「両翼」経営で、デジタル化の嵐を突っ切れ!

2023年5月1日(月)

 トランだ。

 

 8日、ついに新型コロナが「5類」となる。これまでは政府支援のおかげで、企業倒産は予想以上に抑えられた。とすると、これからは倒産ラッシュもあり得る。ここからが実力勝負だぜ

 

 現代社会には企業のポジションや収益を不安定にする要因がごまんとある。感染症パンデミックのほか、人口変動、グローバル化地政学リスク、サステナビリティイノベーションなどなどだ。これらにどうやって立ち向かうか?

 解は、過去の徹底的な反省と世の中の見つめ直し、そして事業ポートフォリオを組むことだ

 

 過去の反省材料として、電機業界に起こったことを見るといい。日立製作所など大手9社の純利益率は悪化傾向が続いている。「技術大国ニッポン」の落日といえる現象だ。何が起きたのか。

 それはズバリ、デジタル化の波に乗れなかったんだ。「デジタル化」は、できる限り安く、スマートにサービスを届けることがミソだ。しかし、日本企業がとった戦略は全くの真逆。新興国との差別化を図ろうと、製品の多機能化と品質の向上を追求した。ラジカセにはMDを、テレビにはブルーレイを、パソコンにはDVDをくっつけた。日本人はこの手の「おまけ」を喜ぶが、海外ではついていけないどころか、受け入れてもらえなかった。

 むしろ、台湾や韓国、中国は堂々と価格競争を挑んできた。日本としては、早い段階からコスト競争に向き合う必要があったんだ。

 そして決定的なのは、デジタルの本質である「画期的な簡易化」を実現するための、インターネットを活用した「構想力」を欠いていたことだ。機能をゴテゴテくっつけただけでは「付加価値」にはならない。ちゃんと反省しないと、次のビッグウェーブにも乗れるか危ういぜ。(桂幹「日本の電機産業はなぜ凋落したのか」集英社新書

 

 次の波は、「ソサエティ5.0」や「Web3.0」と言われるサイバー社会の構築だ。デジタルが生活の隅々にまで浸透する。ピーク時期は2035年~45年だ。

 早速、GAFAMなどの巨大IT企業は、しのぎを削ってマーケットの獲得を進めている。恐ろしいことに、多くの従業員を正社員にせず高賃金でつなぎとめている。サイバー社会が完成すればお払い箱にするのだろう。そこまで将来を計算してるってことだぜ。(大前研一「第4の波」小学館

 

 改革が必要だぜ。まずは、事業ポートフォリオの検討だ。電機業界は「選択と集中」が再生への道とばかりにリストラが繰り返された。だが、成長の道筋は見えず、「縮小均衡」という悪循環にはまった。

 必要なのは、新しいチャンスを逃さず、果敢に挑む姿勢だ。そのためには、コア事業は守りつつ(固定翼)、その周辺事業や将来の成長基盤の準備を進める(可変翼)という「両翼経営」を心がけるべきだ。今ある資金力や技術を宝の持ち腐れにせず、事業の多角化を考えるんだ。

 事例を3つ紹介する。キーワードは、多角化、外国、多様性だ。

 

 

ヤマハ】会社に余裕がある間に、新しい仕事の糸口を作るため多角化経営に舵を切り、オートバイ製造等を開始。

ダスキン】米国からフランチャイズビジネスを学ぼうとしたことをきっかけに、米国のミスタードーナツを導入。

ユニ・チャーム】女性による営業キャラバン隊を結成し、問屋を説得して流通を抑える。世界の高齢化に対応して、大人用紙オムツ市場に参入。

(村橋勝子「社史から読み解く長寿企業のDNA」日本経済新聞出版)

 

 新たなビジネスモデルへのシフトは、既存事業を「切る」ことだ。この覚悟は並大抵じゃないぜ。大事なのは、資源ベースの再形成や再配置を考えることだ。決してゼロから新しいものを作り上げることじゃあない。(杉田浩章「10年変革シナリオ」日本経済新聞出版)

 そして、いつの時代も、謙虚さを忘れないことだ。驕る者は久しからずってね。「デジタル化」の意味を問い直しつつ、嵐を突っ切ろうぜ!