「副業ビッグバン」でスーパー人材が誕生!?

2022年8月29日(月)

 レーブだ。

 

 「副業できたらいいのになあ」と思っている人は多いだろう。一つの職場に縛られず、身の置き場が増える。気分転換にもなるし、人との出会いも増える。ペットブームの昨今、飼い主に代わってペットを散歩させる代行業もあるらしい。ペット好きにはたまらないだろう。自分の人生をより豊かにできそうだ。

 しかし、現実は甘くない。うかつに手を出すと疲れる。芸人が下積み時代に飲食業なんかでバイトしていたという話をよく聞くが、ネタを書く時間を取れなければ本末転倒だ。誰もが充実感を味わえる副業のしくみにするべきだ。

 

 

 国による副業政策は今回が初めてではない。明治末期から大正にかけて、農家に対し副業が奨励された。農業の機械化が進み、人手が余るようになったからだ。同時に第1次産業である農業から第2次産業である工業へ産業構造自体が変化することとなった。人々は農村部から都市部へと移動した。移動した労働者は企業が吸収した。

 次の節目はバブル崩壊後だ。1995年、経団連は不景気を乗り切るために「雇用の流動化」を提唱した。聞こえは良いが、要は非正規雇用を増やして人件費全体を抑えにかかったのだ。先進国の中でこれほど非正規雇用が増えているのは日本だけだ。当然ながら、正規雇用に「雇用の流動化」は生まれなかった。(大村大次郎「経済危機の世界史」清談社)

 さらに、時代は下って2018年、厚生労働省が公表しているモデル就業規則が改定され、ついに、原則禁止とされていた副業が許可された。

 想定されているのはIT技術の活用だ。クラウドソーシングサービスが手っ取り早い。記事を書いたりデザインを提供したりと、自分の特技を活かすことができる。また、新型コロナウイルス感染症を気にしなくてはいけない中、「巣ごもり」食事を提供するウーバーイーツ、来店の必要が無い「LINE相談」はありがたい。テレワークを駆使すれば、通勤ストレスともおさらばだ。実際、多くの副業保有者は、自宅やカフェ、ファミレスを職場として利用する傾向にある。(「副業お得技ベストセレクション」晋遊舎

 副業を希望する者が副業すると幸福感が高まる上、副業を持っていない者と比べて年収も上がる。これは、転職・起業によるものであり、「飛び石効果」と言われる。副業の推進は「雇用の流動化」を高めるのだ。

 

 一見すると、副業は自由度が上がり、労働者にとってメリットが大きいように思える。しかし、歴史を振り返ると、企業側が推し進めてきたのは、雇用の不確実性を高めて人件費の上昇を抑制することにある。

 副業を選択する労働者が増えるということは、別の角度から見れば、自社の新規雇用を絞った上で、全国を対象にアウトソーシングして、外部の即戦労働者をより安い賃金で使用することができるともとれる。現時点で正社員の副業を全面的に認める企業は23.7%と低調なのは、ひょっとしたら良いことなのかもしれない(2022.6.25日本経済新聞)。

 課題は収入だ。副業を持つ者の約65.4%が金銭的な動機を持つ。また、世帯所得200万円未満のワーキング・プア世帯が、最も副業を持つ傾向にある。彼らは活動時間を最大限仕事に充てることになる。これで疲れないわけがない。週当たりの労働時間が55時間を超えると仕事満足度が高まるとされているが、彼らには当てはまらないだろう。その一方でメンタルヘルスは悪化する。身体を壊してしまっては元も子もない。こうなると労働者はもはや「道具」だ。同じ道具なら、AIやロボットのほうがうまくこなせるかもしれない。副業の推進はこうしたリスクを伴うことを忘れてはならない。(川上淳之「『副業』の研究」慶應義塾大学出版会)

 

 ではどうしたらよいか。「同一労働同一賃金」と「ワークシェアリング」がヒントになる。労働時間の基本単位を「8時間」ではなく、「4時間」としてはどうだろう。例えば、午前8:00~12:00は自宅でA社のテレワークを行い、休憩や移動をはさんで14:00~18:00はB社の営業活動を行う。「本業」「副業」という概念自体が無くなる。こうした毎日をしばらく続け、A社とB社を比べて気に入ったほうを4時間✕2単位とフルにしてもいい。または、A社を固定しておいて、B社をC社やD社にチェンジするのもありだ。給与は各社半分ずつとなる。4時間もあれば、個人の能力をそこそこ活かすこともできよう。他社の業務を経験することで幅も広がる。企業からすると、労働者の人流が倍増する。良い人材に当たる確率も高まる。

