受け止めよう!「新しい社会主義」の誕生

2022年10月17日(月)

 コノミです。

 

 プーチン大統領の発言の真意は何でしょうか?ウクライナに大規模攻撃は要らないとのことです。いよいよ終戦でしょうか。旧ソ連社会主義でした。社会主義から資本主義への移行を模索し続けるロシアの「迷走」が今回の惨劇を生みました。

 一方の資本主義も「迷走」中です。特に日本経済は「社会主義」の度合いを強めていきます。とすれば、自ら財産をつくり、守ることを本気で考えなくてはなりません

 

 「失われた30年」と言われています。バブル崩壊後に日本の経済成長率が1.0%を超えることはほとんどありませんでした。アベノミクスも例外ではありません。国が財政をどれだけつぎ込んでも、金融緩和をどれだけやっても通用しませんでした。日本の実力はそこまでだったということです

 そうこうしている間に、消費税10%への増税を約束どおり実施することとなりました。増税はタイミングが命です。景気が悪い時期だと消費者マインドを悪化させます。OECD各国を見ると、消費税導入のタイミングが高度経済成長期の場合、税収の確保が容易となり、福祉国家が誕生しています。(河野龍太郎「成長の臨界」慶應義塾大学出版会)

 

 残念ながら、日本はタイミングを逃しました。日本の高度経済成長は変動相場制への移行(ニクソン・ショック)やオイル・ショックで終わりました。それまでの間、増税できる強い経済状態には無かったのです。加えて、日本政府は「プランB」への切替えが苦手です。従来の「いけいけどんどん」の経済政策を、キャッチフレーズだけ変えながら何度も繰り返しました。その結果が、6月末現在で1,200兆円以上にまで積み上がった国の借金です。国民一人当たりにすると1000万円を超えています。(尾崎弘之「『プランB』の教科書」インターナショナル新書)

 

 貯蓄するしかありません。2019年、金融庁の審議会が「老後20~30年間で約1,300万円~2,000万円が不足する」と発表し、話題になりました。年金を含めて、国に依存するのは危険です。戦後のハイパーインフレの際、銀行預金の封鎖と新円への切換えが行われました。国民の蓄えが国に没収されたのです。

 円安が進みます。資産が溶けていきます。この先どんなに景気刺激策が採られても、国民の財布の紐は締まったままでしょう。企業も国内市場に期待せず、儲けの出る海外市場を求め続けます。少子高齢化はこうした企業行動の口実になります。

 

 そもそも、日本の高度経済成長は誤解されています。これは日本の実力というより、「幸運」によるところが大きかったのです。具体的には朝鮮戦争による特需と、戦勝国なのに内戦や共産党内のゴタゴタでもたついた中国のおかげなのです。

 その間、戦前の鐘紡のようなお家芸の繊維産業ではなく、鉄鋼や自動車などの重化学工業を輸出産業に切り替えることで奇跡のV字回復を図ることができました。実のところ、日本銀行は鉄鋼業への融資に反対していましたし、当時の通商産業省は重化学工業界の縮小を検討していました。たまたまハマったのです。そのことを忘れ、ひとえに日本人の努力や優秀さのおかげと勘違いしていると、相も変わらず「プランA」にしがみつくこととなります。(加谷珪一「縮小ニッポンの再興戦略」マガジンハウス新書)

 

 重要なのは、日本の立ち位置を客観的に捉えて「プランB」を実行すること、国民の側も賢く立ち回ることです。ここでいう「プランB」とは、輸出型産業のための円安政策を見直して、国民の購買力を高める方針に転換することです。これまでは、円安政策により、輸入品に頼る国民生活を圧迫してきました。これ以上円安を進めるとインフレのリスクも高まります。今後は逆を行うのです。円を強くし、国民の購買力を高めるとともに、輸入型産業を成長させ、国内でイノベーションを起こすのです。このスタイルは、これから少子高齢化を迎える諸外国のお手本にもなります。

 

 国内では労働者を手厚く保護することが重要です。岸田政権は、最低賃金を31円引き上げるとしました。「新しい資本主義」は国内の経済格差を小さくし、「安心と安定」という国民心理を醸成する取組なのです。これは形を変えた「社会主義」です。(中野剛志「変異する資本主義」ダイヤモンド社

 「安心と安定」のためには、社会保障を手厚くすることが必要です。そのための増税は避けて通れません。消費者マインドを悪化させないよう毎年0.5%ずつ上げていくなど、マイルドに進めるべきです。一方の国民は、ドルなどの円以外の資産を保有することでリスク分散しながら蓄えを増やしていくのです。その具体的な方法を国は指南すべきです。個人の自由を最大限に認めて経済成長を促しつつ、「安心と安定」を優先する「新しい社会主義」が、次世代のシステムとして機能することとなるでしょう。

 

薄氷のニッポン医療事情・・・「ナッジ」が解決します!

