「マグネット企業」になる秘訣は給料か、やりがいか?

2023年5月8日(月)

 レーブだ。

 

 今日から新型コロナは5類だ。だが、何もかもが元どおりになるわけではない。場所に拘束されない業態ではリモートワークが進み、生活の柔軟性は増したろう。もし諸君がこれから就職を考えるとしたら、こうした業態を選ぶのだろうか。

 

 

 もちろん、職選びはリモートワークの有無だけで決まるわけではない。「対価」「内容」「生活」という3つの要素を勘案する必要がある。(渡邉正裕「『いい会社』はどこにある?」ダイヤモンド社

 そして、企業は魅力度アップに取り組む。日本は2030年に労働人口が644万人も不足し、人材の獲得競争が激しくなるからだ。企業を長く存続させるのであれば、優秀な人材を継続的に獲得していかなければならない。そのためには、人材を引き寄せる「マグネット企業」にならなくてはいけない。

 

 さて、先に挙げた3つの要素だが、どれが最も重要だと思うか?

 クチコミ情報で最も閲覧されているのは、年収・給与に関するものだ。「対価」が重要ということだ。「仕事」や「生活」にも影響する。

 ところが、「対価」をアップさせようと思ったら、企業は収益を上げなければならない。そうすると「仕事」や「生活」も整っている必要がある。働きがいは企業の業績や株価と強い相関がある。投資家はDEI(多様性、公平性、包括性)を見ている。業態や企業の特性を踏まえて3つの要素をバランシングさせることが重要だ。(大澤陽樹「1300万件のクチコミでわかった超優良企業」東洋経済

 

 ここでは、「仕事」「生活」のそれぞれについて、魅力づくりのポイントを挙げる。まずは「仕事」。鍵は「やりがい」だ

 やりがいを感じさせるには、職場の平均年齢を低めに抑えることが重要だ。目安は、平均40歳未満だ。若いうちに裁量を与え、チャレンジングな仕事を任せることが経験や自信につながる。早期に退職することになっても構わない。ファンになってもらえばよい。退職者を将来の社員候補と捉える企業もある。即戦力として30代以上のミドル人材を期待するケースもある。彼らが評価され、昇給する制度も用意しておきたい。

 キャリア選択の自由度も欲しい。「社内転職」や「海外留学」など、入社後の軌道修正のしくみがあるといい。ほとんどの企業では、希望は聞くものの、暗黙の終身雇用と引き換えに仕事内容を選ぶことはできない。これが、投資家からの評価が低い「ぬるま湯体質」の温床となっている。専門性のある複線型の人事コースが存在するかどうか、今一度点検しておこう。

 

 次に「生活」環境だ。法令遵守の意識は必須だ。2~3年後の営業利益率や1年後の株式パフォーマンスに影響する。法令遵守の意識が低い企業は労務管理も弱い。当然、優秀な人材など集まってこない。

 2022年4月に「パワハラ防止関連法」が全面施行され、6月に「改正公益通報者保護法」が施行された。人事部から完全独立した法務部門や、社労士事務所、弁護士事務所など「第三者性」を持つ相談体制を確保しておこう。

 企業によっては地方への転勤を求める場合もある。しかし、転勤を前提にすると女性は辞めてしまう。若者の受けもよくない。転勤の可能性を予見できるよう情報を開示し、働き手が正しく選択できるようにすべきだ。入社前に抱いていた企業や組織に対するイメージと、入社後のリアルな現実との乖離にショックを感じる新社会人は76.6%に上る。求める人材の姿を積極的に開示し、ギャップが生じないようにしたほうがお互いのためだ。

 

 日本の時間当たり労働生産性はG7で最下位だ。この状態は実に50年も続いている。このままだと、全員で少しずつ貧しくなっていくだけだ。「マグネット企業」は人を呼び、人を育てる。それは一企業のためだけでなく、日本全体のためにもなる。ぜひ、長期的なビジョンで対応してほしい。