると、横っ飛びファインプレーは不要で、最初から打球が飛ぶ方向を予測して、守備位置を変えておくということだ。(ダン・ヒース「上流思考」ダイヤモンド社

 このような問題解決方法を採る理由として、人間の性質が挙げられる。一つは「問題盲」だ。ものごとを「そういうものだ」と思い込んでしまうことだ。当事者意識の欠如が原因にある。これを放置しているとシステム障害に陥る。誰かが率先しなければ誰もやらない。コツは、全責任が自分にあると考えてみることだ。もう一つは「非注意盲」だ。これは、何かに気を取られていて、無関係な重要情報を見落としてしまうことだ。時間的なプレッシャーが加わると事態は悪化する。処方箋として、問題解決のための時間的、金銭的なゆとりが必要だ。こうした場は自然発生的には生まれない。意識して関係者によるミーティングを設けなくてはならない。「トンネリング」という概念も知っておくといい。「視野狭窄」により目の前の事態対処で達成感を感じてしまうことだ。「仕事をした気」になってしまう。システム障害を「見える化」して危機意識を高めることが必要だ

 

 こうした取組のためには組織構成も重要となる。既存の職場の垣根を越えて、戦略的に中核チームを選び抜く必要がある。全ての重要な側面に対応できる多様な人材を用い、問題を包囲するのだ。その際、お互いが対等に話ができるポジションに多様性のある人材を起用することがミソだ。場合によっては外部ファシリテーターを起用して、意見が偏らないよう調整するのも有効だ。組織の上下関係に左右されずフラットになる新型コロナウイルス感染症対応で時の人となった、台湾のデジタル担当大臣オードリー・タン氏によれば、数人の専門家が解決に当たるより、一人ひとりが素養を持つことが大切らしい。(Asahi Shimbun Weekly AERA 2022.1.3-10)

 そのためには、データの取得と共有が欠かせない。設計に誤りのあるシステムを、データを参考に隅々まで考え直し、まさに「問題に寄り添う」のだ。その上で、首尾一貫した目標の設定が大事だ。さらに、システムは間違うものであるということを前提に、進捗状況を測り、必要に応じてやり方を変えていく柔軟性が求められる。こうした姿勢が「逃げない力」となる。若い世代に希望をもたらすためにも、ぜひ明日から取り組んで欲しい!

 

これからは何でもビッグテック企業にお任せします!

2022年2月14日(月)

 トランだ。

 

 新型コロナウイルス感染症との戦いはまだまだ続きそうだ。こうなると旧態然とした管理手法では制御できない。GAFAなどビッグテック企業の手を借りるべきだ。いっそのこと経済だけでなく社会面でもビッグテック企業にお任せしたらどうだろうか?みんなのストレスは確実に減るぜ!

 

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 パンデミック最大の効果は、「ものごとを加速させる作用」だ。これまで遅々として進まなかったeコマースの利用が一気に跳ね上がった。社会の変化も加速しているんだぜ。ソーシャルディスタンスとやらであらゆる種類の「非接触」が評価されるようになったが、現実はコミュニケーションが取りにくくて面倒だ。その「面倒」のすき間にテックが食い込む。顧客の手間を省くためなら何でもするという姿勢が彼らのハートをつかむんだろうな。

 マッキンゼーの調査によれば、日本でも10%は新しいオンラインでの買い方を試している。デジタル化のスピードが早い中国でもオンラインで購入を済ませる層がさらに拡大した。米国など各国政府は景気刺激策と称して国民に現金をばらまいているが、買い物はとなるとオンラインで済ますから、アマゾンは笑いが止まらないぜ。(小松原正浩ら「マッキンゼー ネクスト・ノーマル」東洋経済新報社

 

 これからの世界は少数のアメリカ企業による支配が始まるGAFAたちはあらゆる分野に触手を伸ばす。一方、新興勢力であるユニコーン企業は株式上場なんか目指さずに巨大テック企業に買収してもらうことをひたすら期待する。アップルはウェアラブル事業だけでマクドナルドよりも稼いでいるんだぜ。彼らは規模が大きくなり過ぎて潰せない。もはや生活インフラの一部だ。(スコット・ギャロウェイ「GAFAネクストステージ」東洋経済