2022年10月10日(月)

 ハルです。

 

 いよいよ明日から、外国人観光客の受入れが拡大されます。個人で日本に旅行することが再び可能となります。ちょうど円安でもあり、インバウンドの復活に向け、はずみがつきそうです。

 塩野義製薬の飲み薬が治験で「効果あり」とされました。一般的な治療法として期待されています。7日には、新興・再興感染症に備えた改正法案が国会に提出されました。「ウィズコロナ」に向けた環境が整いつつあります。

 でも、過去に繰り返された「医療逼迫」を忘れてはいけません。なぜ、「医療逼迫」が起きるのでしょうか?ここに日本の医療の本質的な問題が潜んでいます

 

 

 私たちは風邪を引いたら治るまで大人しく寝ています。薬局で総合感冒薬を買って飲むこともあるでしょう。治りにくいようなら医療機関にかかります。原因を特定し、適切な治療法を選択します。では、新型コロナではどうだったでしょうか。

 新型コロナでは「検査」プロセスが入ります。早く原因菌を特定し、患者から他の人への感染拡大を防ぐ必要があるからです。感染症法に基づく正しい手順です。しかし、この度の爆発的な流行には対応し切れませんでした。

 のどが痛くなって熱が出ると、みんな「検査」によって新型コロナかどうか確認しようと医療機関に押し寄せます。このため、あっという間に外来がひっ迫します。症状が重い患者は入院となります。ベッドが埋まります。スタッフも足りません。救急車を呼んでも入院先が見つかりません。「医療逼迫」です。

 

 風邪のケースと新型コロナのケースの決定的な違いは何でしょう。

 それは、医療機関にかかるという「ハイスペックな行為」が、新型コロナでは、いとも簡単に行われたことです。患者たちの背中を押したのは、日本の医療の特色でもある「フリーアクセス」です。患者はいつでも医療機関を自由に選んでかかることができます。通常であれば大変ありがたい仕組みです。

 一方で、「フリーアクセス」の問題点は、患者の予測がつかないことです。どういう症状の患者が何人やってくるかが分からないため、無駄が生じます。患者側にとっては待ち時間が、医療機関にとっては余分なベッドやスタッフが必要となります。経営的にはできるだけ無駄を切り詰めることになります。

 加えて、医療にかかるコストに対し、自己負担は最大でも3割です。このため、受診時の経済的ハードルは低くなります。ちょっとでも不安を感じると医療機関にかかるという行動がとりやすくなっています医療機関への受診回数を見ると、日本は年間12.5回と韓国に次いで世界第2位の多さです。韓国の場合は漢方や鍼灸などの治療も含まれていることを考えると、事実上、日本が世界でトップです。(奥真也「医療貧国ニッポン」PHP新書

 こうした仕組みである以上、ぎりぎりの経営を行っている医療機関に、「検査」で不安を解消しようとたくさんの患者が押し寄せれば、「医療逼迫」を起こすのは至極当たり前なのです。

 

 根本的な解決方法は、かかりつけ医を制度化して「フリーアクセス」を制限することです医療機関は普段から患者のことを把握しています。状況を聞いて、受診が必要かどうか判断を行います。初診の場合は、「ちょっと来てもらえますか?」と診察し、状態を把握します。医療機関にとっても無駄が減りますし、患者の待ち時間も減ります。

しかし、こうした仕組みを創るには、国民や医療関係者の理解を得る必要があります。簡単なことではありません。

 

 ここで登場するのが「ナッジ」です。「ナッジ」とは、人々の選択の自由は確保した上で、予測可能な形でその選択を変える方法です。「ナッジ」には「肘で軽く押す」という意味があります。新型コロナの場合、政府の専門家会議が、「心配だからといって、すぐに医療機関を受診しないで下さい」と呼びかけ、行動変容を求めました。心にちょっとだけ刺さりやすいことを訴える行為なのです。(大竹文雄ら「医療現場の行動経済学東洋経済

