「お値段以上」!?日本の新型コロナ財政・金融支援策

2022年3月28日(月)

 フィナよ~。

 

 22日、令和4年度予算案が成立したわ。引き続き、新型コロナウイルス感染症対策が重要課題ね。これまでも、かなりの予算がつぎ込まれたわ。対GDP比だと、仏9.6%、独13.6%、英16.2%という中で、日本は16.5%となっていて結構なものよ。でも、なぜこんなに費用がかかったのか、冷静に分析しておく必要があるわ。だって、コロナが去った後、次にやってくるのは財政危機・・・みんなで尻ぬぐいすることになるのだから。

 

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 新型コロナウイルス感染症との戦いはハードよ。経済活動そのものを直撃するから。だから、あらゆる分野で財政・金融支援が必要になる。これがアメリカともなると、世界経済への影響がハンパないから必死さも違ってくるわ。2020年3月、米国債が売られ、株価が下がり、みんな、ドル買いに殺到したの。アメリカの中央銀行であるFRB連邦準備制度)は金融市場を落ち着かせるため、ゼロ金利施策、世界へのドル供給、地方債買入れなど、なりふりかまわず、やれることをやり尽くしたわね。(アダム・トゥーズ「世界はコロナとどう闘ったのか?」東洋経済

 こうした強力なパフォーマンスは安心感をもたらしてくれるわ。経済学の基本に、「人間は満足度を最大化する」というものがあるの。つまり、人々の気持ちが重要になってくるの。特に「現在バイアス」のおかげで、私たちは「将来」よりも「今」の楽しみを優先させてしまうの。だから、「今」の人々の気持ちは無視できない。逆に言えば、これからの財政・金融政策は、人々の心にいかに「刺さる」ものになるかが鍵になってくるわね

 

 そもそも、財政・金融って使われている言語が難しいのよね。例えば、「異次元緩和」という言葉は知ってても、それが具体的に何なのか知らないんじゃなくて。だから、たとえうまくいかなくても気にしないわよね。「異次元緩和」って、世の中に出回るお金の量を増やして、インフレ率2%を達成することで経済成長率を上げようとするものだけど、ちょっと聞いたくらいじゃ、それが世の中にとって良いことなのか分かりづらいわ。

 一方で、「インフレ」って物価が上がることだから、そこだけ聞くと遠慮被りたい話ね。1万円もらう喜びよりも1万円を失う痛みのほうがはるかに大きいという「プロスぺクト理論」の考え方からすれば、なんだかんだ言って、今のまま物価が低く抑えられているほうが、物価が上がって手持ち金を失うより断然マシよ。異次元緩和のため大金をつぎ込みながら、理解を得られるよう人々の心理に働きかけたいのであれば、「給料が上がりますよ」といったポジティブな話にしなきゃね。大規模アンケートによって意識づけする方法もいいわね。(翁邦雄「人の心に働きかける経済政策」岩波新書

 

 振り返ってみると、日本財政が政治問題化することを避けようと、合意を取り付けやすい財政・金融支援に依存してきたという構図が見えてくるわ。コロナ禍では病床も検査キットもワクチンも「足りない」とされたれど、これまで公衆衛生や医療に十分な予算措置をしてこなかったのだから当然と言えば当然ね。ツケが回ってきただけなの。

 お隣の中国や韓国は違ったわ。中国政府は新型コロナウイルスを最初からSARSやMARSのレンズを通して見ていた。だから、湖北省というたった一つの省でまん延した感染と戦うため、国家資源を総動員したの。そして、MARSを経験した韓国では、国内のバイオテック企業に対し、検査キットの開発をスピード優先で要請したわ。お金の使いどころが違うのよね。

 今必要なのは、財政・金融支援の費用対効果を念頭に置きつつ果断な対策を行えるリーダーシップと、「今」を大事にし過ぎる国民の気持ちを適切な方向に誘導する方法の検討よ。

 コロナ対策のため医療体制充実にかけた7.8兆円の費用を、コロナ病床3.9万床で割ると1床当たり2億円もかけていることになるの。これで、「病床が逼迫しています。緊急事態です。」と言われてもね~。ワクチンの費用対効果のほうが断然大きいわ。(原田泰「コロナ政策の費用対効果」ちくま新書

 今後、これまでの新型コロナ対策を振り返る機会があるでしょう。その時には是非、財政・金融支援の費用対効果をきちんと検証してほしいわ。併せて、緊急事態措置など経済活動を一時凍結させる対策については、その妥当性が話題に上がるでしょうね。こうした、「今」を耐え忍ばなければならない措置について、人々が心理的に受け入れられやすくするよう、「現在バイアス」を修正する取組とセットで行うことが必要よ。ちなみに、イギリス政府は行動洞察チーム(BIT)を設立したわ。これは、行動経済学的な知見を活用して、人々の意思決定に影響を与え、生活をよりよいものにするものよ。この機会に日本でも採用を検討してみたらどうかしら。