2023年3月20日(月)
フーディンだよ。
今年の花粉は多いんだな~。おいらは花粉症だから、鼻が詰まってご飯の味がしなくなるんだな~。
ところで、「味」っていつも同じじゃないって知ってた?ちょっとしたことでコロッと変わるよ。例えば魔法のカップ。水を注いだだけで、あ~ら不思議!オレンジジュースに化けちゃうんだ。秘密はカップに仕込まれたアロマとカップのオレンジ色にあるんだ。かき氷のシロップも同じだよ。メロン味もイチゴ味も、実はどれも同じ味なんだ。違うのはフレーバーと色。脳って簡単にだまされる。ということは、味覚を上手に「ハッキング」できれば、健康や環境にやさしい食事だって提供できるってことだよ!
見た目やにおいだけじゃなく聴覚も大事だな~。ポテトチップスをかみ砕く音を増幅させると脳は新鮮さを感じる。好きな音楽はジェラートの甘さを引き立てるし、嫌いな音楽は苦さを際立たせる。
なんでこうも影響されやすいのって思うかもしれないね。こうした能力は、経験等を通じて、食べ物の味や性質、栄養価や食後の体に何が起きるかを予想するのに役立ってるんだな。サクサク感はフルーツや野菜の新鮮さを見分けるヒントになるし、カリカリといった音が大きいほど脂肪分が多いと分かって脳がうれしくなる。
逆に、この能力をうまく利用すれば、不健康な食べ物を口にすることを減らすことができるし、食べ過ぎや肉食を最少化して、エコな食生活を実現できるんだな~。
例えばお皿。四角いものより丸いお皿のほうが食べ物を「甘い」と感じるんだ。また、お皿のサイズを小さくすると摂取カロリーが減る。高齢者の大半は無嗅覚が進行しているから食べ過ぎちゃうかもしれない。フレーバー要素を増やして満足感が得られれば摂取量を減らせるよ。
また、脳って意外に容量が少ないから、始まりと終わりだけを覚えようとするんだ。食品の最初と最後の一口にあたる部分だけ、不健康であっても味のよい成分を使う試みもなされているよ。塩分が外側だけ多いパンとかね。(チャールズ・スペンス「『おいしさ』の錯覚」角川書店)
テクノロジーの利用にも期待したいね。ARやVRの技術を使って食事中の脳をハッキングすれば、カロリーたっぷりな食事をしているつもりでいて、実は健康的なものを食べているってことが可能になるんだな。
ゴーグルをかけながら、「今日は地中海の夕日でも眺めながらステーキをいただこう」と大豆肉を食べててもいいね。舌に特定の電気刺激を加えて味を感じさせる「電気味覚」の技術もユニークだね。減塩味噌汁を、味の濃い味噌汁のように錯覚させるスプーンが実用化されつつあるよ。
こうしたテクノロジーは動物福祉(アニマルウェルフェア)にも有効なんだな~。ヴィーガンほどじゃなくても動物福祉を気にかけている人は結構いる。そんな人たちに、いつもお肉じゃなくても、大豆肉やお魚を摂ってもらうことができるんだ。ベジタリアンだとビタミンD、ビタミンB12、コレステロール、カルシウムの摂取量が減っちゃう。環境に気を遣いながら、動物性食品を時々取り入れる柔軟な「フレキシタリアン」を目指すだけでも大事なことだよ。(森映子「ヴィーガン探訪」角川新書)
こうした技術は「文化」までも変えてしまうよ。出来合いの製品でも十分ってことになるし、誰だって食事を用意することが可能になるんだ。
いわゆる「おふくろの味」さえ「味覚ハック」で創作できちゃうんだな~。そもそも「おふくろの味」自体がごく最近になって作られたイメージだよ。温かいご飯と味噌汁という生活は、今のような核家族が誕生してできた生活様式なんだ。そのせいで、日本では家事・育児を担当する女性が男性の5.5倍といびつな状況になっちゃったけど・・・。(湯澤規子「『おふくろの味』幻想」光文社新書)
「食」は生きていく上で重要な活動。生活様式や文化をも決めてしまうんだ。こうしてみると「味覚ハック」は大革命なんだな~。すっとろい「脳」をだますんだから、人類史上最大の詐欺行為だね。
その果てに、どのような生活様式が生まれるのか、世の中の仕組みをどうリデザインしていくべきか、考えておかなくちゃいけないね。少なくとも「食」の個人化は避けられないだろうね。家族団らんという風景は珍しくなるんじゃないかな。これまでだって人間社会は狩猟採集時代や農耕時代を経ながら変化してきた。ちょっと寂しい気もするけれど、これも新しい社会のあり方だと受け止めていくしかないね。