 

 問題点は持続効果が弱いことです。もうひと工夫必要です。それは、「声がけ」ではなく、「形にして残す」という方法です

 具体的には、スマホを使った健康管理です。発熱などの症状が現れた人はアプリをダウンロードし、必要な情報を入力します。そして、アプリに搭載されたAIの指示に従います。指示が、「今、急いで受診する必要はありません」となっているのにも関わらず受診しようとした場合、自己負担額を増やすこととします。また、アプリを使わずに受診した場合も自己負担額を増やすこととします。医療コストを「見える化」することで、重症者を優先しているという姿勢を実感してもらうのです。

 実効性のある「ナッジ」を展開することによって、人々の当たり前のレベルが変わってきます。徐々に、日本医療の問題解決に近づけていくことが重要です。

 

世界はもう「減速」している!?

2022年10月3日(月)

 フィナよ~。

 

 ひょっとして、あなたも新型コロナウイルスにかかった?

 第7波はすさまじかったものね。まさに「感染爆発」。今でこそようやく落ち着きつつあるわ。

 ところで、感染症が収まる時の「見極め方」って知ってる?「今週」の新規陽性者数を「先週」の数字と比較するの。感染拡大当初こそは「2」を超えるけど、これが「2」を切るようになると感染拡大のスピードが落ちてきたっていう兆候なの。そして「1」に近づくと感染の終わりが見えてくるの。でも、まだ新規陽性者数が増えている段階だから、感染拡大のスピードが「減速」してるって実感はわかないわ。不思議よね。

 

 世界の動きについても似た錯覚があるわ。誰もが「加速」していると信じて疑わないでしょうね。何せテックがすごいもの。

 コンピュータの性能が1年半ごとに倍増する「ムーアの法則」は有名だけど、量子コンピュータが登場間近よ。ロボットやAIが生活のあちらこちらに顔を出す。3Dプリンターがあれば、ドラえもんの四次元ポケットのように欲しい物をその場で再現する。食料は広大な農地ではなく高層ビル内で生産される。アバターが私たちの意識をバーチャル世界に連れていってくれる。これからの100年間で2万年分の技術変化を経験することになる言う人もいるわね。

 さらに、「加速」は「加速」を呼ぶわ。時間の余裕が生まれ、技術開発に打ち込める。インターネットを使って豊富な資金や人材を調達できる。遺伝子技術でヒトの寿命が延びれば第一線で活躍し続けることだって可能よ・・・何だかお腹いっぱいになってきたわ。(ピーター・ディアマンディスら「2030年 すべてが『加速』する世界に備えよ」PUBLISHING)

 

 でも、これらを本当に「加速」と言うのかしら。小手先の変化だけで、真のイノベーションとは言えないんじゃないの。「今年はこれが流行る」っていう商品やサービスも、かつてほどワクワクしなくなってきたわ。

 むしろ、「加速」が「減速」しているという声があるわ。最大の根拠は人口よ。今世紀の中頃には、世界の人口が80~90億人で頭打ちになり、減少に転じるみたい。最大規模を誇る中国の人口増加は1968年以降減速していて、この先10年程度で絶対数も減少する。インドを含むインド亜大陸全体の人口の加速も1995年に終了していて、やはり「減速」が始まっている。こうした人口増加の「減速」が進んでいることが明らかになったのは、つい最近のことよ。「いつの間に?」っていう感じね。

 

 経済への影響も生じているわアメリカでは、学生債務や住宅ローンの増加は既に「減速」段階に入っているわ。経済が不活性化しつつあるのね。日々取り扱っている情報量も一見増えているように見えるけど、新しい情報なんてそんなに増えていない。ウィキペディアの規模拡大はむしろ「減速」している。

 テックで評価できるのは画像認識と音声認識。でも、いずれもパターン認識の域を出るものじゃない。宇宙旅行なんて夢のまた夢ね。科学論文もごまんと出ているけど、新しい発見は大量に生まれてやしない。おそらく、あなたの孫の世代の生活は、あなたの子供世代の生活とあんまり変わらない状況になっているでしょうね。(ダニー・ドーリング「減速する素晴らしき世界」東洋経済