 現在、副業を持つ者は労働力人口の1割にしか過ぎない。これが、2割3割と増えていけば、雇用市場の雰囲気も変わる。これこそが「副業ビッグバン」だ。一流の能力を複数持つスーパー人材も誕生しよう。世界に類を見ない壮大な仕掛けで、日本の経済成長を促したい。

 

目指せ「物流王」!第4のグローバル化を制するのはどこ?

2022年8月22日(月)

 トランだ。

 

 第4のグローバル化が静かに進行しているぜ。世界は「自国ファースト主義」に傾きかけているが、波は必ず来る。いち早く安定して商品やサービスを届けられる仕組みは、世界に安心をもたらす。第4のグローバル化を制する企業にこそ「物流王」の称号がふさわしいぜ。

 ここで、グローバル化の歴史を振り返ろう。第1のグローバル化産業革命後、イギリスを中心にスタートした。蒸気船と電信という二大技術が遠距離貿易を容易にした。その後の二つの世界大戦はまさに「自国ファースト主義」がもたらしたものだ。戦後、その反省から国際協調の道が模索される。例えば、仕組みの面では輸入関税の削減を目指したGATT、搬送技術面ではコンテナ輸送だ。こうして、第2のグローバル化が展開される。日本もこの波にうまく乗った。

 第3のグローバル化は1980年代後半からの規制緩和による市場メカニズムがエンジンとなった。しかし、リーマンショック、米中対立、イギリスのEU脱退、新型コロナ、ロシアのウクライナ侵攻を経て、各国が相互不信に陥っている。第3次世界大戦の可能性さえ指摘されている。命運を握るのは来たる「第4のグローバル化」だ。貧富の差を解消し、世界平和を実現しなくちゃならないぜ

 

 「第4のグローバル化」の特徴は、デジタル技術を全面に押し出したバリューチェーンだ。モノの移動はサプライ・チェーンで提供されるが、デジタル技術を使うことでモノの移動の量や距離を減らすことができる。そして、モノ以上に、サービス、研究開発、エンジニアリング、デザインが伝わる。

 例えば、音楽を聴くためにレコードを輸入する必要は無い。再生機器さえあればインターネットから好きな曲をダウンロードすればいいからだ。その再生機器だって、部品はいろんな国から集まる。部品も3Dプリンターを使えば手元で作れるかもしれない。原材料だけお取り寄せすればいい。このように、チェーン自体、いろんな国や地域にまたがる。世界がマルチにつながるってことだ。(マルク・レヴィンソン「物流の歴史」ダイヤモンド社

 

 搬送などロジスティクス技術だって進化するぜ。省人化と効率化だ。船舶が無人自動運航になれば海賊対策にもなる。陸ではトラックの隊列走行が見られる。倉庫ではコンピュータが音もなく検品や在庫管理を行う。ラストワンマイルにはロジスティクス・ドローンや電動無人宅配ロボットのお出ましだ。最適なコースが選択されるぜ。

 リスクや倫理もシステム内に取り込まれる。自然災害に遭遇したら輸送ルートを変更して被害を軽減する。各地の生産品目データを持っておけば、単一の国や供給ルートに依存せずに迅速に資材や部品を確保できる。新型コロナで起きたように、一国でマスクを独り占めするなんてできないぜ。物流で生じる温室効果ガスの削減にも配慮できる。不当労働もデータ管理でチェックだ。リバースチェーン(静脈連鎖)にも思いをいたそう。RFIDを活用すれば不法投棄の防止につながるぜ。(鈴木邦成ら「シン・物流革命」幻冬舎

 

