目をそらさないで。ギスギス職場の「逃げない力」!

2022年2月21日(月)

 レーブだ。

 

 日本の職場がまずい状況にある。2015年ISSP(国際比較調査プログラム)の調査対象37カ国中で「職場の雰囲気」は最下位だ。日本生産性本部による新入社員調査では「何も好き好んで苦労することはない」という回答が37.3%と過去最高になった。このままでは職場の「ギスギス」が放置され、日本の労働生産性は底抜けする。今こそ、誰もが「逃げない力」を持つ必要がある。(沢渡あまね「なぜ、日本の職場は世界一ギスギスしているのか」SB新書)

 

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 新型コロナウイルス感染症は職場環境に影響をもたらした。最も大きいのはテレワークが一気に推進したことだ。さぞかし、職場の「ギスギス」から逃れられてひと安心と思うだろう。ところが、米国に比べて日本ではオフィスワークに比べて生産性が下がったと感じている人が多い。結局、日本の雇用・職場がジョブ型ではなくメンバーシップ型を採用しているため、嫌々ながら職場にいて「ギスギス」を覚悟しなくてはならないという構造的問題が存在するのだ。

 これまではメンバーシップ型にもメリットがあった。複雑な問題に柔軟に対応できた。しかし、現代は社会の複雑化が加速化し、既存の職場単位で対応できる事案は少なくなった。そうなると、個々の職員の負担は以前に比べてはるかに増大する。以下は、職場がギスギスする主な要因だが、これらが一斉に襲いかかってくるのだ。

・部門間の連携が取りにくい。

・情報共有が無い。または、上から段階を踏むために遅い。

・管理職や上司が現場を知らず、その意思決定によって現場が振り回される。

 これに、日本特有の問題も加わる。「無謬性の原則」と言って、ある政策やプロジェクトを成功させる責任を負った組織は、失敗した時を想定したり議論したりしてはいけないとする信念がはびこる。つまり、イケイケドンドンはできるが、いざという時に退却することができないのだ。方針を変更する場合は根回しなどにものすごいエネルギーを必要とする。だから、皆、破局に突き進むのを黙認してしまう。(足達英一郎「SDGsの先へ ステークホルダー資本主義」インターナショナル新書)

 

 解決方法として、ものごとの流れの「上流」部分で解決してしまおうという考え方がある。「下流」では問題が起こってからの事後対応がメインだが、「上流」ではシステム全体のことを視野に入れ、問題を未然に防ぐことに注力する。野球の守備に例えると、横っ飛びファインプレーは不要で、最初から打球が飛ぶ方向を予測して、守備位置を変えておくということだ。(ダン・ヒース「上流思考」ダイヤモンド社

 このような問題解決方法を採る理由として、人間の性質が挙げられる。一つは「問題盲」だ。ものごとを「そういうものだ」と思い込んでしまうことだ。当事者意識の欠如が原因にある。これを放置しているとシステム障害に陥る。誰かが率先しなければ誰もやらない。コツは、全責任が自分にあると考えてみることだ。もう一つは「非注意盲」だ。これは、何かに気を取られていて、無関係な重要情報を見落としてしまうことだ。時間的なプレッシャーが加わると事態は悪化する。処方箋として、問題解決のための時間的、金銭的なゆとりが必要だ。こうした場は自然発生的には生まれない。意識して関係者によるミーティングを設けなくてはならない。「トンネリング」という概念も知っておくといい。「視野狭窄」により目の前の事態対処で達成感を感じてしまうことだ。「仕事をした気」になってしまう。システム障害を「見える化」して危機意識を高めることが必要だ

 

 こうした取組のためには組織構成も重要となる。既存の職場の垣根を越えて、戦略的に中核チームを選び抜く必要がある。全ての重要な側面に対応できる多様な人材を用い、問題を包囲するのだ。その際、お互いが対等に話ができるポジションに多様性のある人材を起用することがミソだ。場合によっては外部ファシリテーターを起用して、意見が偏らないよう調整するのも有効だ。組織の上下関係に左右されずフラットになる新型コロナウイルス感染症対応で時の人となった、台湾のデジタル担当大臣オードリー・タン氏によれば、数人の専門家が解決に当たるより、一人ひとりが素養を持つことが大切らしい。(Asahi Shimbun Weekly AERA 2022.1.3-10)

 そのためには、データの取得と共有が欠かせない。設計に誤りのあるシステムを、データを参考に隅々まで考え直し、まさに「問題に寄り添う」のだ。その上で、首尾一貫した目標の設定が大事だ。さらに、システムは間違うものであるということを前提に、進捗状況を測り、必要に応じてやり方を変えていく柔軟性が求められる。こうした姿勢が「逃げない力」となる。若い世代に希望をもたらすためにも、ぜひ明日から取り組んで欲しい!