荒木飛呂彦ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン

 悲観することはなくてよ。要は「心の持ちよう」なの。未来世界はテックが何でも解決してくれるといった楽観的予測に立つのではなく、世界の動きが「減速」していくことを前提に、必要な備えをしておくことが大切なの。

 個人の経済格差は徐々に縮まっていくわ。例えば、税金のしくみも長期戦を覚悟して消費税をベースに切り替えていくの。社会は世界レベルでフラット化するわ。物事をじっくり考える時間もできるでしょうね。これからの教育はどの国でも通用するよう本質的な内容に設定すること、複数の外国語を学ぶこと、これらを駆使して個人が思考を深められるようにすることが大事よ。目先の変化に飛びつかない冷静な判断力も養ってほしいわ。

 

 大事なのは、世の中が「減速」していると感じられるセンスを磨くこと。危機感を持つ人材を一人でも多く育てるの。国家が転落し始めると一気に衰退するわ。ヨーロッパではイギリスやドイツ、アジアでは日本がやばい。イギリスは一度衰退を経験しているわ。その理由は「変化」を嫌ったから。幸い北海油田を掘り当てて持ち直したんだけれど。(ジム・ロジャーズ「世界大異変」東洋経済

 日本はどうかしら。テックが全てを解決してくれると高をくくって必要な準備をしていないと、みんなが痛い目に遭うでしょうね。メディアがもてはやす「すごい日本」論にあぐらをかくことなく、情勢を冷静に見極めて、次世代にその「慎重さ」を引き継いでいくことが大切よ。

 

現代の救世主は「シャイな人」!

2022年9月26日(月)

  ソシエッタです。

 

 あなたは、自分のことを外向型だと思いますか?それとも内向型ですか?内向型の人にとって、外向型の人はまぶしく見えることでしょう。「知らない人にフランクに話しかけることができていいな」「友達も多いんだろうな」などと想像してしまいます。でも、ご安心を。時代は今、内向型の人を欲しています。これから「まぶしくなる」のはあなたです。

 

 私たちは、外向型の人間を称賛する価値観にどっぷりつかっています。特に近年のイノベーションは、「見た目」に重きを置く「舞台装置」となりました。典型はスティーブ・ジョブズです。Tシャツにジーンズというラフな出で立ち、ポケットからiPodをさりげなく取り出すプレゼン。彼の後にメディアに取り上げられてきたIT分野の人たちも、いかにも独特の感性を持っていそうな格好をし、そのコメントにはキラリと光るものがあり、聴く者を魅了します。ビジネス書コーナーでもてはやされる自己啓発本も、「見た目が100%」など、外面的な魅力に焦点を当てたものが主流となりました。

 

 このような「煽り運転」のおかげで、つい無理をして自分らしさを失っている人もいるのではないのでしょうか。プレゼンでは絶対に笑いをとろうとして逆にスベってしまう。「できない人」とレッテルを張られるのがいやだと、カンで即断して後で後悔するはめになってしまう・・・などです。

 無理をする必要はありません。内向型の人には外向型の人には無い良さがあるのです。むしろ、時代が不明瞭さを増している中、内向型の持つ良さにスポットライトが当たりつつあります。自信を持って下さい。そして、あなたのすぐそばにひっそりといる「シャイな人」の良さをつぶさないようにする配慮が必要です。

 

 内向型の良さは「じっくり考える」ことです。自分が言おうとしている言葉の意味を慎重に選びます。即座に反応するのが得意ではありませんが、長期記憶もしっかり活用し、常に本質を捉えようとします。予測される問題点にもいち早く気付きます。

 決して目立つ存在ではありませんが、観察者であり、リーダーとなる素質を持っています。集中力があり、ガヤガヤした環境は苦手で、エネルギーをチャージするには一人になる必要があります。ちなみに、高感度な人(HSP)の70%は内向型とされています。(ジル・チャン「静かな人の戦略書」ダイヤモンド社

 

 ビジネス書のせいで勘違いされているかもしれませんが、リーダーにカリスマは要りません。短期的成功が必ずしもその後の成功を意味しません。むしろ、チームワークが重要です。