 じゃあ、「第4のグローバル化」の旗手となる企業はどこだろう。アマゾンや楽天は自前配送の代表選手だ。ニトリアイリスオーヤマは製造から物流まで抑えている。ヤマト運輸は「YAMATO NEXT100」の下、宅急便のDXを推し進めている。アメリカのウォルマートは小売店をフルに活用してオムニチャネルを実現した。アリババは国内なら24時間以内、海外でも72時間以内に商品を届けられるよう、中国の主要宅配会社によるプラットフォームシステムを活用している。世界最大級の宅配会社DHLは、ウェアラブル端末で作業員の効率化を図るなど最新テクノロジーをふんだんに採り入れつつ、汎用性の高いマネジメントシステムで世界のデファクト・スタンダードの地位を狙っている。(角井亮一「物流戦略ノート」宝島社)

 

 百花繚乱といったところだが、攻略ポイントはグローバル化の歴史が教えてくれるぜ。搬送技術や情報通信技術の向上に加えて、ずばり世界標準を目指すことだ。今や一般家庭の消費対象はモノからサービス、経験へと移りつつある。背景には高齢化やレンタルサービス、シェアリングサービスといった、無駄にモノを持たなくてもよい社会の出現がある。工場・機械・土地への長期的なコミットメントも要らない。より柔軟な国際ビジネスの形が求められている。こうした標準スタイルを先取りしていくことが重要になる。

 併せて戦略的拡張が必要だ。まずは国内外をまたがって実装化し、システムを安定化させる。ここで信頼を勝ち取ることができれば、グローバル化に乗り込んでいくことができる。そのためには、目指す方向が世界の人々の幸せにつながるものでなくてはならない。「物流王」はその称号に恥じぬよう、崇高な理念を持つ必要があるんだぜ。

 

進歩したいなら、「オープン」それとも「クローズド」?

2022年8月15日(月)

 コノミです。

 

 今日は終戦記念日です。ウクライナの紛争は続いています。世界の平和を願わずにはいられません。紛争は「わたしたち」と「あなたたち」を隔てることから始まります。そして、経済事情が大いに関わります。リーマンショック、コロナショック、今回のインフレを経て、世界は内向きになっています。これからどうなるのでしょうか?

 

 

 もともとヒトは協力的な生物です。チンパンジーの黒目のまわりは茶目です。仲間に視線の先を悟られないためです。だから獲物をゲットできます。一方のヒトは白目です。自分が注目するものは仲間にも分かり、情報をたやすく共有できます。生まれながらにして「オープン」なのです。「オープン」だと、違った性質の人々が出会い、思想を豊かにし、多くの問題を解決できます。このことが文明にイノベーションと進歩をもたらします

 シリコンバレーは自由な気風で知られています。グーグルでは、創業者ラリー・ペイジらが開発アイデアを出せばスタッフの間に自由な意見が飛び交います。地位を誇示するような個室は一つもありません。その雰囲気は「幼稚園の遊び場」と表現されています。また、フェイスブックザッカーバーグによる株主への手紙には、「オープンであれ」と書かれています。(山根節ら「なぜ日本からGAFAは生まれないのか」光文社新書

 歴史も「オープン」であることの重要性を教えてくれます。中国の宋(960~1279年)はイギリスよりはるか前に産業革命を起こすポテンシャルを持っていました。国内統一後、皇帝は将軍を引退させ、内政に力を入れました。イスラム商人、インド僧侶、ペルシャ人、ユダヤ教徒を歓迎し、都市は商人や科学者であふれました。百科全書が編集され、陶製の活字による印刷が発明されました。茶の商人により紙幣が生まれました。鉄の生産量は1700年頃のヨーロッパ全体の量に匹敵するほどでした。

 オランダは小さな国ですが、17世紀に黄金時代を迎え、「オランダの奇跡」と呼ばれました。これも、ユグノー派、プロテスタントユダヤ教徒、クェーカー教徒など他の国で弾圧された集団にとっての移民先となり、頭脳が集まり、産業が発達したおかげなのです。(ヨハン・ノルベリ「OPEN」NewsPicksパブリッシング)

 

 悲しいことに人間は部族人でもあります。協力はしますが、それは他人を倒すためでもあります。「オープン」は生活に安全や裕福をもたらしてくれますが、人はしばしば「オープン」であることに不安を感じます。そして、わずかな不安や不快を感じるだけで他の集団に対し不寛容になります。こうした心理が、トランプ大統領の「アメリカ・ファースト」やイギリスのブレグジットを生んだのです。

