「シン・働き方」で起こせ、時代の逆回転!

2020年12月7日(月)

 レーブだ。

 

 新型コロナウイルス感染症は「働き方」に大きな影響を及ぼしつつある。4日、菅首相がグリーンと併せ、「デジタル」が成長の源泉と語った。

 チャンスだ!一気に「働き方」を変えて、ライバルに差をつけよう

 

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 リモートワークはこれまでの組織形態を前提としなくなった。会社の同僚とも外部の関係者とも同じようにつながる。同僚とはメールやビジネスチャットでさっさと用事を済ませて、外部の関係者とのオンラインミーティングにより時間を割くことを可能にした。成果を上げる営業ほど特定の相手と密なコミュニケーションをとっている。

 ペーパーレスも進んだ。大型プリンター機が無い場所で仕事をすることが可能となった。こうして「場所」に縛られることが無くなった。もはや、物や不動産はさほど貴重ではなくなる。これら資源を囲い込む必要はなくなり、「人」が重要な資源となる。(落合陽一「働き方5.0」小学館新書)

 

 前回ここで「『ギグ・エコノミー』が隆盛を誇る」、「『世界規模の個人戦』の時代が到来する」と説いた。今回はその続編だ。

 組織の性質も大いに変わる。組織はチームと彼らをまとめるチームリーダーで十分成立し、中間管理職は不要となる。そして、チームを構成する「個人」の力量とともに、チームによる「組織戦」が問われる時代となる

 これからの仕事は複雑になる。したがって、1人では答えが出せない。組織に答えがあるとも限らない。みんなでトライ・アンド・エラーを繰り返しながら進める「アジャイル型」の組織が推奨される。当然、スピードも求められる。チーム内の情報共有は必須となる。

 そして、ちょうどロールプレイングゲームでパーティを組んだ剣士や魔法使い、僧侶などがそれぞれの能力を発揮して敵を倒すように、個々人の強み・弱みを理解しながら、適時に適切な能力をうまく組み合わせて活かすことが重要となる。一人が抜け駆けしてもチームの業績は上がらない。結果、他のチームに敗北することとなる。

 人事評価の体系も変えておくべきだ。個人の評価だけでなく、「チーム全体の評価」、「チーム内における『個人』の評価」をより重視すべきだ。(沢渡あまね「職場の科学」文藝春秋

 

 以上の動きが進むとどのようなことが起こるだろうか。実は「時代の逆回転」を起こすことができる。ここで、日本の組織や社会構造が作られていったこれまでの経緯を振り返ってみよう。

 明治以降、日本は西洋社会にキャッチアップしようと、当時急成長を遂げていたプロイセン(今のドイツ)を参考に官吏制度を整えていった。しかし、高等教育を受けた人材が圧倒的に不足していたことから、試験無しで大学卒業生を優先的に採用することとした。これが今に至る新卒一括採用の始まりとなった。やがて、官吏の給料が国家予算を圧迫したため昇進に制限をかける必要が生じ、一定の間は職階を留め置くという年功昇進の仕組みが整えられた。これらの慣行は、民間企業にも波及していった。

 企業は、教育機関に人材のスクリーニング、すなわち、知力・人物の保証を求めた。その結果、卒業生が何を学んだかではなく、どの学校を卒業したかが問われることとなった。こうして、学歴重視の階層社会が作られた。

 やがて、高等教育を受けた者が増え、賃金コストが上昇し、階層構造を維持することが難しくなった。このため企業は、出向や非正規雇用、女性の活用を進めることで階層の維持を図ることとした。(小熊英二「日本社会のしくみ」講談社現代新書

 

 このような階層構造のコア部分は現在も維持されている。10月13日、契約社員に退職金を支払わなかったケース、アルバイトの秘書へボーナスを支払わなかったケースの両者について、いずれも「不合理とまでは言えない」という最高裁判決が出された。

 国が進める「同一労働同一賃金」とは何だったのか、とがっかりした人も多かったことだろう。日本の社会構造が改めて再確認される判決となった。

 

 しかし、デジタル化、新型コロナウイルス感染症によって、今まさに、こうした階層構造が揺さぶられている。これまでのような組織形態は意味をなさなくなり、よりフラットになる。チーム内で「特異な能力のある人」をうまく活かせるかどうかで企業の命運が決まる大前研一「新・仕事力」小学館新書)。

 「個人」の能力や専門性がこれまで以上に問われることになり、人はより良い待遇を求めて労働市場を動いていく。採用基準も変わるだろう。どの学校を卒業したかではなく「何を学んだか」が重要となり、一括採用はかえって不必要なコストを生む。そして、「正規雇用」という言葉自体がナンセンスとなる・・・。 

 まずは官公庁が率先して取組を進めるべきだ。これこそが「働き方」改革だ。日本社会が新しい構造でもって活力を取り戻すことができる最大のチャンスが待っている!