 内向型と外向型の両方のメンバーで構成されたチームであれば非常に効果的です。スティーブ・ジョブズの場合、もう一人の「ジョブズ」、ウォズニアック・ジョブズがいました。コンピュータ革命はウォズニアックによる孤独な作業の中で生み出されました。自伝の中で彼は言います。「ひとりで働け。独力で作業してこそ、革新的な品物を生み出すことができる。」と。一人による集中的実践に効果があるのです。心理学者のチクセントミハイによれば、芸術、科学、ビジネス、政治の分野で並外れて創造的な人物の多くは孤独な思春期を過ごしていたそうです。内向型の人にとっては勇気づけられる言葉です。(スーザン・ケイン「内向型人間の時代」講談社

 さらに、謙虚な人がいいチームを生み、メンバー同士が助け合うようになります。リーダーが内向的かつ謙虚であれば言うことありません。優良企業に共通するのは謙虚なリーダーに率いられていることです。自分のエゴを育てるのではなく、自分が経営する企業を育てるリーダーが必要なのです。

 

 時代が背中を押してくれています。これまでは、優れた表現力と社交力があれば成功するという通念が浸透していました。でも、インターネットでつながる環境は「壁」を壊しました。ニーチェは、「自分に近いものはよく見えるが、遠く離れたものはよく見えない。」と言いましたが、ソーシャル・ネットワークは遠く離れた人々とのつながりを見えるようにしました。「炎上」もしやすいですが、書き言葉による「発言」がしやすい環境が整いました。内向型の人にとっては落ち着いて対処できる「居場所」にもなります。

 

 世の中が混沌とする中、新たな適者生存が始まっています。「進化のトレードオフ理論」によると、環境次第で生き残るための「重要事項」は変化します。今の「重要事項」は「雑草の戦略」です。雑草のタネの発芽のタイミングはばらばらです。こうした多様性を持つからこそ、荒れ地であっても種を保存させることができるのです(稲垣栄洋「競争『しない』戦略」扶桑社新書

 ちまたのビジネス書に惑わされることなく、多様性を尊重し、内向型人間の秘める能力を引き出して世の中に役立てることが、世界を救う王道となるのです。

 

そのペットボトルが「水戦争」を引き起こす!

2022年9月19日(月)

 エンヴィです。

 

 ペットボトルってありがたい存在ですよね。缶だと封を切ったら飲み干さないといけませんが、ペットボトルであれば、好きな時に適量を飲むことができます。炭酸だって閉じ込めておけます。今、台風14号が猛威を奮っています。災害に備えてペットボトル水を用意している人も多いことでしょう。

 

 ペットボトル水市場が大幅に拡大しています。そして、大きな問題を引き起こしています。ボトル・ウォーター産業は地球環境を最も汚染している産業の一つであり、最も規制が行われていない産業の一つでもあります。

 ペットボトル水はほとんどが地下水です。その取水先は、水が減りつつある水系に集中しています。驚くべきことに、ペットボトル水の生産には、大量の水道水が使われています。もしも、あなたが500mlのペットボトル水を飲んでいるとしたら、その2.6倍、ほぼ1.5リットルのビッグサイズ分の水を消費していることになるのです。それだったら、水道水を直接飲んだ方がはるかに「エコ」です。僕たちは水のありがたみをもっと感じなくてはならないのです。(モード・バーロウ「ウォーター・ビジネス」作品社)

 

 

 日本は水資源に恵まれています。一般家庭における1日の水の消費量は1人当たり約250L(リットル)です。しかも、風呂65L、トイレ60L、洗濯50L、炊事55Lと、ほとんどが洗浄用です。生命に必要な飲料用はわずかです。ありがたみを感じる機会が少ないわけです。(沖大幹ら「知っておきたい水問題」九州大学紙出版会)

 でも、世界は違います。それこそ、「水戦争」が起きているほどです。1967年の第3次中東戦争は、乾燥地帯における水資源の奪い合いから起きました。複数の国にまたがるナイル川インダス川の流域でも争いが起きています。

 地球上には約14㎦の水がありますが、淡水はたったの2.5%で、多くが氷山や氷河です。気候変動が地球を襲っています。氷山や氷河が溶けて塩水と混ざれば、もはや飲むことはできません。さらに、都市に人口が集中し、人々の「水ストレス」が増えています。2050年までに、アジアで10億人以上が水不足に陥るとされています。こうなると川の水は極めて貴重です。世界中で水の使用権をめぐって緊張状態が続いています。(インフォビジュアル研究所「図解で分かる14歳からの水と環境問題」太田出版