 都市や国が発展する過程でも、保護や防衛、つまり、「クローズド」であることが支持されます。アメリカ建国の父の1人であるハミルトンも、「国際レベルの分業を拒んでこそ、国家の生産性は分業によって向上する。」と断じました。(マシュー・C・クレイン&マイケル・ペティス「貿易戦争は階級闘争である」みすず書房

 貿易も同様です。貿易は品物に価格差が生じることで行われますが、現実的には、その利益を最初に得たものが後続の国々に追いつかせないよう、「自由貿易」を主張しています。中国はWTOに加盟することで世界の工場として躍進しました。その一方で、外国企業には国内企業との合弁事業を求めたり、技術移転を強要したりしたのです。中国では指導者は、自分の求めるものが分かっていれば産業とイノベーターに対して極めて大きな自由を与えますが、その反面、「意外性」を嫌います。(長沼伸一郎「現代経済学の直観的方法」講談社)(トーマス・オーリッツ「CHINA:中国経済の謎」ダイヤモンド社

 

 このように、「オープン」であるべきか「クローズド」であるべきかは、人間の本質に照らしても、歴史に照らしても、難しい問題であり、タイミングが重要です。最初は「オープン」であるべきです。「意外性」は「オープン」な社会でこそ生まれる強みです。そこから「勝ち組」が生まれます。

 大事なのは勝ちすぎないことです。集団が大きくなり、安定を維持しようとする人たちが増え、集団が内向きになります。その時、文明の衰退が始まります。ヨーロッパが今も世界の中心の一角を占めているのは、幸か不幸か、国家としても思想としても統一できなかったからです。

 勝ちすぎないようにするためには、独占禁止法などの規制が必要です。そうです。「クローズド」の出番です。その際には一定の基準を設け、そこに達したら再び「オープン」にするという柔軟さがあるといいです。基準は「ジニ係数」や「失業率」「インフレ率」などが挙げられます。この絶妙なバランス感覚を実行に移せる国が、真の安定を維持することになるでしょう。

 

忍び寄るクライシス。守ろう!「ワークウーマン」の健康

2022年8月8日(月)

  ハルです。

 

 渡辺満里奈さんたちが、「大人の女史会」というプロジェクトの中で更年期のことを語っていますね。女性ホルモンが枯渇して「砂漠です」にはドキッとしました。日本の女性は男性より平均寿命は長いものの、健康寿命についてはそこまで差がない状況にあります。女性の社会進出を後押ししようというのであれば、女性の健康を守ることが重要になります

(平均寿命)男81.41 女87.45 (健康寿命)男72.68 女75.38(いずれも令和元年)

 

 

 女性の健康の特徴は、ライフサイクルに応じて考える必要があるという点です。月経があり、ライフイベントとして妊娠・出産があるのです。

 月経は月経痛のほか、動機、めまい、頭痛、悪心、嘔吐などの症状を伴います。毎月あると思うだけでもげんなりしますが、加えて、月経の3~10日前にうつやイライラなどの精神症状をきたすことがあります。これは月経前症候群PMS)と呼ばれ、女性の9割が影響を受けます。でも、満足に研究されたためしはありません。むしろ、勃起不全(ED)の研究のほうが進んでいて、様々な治療薬があるくらいです。

 こんな月経とおさらばできるのは嬉しいかもしれませんが、閉経前後に更年期障害が出現する可能性があります。症状はのぼせ、ほてり、めまい、うつ、食欲不振など様々です。出現時期は45~55歳であり、職場では管理職を任されるなど周囲から頼られる時期と重なります。

 そして、妊娠の時期には糖尿病や高血圧などの妊娠合併症が出現するリスクがあります。ただでさえ、お腹の子どものことを心配しなくてはなりません。自身の健康管理も忘れてはならないのです。

(太田博明ら「女性医療のすべて」メディカルレビュー社)

 

 こうした事情があるため、職場で男性と同じ働きを求める単純な「当てはめ」は困難であり、そのことが「女性の不利」を生んできました。結果、無償労働の75%は女性が担う状況となっています。それでも、職場で働くことも求められるので、世界中どこでもほぼ例外なく、女性は男性よりも長く働いています。ちなみに、ILO(国際労働機関)は、労働時間は週48時間を超えてはならないとしていますが、その「労働」とは有給労働のことです。家庭での無償労働はカウントされていません。女性の場合、長時間働くと心臓疾患やがんなど命に係わる病気の発症リスク、うつ病や不安症の発症リスクが高まります。配慮が必要です。(キャロライン・クリアド=ペレス「存在しない女たち」河出書房新社