 そして、デジタル経済の特徴として、①初期投資はかかるが追加コストが安い、②顧客が一つのサービスに長くとどまろうとする「ロックイン効果」が生じる、に加えて、③雪だるま式に大規模化がどんどん進むというのがある。楽天ソフトバンクなど日本でも有数の企業はあるがGAFAたちの比じゃないぜ。彼らはあらゆるサービスを飲み込んでいく。インターネット市場におけるアマゾン、マイクロソフト、アリババ、グーグルそれぞれの傘下にあるクラウド4社による市場シェアは、2015年の48.8%から2018年には75.1%となり他を圧倒している。

 ここまでくると社会面での貢献も期待されるのは自然な成り行きだ。そのうち彼らが政府の代わりに新型コロナ感染症の効率的な検査体制や健康観察サービスを提供してくれるだろう。教育では、国際的に名の知られている大学と提携して、学位を半額で提供してくれるようになるだろう。新興国の動きにも目が離せない。インド政府は海外プラットフォーム企業を念頭に、国内においてデジタルサービス課税を準備するしたたかさを見せている。自前の企業を育てるのではなく、世界市場に組み込まれていくことを受け入れているようだぜ。(伊藤亞聖「デジタル化する新興国中公新書

 

 もちろん不安要素はあるぜ。人口減少とデジタル化は相性がいい。新型コロナウイルス感染症のようなパンデミックはさらに相性がいい。ビッグテック企業の寡占化が一気に進行するだろう。そうすれば、彼らに都合のよい情報統制やデジタルデバイド情報格差)による不平等が生じることになるだろう。(大橋弘「競争政策の経済学」日本経済新聞出版)

 ビッグテック企業の暴走を止める唯一の勢力は政府だ。鍵となるのは「ユニバーサル・オーナーシップ」をうまく利用することだ。彼らにとってみれば世界を手の平の上で眺めているような気分だ。そうなると、自身の企業のパフォーマンスそのものよりも、世の中全体の経済成長や金融市場のほうが大変気になってくる。つまり、規模が大きくなればなるほど、社会的責任を果たさなければ企業パフォーマンスへの跳ね返りも大きくなるってことに気づくようになる。(足達英一郎「SDGsの先へ ステークホルダー資本主義」インターナショナル新書)

 そこで政府の役割は、彼らのユニバーサル・オーナーシップを利用し、必要なデータを提供して、検査キット配布など様々な行政事務を肩代わりしてもらうことだ。日本の場合、個人情報を利用されることに敏感なくせに、LINEに家族写真をいとも簡単に載せるという二面性がある。使い勝手のいいサービスや人とのつながりが作れるサービスなら許容されるんだぜ。

 課題は、日本がビッグテック企業という「黒船」にアレルギーを持っていることだ。これからは医療や教育にビッグテックが参入していく様子を目の当たりにするだろう。明治維新みたいに、「良いものは受け入れる」という精神が無ければ、ただでさえデジタル化に乗り遅れている日本が、世の中の加速化から一気に取り残されるぜ。

 

スポーツは健康によくて、経済にもいい!?

2022年2月7日(月)

  コノミです。

 

 北京オリンピックが始まりました。日本人の金メダルも出ましたね!新型コロナへの不安もあるでしょうが、選手たちには頑張って欲しいです。

 ところで、昨年の東京オリンピックパラリンピックずいぶん遠い過去のことのような気がしますが、期待されていた経済効果はどうだったのでしょうか?そもそもスポーツは経済活動にとってどの程度意味があるのでしょうか。今後のスポーツのあり方を冷静に考えてみます。

 

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 東京五輪の国の支出額は3兆円を超えるとされています。加えて、新築された国立競技場をはじめとする各競技場の維持費が将来にわたってかかります。テレビ放映も、民放視聴率は通常時とほぼ変わらず、収支も五輪放送全体で赤字と散々でした。「オリンピックなんて二度と国内でやるもんか」という気持ちになりますね。