 

 日本にいると、こうした世界の厳しい現状に思いを致すことはないでしょう。ところが、日本も「水ストレス」の高い国なのです。実に、年間約800億㎦ものバーチャルウォーター(仮想水)を「農産物」という形で世界から輸入しているのです。主な輸入先は、米国、中国、豪州、タイなどで、このうち米国、中国、豪州では水資源の問題が深刻化しています。つまり、日本で水不足を感じずに済んでいるのは、他国の犠牲のおかげなのです。

 国内にも問題はあります。日本の地下水への依存度は25%ですが、地下水を汲み上げすぎると地盤沈下が生じます。実際、佐賀県新潟県魚沼市では地盤沈下が進んでいます。また、日本では硝酸性窒素による地下水汚染が深刻です。原因は肥料や畜産施設の動物の糞尿です。これらは「ノンポイント汚染」と呼ばれています。汚染の発生源を絞ることができないからです。ということは、問題への対処が広域にわたって必要になるということです。解決は容易ではありません。

 

 「地球に豊富にある海水を淡水化して使えばいいのではないか」という人もいるでしょう。既に実用化されています。アラブ首長国連邦第2の都市ドバイでは、水道水のほとんどが海水から作られていて、300万人を超える人口を支えています。そして、日本は逆浸透膜の技術を使って、中東をはじめとする国々の海水淡水化に貢献しています。でも、話はそれほど簡単ではありません。海水淡水化によって、より高濃度の塩水が排出されてしまうのです。処理のための技術開発が急がれます。

 

 結局、「清浄な水」は無料(ただ)では手に入りません。貴重な「公共財」なのです。ボトル・ウォーターについても、企業の取水や水源涵養の取組が適切かどうか、きちんと監視することが大切です。

 一人ひとりの水に対する意識はより重要です。世界の現状をもっと知らなくてはなりません。そして、行動に移す必要があります。おしゃれな水筒が店頭に並んでいます。ペットボトルの使用を止め、水筒をマイボトルにして持ち歩いてはどうでしょう。

 費用負担も有効な手段です。神奈川県秦野市では「地下水汚染対策基金」を作り、地下水の利用者から集めたお金を汚染対策に充てています。例えば、ペットボトル水に税をかけて、税収を水源地の保全に還元してはどうでしょう。

 いずれもコストがかかる話ですが、こうした取組によって世界の「水戦争」が防げるのであれば安いものです。

 

ビジネスパーソンにお薦め、偉人たちの「頭脳食」!

2022年9月12日(月)

 フーディンだよ。

 

 新型コロナの陽性者、ようやく減少してきたね~。

 それにしても、新型コロナは栄養問題に一石を投じたんだな~。これまで、結核をはじめとする感染症で死に至るのは栄養が不足していたからだったんだ。新型コロナもあんまり重症化しないんだけど、オミクロン株の場合、肥満、糖尿病、高脂血症といった生活習慣病を持ってると重症化を招くんだな~。

 

 栄養の摂り過ぎに注意しなくちゃいけないよ。お寺の僧侶は一般男性と比べて75歳時点での平均余命が4.2年長いんだって。修行時はわずか1000~1200キロカロリーしかとらないし、タンパク質や脂質の摂取量も圧倒的に少ないけど、カルシウムなどは野菜や大豆からしっかり摂っているみたい。鎌倉時代からの経験知なんだろうけど、実はこれって現代の食生活のヒントになるよ。特に、頭脳を使うビジネスパーソンは知っておいて損はないよ。(奥田昌子「日本人の病気と食の歴史」ベスト新書)

 

 社会で成功した偉人たちってどんな食生活をしていたんだろう。ちょっと覗いてみようよ。まずは徳川家康征夷大将軍として江戸幕府を開き、74歳まで生きたよ。贅沢な食事はせず、玄米に麦を加えたご飯を食べ、鳥の胸肉を好んだみたい。

 彼より先に天下統一を果たした豊臣秀吉はお魚をしっかり摂っていた。子どもの頃はドジョウを食べていたんだって。頭の回転の速さはそこからきているんだね。(週刊現代2022.7.2/9)