 職場での化学物質への曝露も要注意です。一般に女性は男性より体が小さく皮膚も薄いため、毒物に対する安全な曝露量が低くなります。その上、体脂肪率が高く、脂肪に蓄積しやすい化学物質を吸収してしまいます。ネイルサロンでは毎日、マニキュア液、ニスに含まれている様々な化学物質に曝露することになります。こうした化学物質の多くは、がん、流産、肺病との関連が指摘されています。立ち仕事も多いです。男性より血圧が低い女性にとって、足のむくみも悩みです。

 その他、男性に馴染みの薄いものに、やせ願望と骨粗鬆症があります。ぽっちゃりした女性よりもスレンダーな女性を美人ともてはやす文化が影響を与えています。典型はモデルです。彼女たちに摂食障害が多いことは知られていません。自ら食事制限を行い、体重減少や無月経をきたすのです。女性の社会的役割が変わる中で、母性を中心とした伝統的な女性観を嫌がり、自ら「からだ」をコントロールしようとするのです。(ロバート・L・パーマー「摂食障害者への援助」金剛出版)

 無理なダイエットでカルシウムを十分に摂っていないと、骨粗鬆症のリスクが増大します。閉経により女性ホルモンが欠乏し、骨が脆弱になります。だから、成人すると手遅れで、フレイル状態に陥るおそれが高まります。若い時からの健康な食習慣と運動習慣が重要なのです。

 

 女性の健康を守る社会にしなくてはなりません。今後の取組として、研究が挙げられます。女性の健康に関するデータの蓄積は、男性と比べて圧倒的に少ないです。ライフサイクル別に健康課題を整理し、日常生活や仕事への影響も評価する必要があります。

 もう一つは理解の促進です。三菱UFJリサーチ&コンサルティングが行った生理痛に関する実態調査によると、男性の76%は「分からない」「生理痛はない」と回答しています。特に男性は正しい知識を持つことが重要です。併せて、月経随伴症状や更年期障害のように目に見えにくく、想像力が働きにくい健康課題については、差別や偏見を招かないよう注意を払う必要があります。アンケート調査を通じて注意喚起する手法が有効です。

 少子化社会となり、「子どもを守る」という意識は高まりました。今度は、社会全体で「女性を守る」という意識を持つことが大切です。

 

ついに来たインフレ!「異次元の崩壊」の始まり

2022年8月1日(月)

 フィナよ~。

 

 たつき諒の漫画『私が見た未来』(飛鳥新社)は、2011年3月の東日本大震災を予言していたと評判ね。そして、同書によると、2025年7月には日本列島を襲う地球規模の大災難が起きるみたい。

 でも、私の見立てだと、起きるのは自然災害じゃなくて世界経済の大混乱。今、インフレがひたひたと迫っている。これは予兆よ。そして、気がついたら、あっという間に社会のシステムが崩壊しているおそれがあるわ。備えが必要よ。

 

 

 インフレが起きる根拠は以下の3つ。

①世界規模で高齢化が進み、生産力が低下する。

②世界経済をけん引した中国経済が減速し、これに代わる規模の経済は生まれない。

③過度の金融緩和によって作られた相場が崩壊する。

 

 これまでの30年間を振り返ると、あまりにもデフレが世の中を支配してきたわ。その大きな要因は、労働力人口が増加し、供給が需要を上回ったことによるもの。要はモノがあふれて物価が抑えられたのね。

 先進国では戦後のベビーブーマーが労働力を担ってきたわ。女性や65歳まで働く人も増えた。そして、中国の目覚ましい経済成長、ソ連崩壊後に東欧諸国がグローバル経済に参入したことで、大量の労働供給がなされたのね。こうして完成したデフレへの圧力はあまりにも強力だったため、リーマンショック後に行われた大規模な金融緩和や財政投入をもってしても、マイルドインフレーションさえもたらすことはできなかったわ。国が金をどんどん刷っては、というMMT(現代貨幣理論)まで飛び出したわ。(チャールズ・グッドハート&マノジ・プラダン「人口大逆転」日本経済新聞出版)