 厄介なのは、国民が負担を自分ごとと感じていないことです。むしろ、閉幕時の世論調査では「開催してよかった」と過半数と評価しているくらいです。気を良くした日本政府は、早速、2030年札幌冬季五輪の招致に向けた動きを始めています。東京五輪をめぐる騒動、理不尽なIOCパンデミックの可能性を考えると他国も招致に躊躇するでしょう。札幌招致が現実味を帯びてきます。ちなみに、1998長野五輪大会が長野県にもたらした経済効果は、地域のGDPは増えたけど人口一人当たりのGDPに換算したら効果はそれほどではないようでした。(吉見俊哉「検証コロナと五輪」河出新書

 

 招致はさておき、五輪開催によって国民がスポーツやアスリートに対する価値を認めているという点は評価できます。日本リサーチセンターが行った国民意識調査によると、「国民のスポーツに対する関心が高まる」という回答が28.8%、「日本のアスリートのレベルが向上する」が26.6%でした。

 スポーツには、健康の維持・増進により生産性を高めたり、健康的な高齢者を増やして介護費の増加に歯止めをかけたりする効果があります。また、協調性、規律、統率力、忍耐力、気配りといった非認知スキルを修得できる効果もあります。見えにくい点ではありますが、経済活動ではとても重要なスキルです。運動部の経験は将来の賃金を約2%から15%引き上げます。人的資本投資と捉えることができます。また、企業がアスリートを雇用することによる経済効果も指摘されています。モラールの向上や一体感の醸成など、アスリートの行動が周りの従業員の行動に影響を与えるのです。

(佐々木勝「経済学者が語るスポーツの力」有斐閣

 

 心配なのは、日本の将来を背負う若い世代が運動しなくなりつつあることです。全国体力テストの点数が減少しています。原因として、体育授業以外の運動時間の減少、肥満児童や朝食を食べない児童の増加が挙げられます。運動部の活動時間も減少しています。また、スクリーンタイムの増加も要因の一つです。体を動かすことの気持ちよさ、楽しさを経験する前に、スマホゲームなど画面の中で簡単に楽しめることを知ってしまうのです。

 そして、スポーツを「する」よりも「見る」ほうに偏りつつあります。プロ野球の観客動員数は2013年~19年まで増加傾向にあります。街中でランニングする人を見かけます。ジムに通う人も多いです。でも、全体的に「歩数」は減少傾向にあります。運動に対する「二極化」が生じているのです。(田中充ら「スポーツをしない子どもたち」扶桑社新書

 

 スポーツを推進していく必要があります。スポーツがハードルが高いのであれば簡単な運動でよいでしょう。運動神経の応用力が最も発達する9~12歳は「ゴールデンエイジ」と呼ばれ、大人になっても動作を忘れることがありません。このちょっとした差が、歳をとってから大きく現れます。日常生活の中で無理な動きをして膝や足首、腰を故障して、早々に介護保険サービスのお世話になることは極力避けたいです。ちなみに、介護費用は、週1回以上スポーツに参加している人は、全く参加していない人よりも61万円少なくなります。

 でも、勘違いしてはいけません。オリンピックや国体など大イベントを積極的に開催する必要はありません。競技場の新築も不要です。大がかりな環境整備ではなく、オンラインでも楽しめるよう工夫すべきです運動療法で必要なスペースは1人当たり20㎡とされています。例えば体育館でスクリーンを活用して五輪会場を再現し、運動してもらうのも手です。軽量ゴーグルを使ってVRで臨場感を楽しむのもいいでしょう。遠くにいる人ともつながります。

 1964年の東京五輪を経験した世代は、経験していない世代に比べてスポーツをしている割合が高いそうです。2020東京五輪の「レガシー」はあるのでしょうか。忘れ去られる前に、今後に活かせるようみんなで知恵を絞っていきましょう。