 科学の天才たちは一風変わっているよ。相対性理論で有名なアインシュタインの夕食はソーセージと一切れのパン。炭水化物控え目なんだね~。ルネサンスが生んだ大天才レオナルド・ダ・ヴィンチのルールは「食いたくないのに食うなかれ、軽くたべよ」、「摂取するものは十分煮て、料理は簡単に」なんだ。その200年後日本では貝原益軒が「腹八分目にとどめること」と『養生訓』という書籍に書いてるんだ。世の東西を問わず、食べ過ぎないことが健康の秘訣で脳にもいいんだな。

(真山知幸「偉人メシ伝」笠間書院

 

 人間の脳は80%近くが水でできているから、質の良い「水」を摂取することも大事だよ。面白いのは、飲む量を増やすだけで身体はより多くのカロリーを燃焼するからダイエットにも効果があるんだ。朝起きたら10分以内に450~900ミリリットルの水を飲むといいよ。

 歳をとると脳が衰えるって言うけど、栄養が豊富な環境と健全なライフスタイルがあれば、人生の後半でも脳機能は改善するんだな。例えばマグネシウムを摂取すると脳年齢が9歳若返るんだって。摂取するなら海藻類がいいね。微量栄養素たっぷりなんだ。

 

 水の次に脳の組成で多いのは脂肪だよ。「脂肪を摂るとダイエットできない」って考えないで。要は、質の良い脂肪を適度に摂るってことなんだ。脳にはバリヤーがあって、そう簡単にはモノを受け付けないんだ。脂肪をたくさん摂っても脳は肥満にならない。だからこその「質」なんだよ。最も重要な脂肪はオメガ3脂肪酸のDHA。最低でも週1回はお魚を食べて欲しいんだな~。

 偉人だと豊臣秀吉のほか、カリスマ経営者「メザシの土光さん」が有名かな。総理経験者では池田勇人元首相の夕食は魚と野菜が中心だったし、吉田茂元首相ははんぺんが好物だったんだ。ストレスを受けてもしっかり頭を働かせようと思ったらリン脂質がいいね。カツオや鶏レバー、大豆などだね。

 

 認知症の予防も大切だね。アルツハイマー病は単に記憶を失う病気ではなく、神経が損傷し、最終的には歩行や嚥下といった基本的なことができなくなって死に至る怖い病気だよ。でも、エクストラバージンオリーブオイルなら、神経炎症を軽減し、脳細胞のごみ掃除をしてくれる。また、アルツハイマー病は「3番目の糖尿病」と言われてるように、糖質を摂り過ぎると発症する確率が高くなるんだ。「じゃあ人工甘味料ならいいのか」といったらこれまた問題なんだ。毎日ダイエット炭酸飲料を飲む人は、脳卒中認知症を起こすリスクが3倍高いんだって。逆に、加齢に伴う記憶力低下を防ぐには、ダークチョコレート、キノコ、コーヒーがいいよ。(ショーン・スティーブンソン「EAT」ダイヤモンド社

 

 

 現代人はとにかく食べ過ぎなんだな~。女性の4人に1人、男性の3人に1人が肥満になってる。不必要なものを過剰に摂って、逆に体に必要な栄養素が不足してるんだ。

 一人ひとりの「食」に対する意識も必要だけど、それだけじゃ厳しいね。ご飯は人と一緒に食べると病気を防ぐ栄養素の摂取量が増える傾向にあるよ。また、ファストフード店やコンビニが協力して、健康的な食品を扱い、有害な添加物を排除してくれると効果てきめんだね。環境面を整えて、「知らぬ間に健康でいられる」という「しかけ」が必要なんだな~。そんな仕事をしてくれる「偉人」が欲しいね!

 

国難突破に欠かせないもの・・・それは「数学力」!

2022年9月5日(月)

 エディカです。

 

 ウクライナは膠着状態のようね。もしも、ロシアの勝利を阻止できなかったら、アメリカの威信は地に堕ちるわね。だって、軍事支援だけでなく、2014年から経済制裁を行ってロシアの封じ込めを狙っているもの・・・。一方で関心するのはロシアの経済力ね。経済規模は韓国と同じくらいだけれど、ここまで持ちこたえているわ。「スターバックス」そっくりの「スターズコーヒー」のしたたかさには笑っちゃったけど・・・。

 