 

 でも、ついに労働力人口が限界を迎える時が来たの。先進国を中心に少子高齢化が進み、労働人口は減少していく。その上、高齢になると認知機能や運動機能の低下は避けられなくなる。医療・介護のコストは劇的に増加するわ。たとえIT技術を使って労働の自動化が進んだとしても、こうしたケア労働まではカバーできないわ。移民の数も減少傾向にあるから、これまで何とか持ちこたえてきた国もこれからは厳しくなるでしょうね。

 そして、何と言っても中国の経済成長が鈍化することは大きいわ。経常収支黒字は2007年にピークを迎えていて、これからは赤字に振れていくでしょうね。地方の余剰労働力が都市部へ移動することで生じた利益も底を打つわ。「90後」と呼ばれる1990年生まれの若者なんか、給料のほとんどを趣味や娯楽、ファッション、美食に費やしていて自立とは程遠いみたい。「一人っ子」政策を「二人っ子」政策に転換したところで、教育や住居にお金がかかるから人口増加は望めないわ。(青樹明子「家計簿からみる中国 今ほんとうの姿」日経プレミアシリーズ)

 だからこそ、国外に打って出ようと「一帯一路」構想を唱えたはいいけれど、成長が乏しい世界で十分な経済活動が行われるかは疑問ね。中国が望み薄ならと、同様に巨大な人口を抱えるインドに期待が集まるかもしれないけど、インドの弱点は行政資本が極端に弱くって、戦略的な協調性に欠けること。ここは民間活力に頼りたいとこだけど、いかに早く効率的に規制緩和を行えるかが鍵よ。

 以上のような人口トレンドを背景とした世界経済の退潮に加えて、グローバル化から自国ファーストへの反転、原油の値上がり、新型コロナ感染症による流通の停滞と感染終息後の景気回復、ロシアのウクライナ侵攻等の地政学リスクの上昇、米ドル利上げなどによって、インフレが進行することは間違いないわ。

 

 じゃあ、これからどうなるのかしら?

 インフレは私たちの生活を直撃するわ。なるべく無駄な買い物はしなくなるわね。将来が不安だと貯蓄が進むわ。こうして、消費活動が低下して、経済が縮小するの。そうなると、いかにAIやDXで経済成長させると言ってみたところで、「稼ぎ場」が小さくなるわけだから限界があるわ。

 金融面の影響は危機的よ。膨らみ過ぎた株価も天井を打っているから、いざ売りが始まると「投げ売り状態」になるわ。そうなると、みんな現金を欲しがって金利が上がるでしょうね。金利が上がると債権価格も下がって、こちらもバーゲンセールが始まるわ。年金は巨額の運用損失を被るし、国債を大量発行してきた財政運営も一気に窮地に陥るわ。今度は「異次元の崩壊」が起きるでしょうね

 

 問題はこうした事態に全く準備ができていないことよ。今からでも財政規律を「死守」することが大事よ。そして、年金不安に応えながら、消費市場を適正な規模に維持するため、いよいよベーシック・インカム導入の議論を本格化させることね。マイナンバーカードを普及させて給付を確実にするとともに、財源を確保するため、徴税を確実に行って再分配できるよう確固たる仕組みにするの。ピンチはチャンス、新しい世づくりをスタートさせるのよ

 

さようなら男性・・・人新生は「女性がリード」する時代です。

2022年7月25日(月)

 ソシエッタです。

 

 ウクライナ侵攻は長期化し、混沌としています。ロシアのプーチン大統領に毅然と立ち向かい、NATO加盟に踏み切ったフィンランドのマリン首相、スウェーデンのアンデション首相はいずれも女性です。

 現代社会はあまりにも「男性中心」で作られ過ぎています。その社会とは経済至上主義の世の中です。そして今、行き着くところまで来てしまった感があります。これからは人口が減って国を維持できなくなります。環境問題のように経済成長の足を引っ張ると捉えられる課題は先送りされ、結局は自分たちの首を絞めることになります。「人新生」の社会は、人類全員が共栄すること、地球と共存することが求められます。女性がリードする社会が切望されます

 

