目指せ「物流王」!第4のグローバル化を制するのはどこ?

2022年8月22日(月)

 トランだ。

 

 第4のグローバル化が静かに進行しているぜ。世界は「自国ファースト主義」に傾きかけているが、波は必ず来る。いち早く安定して商品やサービスを届けられる仕組みは、世界に安心をもたらす。第4のグローバル化を制する企業にこそ「物流王」の称号がふさわしいぜ。

 ここで、グローバル化の歴史を振り返ろう。第1のグローバル化産業革命後、イギリスを中心にスタートした。蒸気船と電信という二大技術が遠距離貿易を容易にした。その後の二つの世界大戦はまさに「自国ファースト主義」がもたらしたものだ。戦後、その反省から国際協調の道が模索される。例えば、仕組みの面では輸入関税の削減を目指したGATT、搬送技術面ではコンテナ輸送だ。こうして、第2のグローバル化が展開される。日本もこの波にうまく乗った。

 第3のグローバル化は1980年代後半からの規制緩和による市場メカニズムがエンジンとなった。しかし、リーマンショック、米中対立、イギリスのEU脱退、新型コロナ、ロシアのウクライナ侵攻を経て、各国が相互不信に陥っている。第3次世界大戦の可能性さえ指摘されている。命運を握るのは来たる「第4のグローバル化」だ。貧富の差を解消し、世界平和を実現しなくちゃならないぜ

 

 「第4のグローバル化」の特徴は、デジタル技術を全面に押し出したバリューチェーンだ。モノの移動はサプライ・チェーンで提供されるが、デジタル技術を使うことでモノの移動の量や距離を減らすことができる。そして、モノ以上に、サービス、研究開発、エンジニアリング、デザインが伝わる。

 例えば、音楽を聴くためにレコードを輸入する必要は無い。再生機器さえあればインターネットから好きな曲をダウンロードすればいいからだ。その再生機器だって、部品はいろんな国から集まる。部品も3Dプリンターを使えば手元で作れるかもしれない。原材料だけお取り寄せすればいい。このように、チェーン自体、いろんな国や地域にまたがる。世界がマルチにつながるってことだ。(マルク・レヴィンソン「物流の歴史」ダイヤモンド社

 

 搬送などロジスティクス技術だって進化するぜ。省人化と効率化だ。船舶が無人自動運航になれば海賊対策にもなる。陸ではトラックの隊列走行が見られる。倉庫ではコンピュータが音もなく検品や在庫管理を行う。ラストワンマイルにはロジスティクス・ドローンや電動無人宅配ロボットのお出ましだ。最適なコースが選択されるぜ。

 リスクや倫理もシステム内に取り込まれる。自然災害に遭遇したら輸送ルートを変更して被害を軽減する。各地の生産品目データを持っておけば、単一の国や供給ルートに依存せずに迅速に資材や部品を確保できる。新型コロナで起きたように、一国でマスクを独り占めするなんてできないぜ。物流で生じる温室効果ガスの削減にも配慮できる。不当労働もデータ管理でチェックだ。リバースチェーン(静脈連鎖)にも思いをいたそう。RFIDを活用すれば不法投棄の防止につながるぜ。(鈴木邦成ら「シン・物流革命」幻冬舎

 

 じゃあ、「第4のグローバル化」の旗手となる企業はどこだろう。アマゾンや楽天は自前配送の代表選手だ。ニトリアイリスオーヤマは製造から物流まで抑えている。ヤマト運輸は「YAMATO NEXT100」の下、宅急便のDXを推し進めている。アメリカのウォルマートは小売店をフルに活用してオムニチャネルを実現した。アリババは国内なら24時間以内、海外でも72時間以内に商品を届けられるよう、中国の主要宅配会社によるプラットフォームシステムを活用している。世界最大級の宅配会社DHLは、ウェアラブル端末で作業員の効率化を図るなど最新テクノロジーをふんだんに採り入れつつ、汎用性の高いマネジメントシステムで世界のデファクト・スタンダードの地位を狙っている。(角井亮一「物流戦略ノート」宝島社)

 

 百花繚乱といったところだが、攻略ポイントはグローバル化の歴史が教えてくれるぜ。搬送技術や情報通信技術の向上に加えて、ずばり世界標準を目指すことだ。今や一般家庭の消費対象はモノからサービス、経験へと移りつつある。背景には高齢化やレンタルサービス、シェアリングサービスといった、無駄にモノを持たなくてもよい社会の出現がある。工場・機械・土地への長期的なコミットメントも要らない。より柔軟な国際ビジネスの形が求められている。こうした標準スタイルを先取りしていくことが重要になる。

 併せて戦略的拡張が必要だ。まずは国内外をまたがって実装化し、システムを安定化させる。ここで信頼を勝ち取ることができれば、グローバル化に乗り込んでいくことができる。そのためには、目指す方向が世界の人々の幸せにつながるものでなくてはならない。「物流王」はその称号に恥じぬよう、崇高な理念を持つ必要があるんだぜ。