 秘訣は人材よ。2019年のOECD調査では、高等教育の学位取得者の中でエンジニアが占める割合はロシアで23.4%と、アメリカの7.2%の3倍以上なの。不安定な情勢の中でも生産活動の再編を進めていける頭脳集団の存在は大きいわ。日本で同じパフォーマンスをとれるかしら?こうした点を見るにつけても、「数学力」を持った人材の育成は大事ね。(エマニュエル・トッド第三次世界大戦はもう始まっている」文春新書)

 

 

 実は、日本でも国難時には「理(ことわり)」を重視する集団がまとまって出現したの。以下の4つのタイプがあるわ。

①独創的な思想家(島津斉彬勝海舟織田信長ら)

開明派の官僚(大久保一翁小松帯刀石田三成ら)

③地域の知識人(福沢諭吉大村益次郎ら)

④文系的伝道者(西郷隆盛坂本龍馬豊臣秀吉ら)

 

 ①が常識を超越するビジョンを示し、②がそれを保護し、③が人材確保を政府に代わって行い、④が①のために汗をかいて世間の共感を得たの。ユニークなのは、国難時に彼らが雨後のタケノコのようにどこからともなく出現し、自発的に連携して、いつの間にか大きな存在になっている点ね。(長沼伸一郎「世界史の構造的理解」PHP

 

 現在の国際社会はグローバル化に向かって突き進んでいるわ。マーケットもメディアも「右ならえ」ね。人々はいつの間にか目に見えない「統一感」に支配されている・・・危うい話よ。6月にアメリカの連邦最高裁が中絶禁止を容認する判決を出したけど、他の地域でも同じ動きが起きないか心配だわ。このように世界が180度変わる点が文系社会の持つ危うさなの。

 でも、科学をベースにすれば、議論は一定方向に積み重ねられていく。揺らいじゃいけない長期的な観点を求めようとする場合は、やっぱり「数学力」を持った人材を重宝すべきね

 

 「数学」は物事を抽象化するわ。そこから言語を共通化し、論理の展開を可能とする。このプロセスは、私たちの思考力を鍛えてくれるし、コミュニケーションの効率化につながる。やがて科学が生まれ、その一部が技術として利用され、人類の生活に大変革を起こすの。(橋本幸士「物理学者のすごい思考法」インターナショナル新書)

 国力増強にもつながるわ。ナポレオンは全国の国立大学に「理学部」をつくったの。国力を上げるため、数学や科学を大事にしたのね。(藤原洋「数学力で国力が決まる」日本評論社

 そして、現代社会は「数学」で構成されているわ。建築には建物に入る人・物の重さに加えて、風雪や地震に耐えられるよう「構造計算」が活躍、二乗するとマイナスになる「虚数」は量子コンピュータに欠かせない、素因数分解はネット社会の暗号づくりに一役買っている、スマホ電力の残量計算には微分積分が応用されている、小惑星探査機「はやぶさ」の軌道計算には小数点以下15桁の円周率が使われている・・・という感じにね。(永野裕之「世界でいちばん素敵な数学の教室」三才ブックス

 

 これからも「数学」を教育の中でしっかり位置づけることが必要よ。数理、データサイエンス、AIに関する知識や技能でもって新しい社会のしくみや製品・サービスをデザインする能力を養っていくの。

  今、文系理系を問わず、データサイエンスを全学必修科目にしている大学が増えつつあるわ。高校では「情報科」が必修になった。中学で勉強する数学の内容は増え、算数に近い領域である「プログラミング」は小学生から必須になった。幼児期の算数教室では、パズルや積み木、工作、おままごとセットに触れさせることで、理解の定着を促しているの。いわゆる「体感算数」ね。(宮本さおり「データサイエンスが求める新しい数学力」日本実業出版社

 

 社会に出てからも「数学」は大事よ。仕事ができる人ほど、数字の大切さを知っているし、優秀な経営者は数字を詰めるわ。数字の背景にある意味を見てるの。でも、今の世の中はSNSで言葉が氾濫するなど、あまりにも数字が足りていないわ。数字やグラフ・統計を使うことでコミュニケーションにかかる無駄なコストを激減できるはずよ。(安藤広大「数値化の鬼」ダイヤモンド社

 日常生活の様々な場面で「数学」を意識して大切にすることが大事よ。こうした雰囲気が醸成されれば、いつの日か「理」の集団がわらわらっと現れて、国難を突破してくれることでしょうね。