 現代社会では「男性=普遍的」です。私たちの意識の奥底にまで浸み込んでいます。 ごく身近な例だと、オフィスの標準室温があります。標準室温は、1960年代に47歳で体重70キロの男性の安静代謝率を基準に設定されました。でも、女性の安静代謝率は男性より少ないです。だから、標準室温は、女性にとっての適温より2.8度も低くなっているのです。女性はクーラーの効く部屋で、余分に一枚服を重ね着しなくてはなりません

 命の危険さえあります。自動車事故に遭う確率は男性の方が高いですが、女性が事故に遭った場合の重傷化率や死亡率は男性より高くなります。女性にとっての安全性が十分でないのです。ニュースなどで見る衝突安全テストでは、運転席に男性ダミーを、助手席に女性ダミーを置くのが典型です。これでは、運転席のスペースなど女性に適したデータが取れません。妊婦だとなおさらです。

 医療データはもっと露骨です。医薬品の治験は男性が多いです。このため、女性は医薬品の過剰摂取のリスクにさらされています。高血圧の治療薬は、男性の心臓発作による死亡リスクを下げる効果がありますが、女性だと逆に心臓関連死のリスクが高まります。診断基準も同様です。自閉症の診断基準は男子向けに開発されています。このため、女子のケースが見過ごされた結果、「自閉症は男子に多い」とされている可能性があります。AIによる医療診断補助も、今のままでは女性にとって致命的な問題が生じる可能性があります。

 このように男性中心にデータがとられ、これに基づいた技術開発が行われています。女性にとっては、目に見えない「虐待」なのです

(キャロライン・クリアド=ペレス「存在しない女たち」河出書房新社

 

 極めつけは、経済への貢献が何ら評価されていないことです。経済成長率を示す指標「GDP」が開発された時、料理や掃除といった家庭における無償労働が「除外」されました。データ収集に膨大な手間がかかることが理由です。実は、女性による無償労働は10兆ドルもGDPに貢献しているそうですが、女性は経済成長の蚊帳の外に置かれることとなりました。そして、社会保障をはじめとする各種制度は男性の世帯主を中心に構築され、現在に至っています

 特に、婚姻制度は男性と女性の関係を法的に認めることで、次世代を再生産するための「家族」を形成する役割を果たしてきました。これは、女性を家父長制の支配下に留める「仕掛け」と言えます。しかし、これからは変わっていくことでしょう。経済至上主義を追求した挙げ句、女性も家庭外での仕事に駆り出されることとなりました。帰宅したら家庭内の無給労働もあり、くたくたです。でも、経済的に自立できるとなれば話は別です。もはや家庭に縛られる必要はありません。婚姻率は低下し、婚姻制度はセーフティネットの機能を果たせなくなっています。社会保障のあり方そのものが問われるようになっているのです。(清水晶子「フェミニズムってなんですか?」文春新書)

 

 これからの社会をリードしていけるのは女性です。女性は10年先を見て生きています。心身が種を保存し、次世代につなごうとするためかもしれません。モノを買う時は、自分を取り巻く人たちのことも考えて商品を見ています。周りをよく見ているのです(日野佳恵子「女性たちが見ている10年後の消費社会」)。このため、社会のどこが脆弱で、どこをケアすればいいかを考え、協力しながら社会をまとめていくリーダーシップは、女性リーダーにこそ期待できるのです。

 どんな社会にも他者をケアするしくみは必要です。そうでないと、経済だってうまくいきません。公正、平等、ケア、環境、信頼、健康といった、これまで経済の「お荷物」とされてきた価値観が重要になっています(カトリーン・マルサル「アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?」河出書房新社)。経済至上主義が飽和しきった「人新生」の社会では、男性は口をつぐんで女性によるリードを見守るべきです。そして、女性は社会をリードしていくことを自覚するのです!

 

 

2040年、日本は「ごみの国」となる!?

2022年7月18日(月)

 エンヴィです。

 

 新型コロナがまた猛威を奮っていますね。鳴り物入りの「県民割」などはいったん中止です。でも、この連休も含めて行楽の予定を入れているみなさん、ごみの処理はちゃんと行っていますか?

 分別しているから「自分の役目は終わり」と思っていませんか。だとしたら、大いなる勘違いです。ごみクライシスの脅威が迫っています

 

 

 日本では年間約4,300万トンの一般ごみが出ていますが、焼却処理された後の残りかすは最終処分場に埋め立てられます。直接埋め立てられるものもあります。そして、全国に1,620ある埋め立て処分場は、あと20年で満杯になるそうです

 悩ましいのがプラスチックごみです。ちゃんとリサイクルされていると思われがちですが、現実は違います。6割以上が燃やされ、1割は海外に輸出、真の意味でリサイクルされているのは1割ちょっとなのです。さらに、新型コロナによって、プラスチックごみが増えます。食料品や日用品のデリバリーやネットショッピングの利用が増加し、容器・梱包資材が大量に使用されるとともに、マスクの多くが不織布やウレタンといったプラスチックでできているからです。

 世界はどうなの?と思われるかもしれませんね。主要国の「リサイクル」と「コンポスト」が占める割合(%)は以下のとおりです。

 韓国(59.2, 0.8)ドイツ(49.5, 17.8)スウェーデン(29.9, 15.9)オーストラリア(28.0, 17.7)イギリス(27.1, 16.8)アメリカ(25.1, 10.0)フランス(25.1, 18.9)

 

 日本はそれぞれ19.8%と0.4%です。一目瞭然ですね。どちらも進んでいません。ちなみに、日本のごみ処理は圧倒的に「焼却」(73.7%)です。世界には2000以上のごみ焼却施設がありますが、日本はその半分以上です。

 焼却処理の課題は、焼却炉を止めると再起動に時間がかかるので24時間稼働させなくてはならず、そのため常にごみが必要という本末転倒な状況にあることです。これでは、リサイクル等に舵を切ろうというインセンティブが働きません。紙おむつごみの問題もあります。紙おむつは水分を含んでいるので燃えにくく、多くの燃料を要します。焼却炉を傷めてしまいます。日本は高齢化が進み、大人用おむつが増加しています。

 さらによくないのが、ごみの輸出問題です。日本は世界第2位のプラスチックごみ輸出国です。輸出先は中国から東南アジア諸国、今はアフリカへと移っていっています。石油プラントが無い国にとっては輸入するのが手っ取り早いのですが、中には汚染ごみや有害物などリサイクルできないものもあります。低賃金で雇われた労働者や子どもたちが手作業で仕分けを行います。処理されないものは放置され、環境汚染につながります。「SDGs」と無縁の世界なのです。

 

 日本は先進国としての責務を果たさなくてはなりません。まずは、生産・流通の段階から、ごみを出さない工夫が必要です。欧米の取組が参考になります。EUでは、使い捨てプラスチック10品目の市場流通を禁止しています。フランスは世界で初めて食品の売れ残り品の廃棄を法律で禁止しました。ファッション業界も同様の措置に踏み切りました。

 リサイクルでは、元の製品より価値の高いものに再生することを「アップサイクル」と言います。スナック菓子からアルコール飲料まで、幅広い商品がアップサイクルされていて、アメリカでは認証システムまで設けられています。(インフォビジュアル研究所「図解でわかる14歳から知るごみゼロ社会」太田出版

 

 日本の1人1日当たりのごみ排出量は約1kgと世界第2位です。まずは、絶対量を減らさなくてはなりません。ごみ処理についても、自治体がかける費用と比べて製造企業の「委託金」はその7分の1と少ないです。委託金が、「役目は終わった」という「免罪符」になってしまっています。企業の努力と個人の意識が重要です。

 例えば、使い捨て容器・包装資材をやめることです。どうしても使用する場合は、リターナブルにして、RFIDタグを付けて管理するのです。「透明化」を図り、責任の所在を明らかにするのです(廃棄物処理・リサイクルIoT導入促進協議会「サーキュラーエコノミーを加速する『情報革命』環境新聞社)。

 そして、デポジット式にして、商品の購入者がコンビニ等を通じてこれらを返却すれば、上乗せした価格分を還元するのです。国は、ごみの流れを上流(製品の段階)から整えつつ、個々のプロセスをビジネス化する方向に誘導するのです。同時に、全国の焼却施設を集約化して減らしていきながら、リサイクル技術の研究開発に投資すべきです。ごみ箱に入れて見えなくするのではなく、ごみクライシスの現実を個人が「直視」できるようにすることが重要です。