現代の救世主は「シャイな人」!

2022年9月26日(月)

  ソシエッタです。

 

 あなたは、自分のことを外向型だと思いますか?それとも内向型ですか?内向型の人にとって、外向型の人はまぶしく見えることでしょう。「知らない人にフランクに話しかけることができていいな」「友達も多いんだろうな」などと想像してしまいます。でも、ご安心を。時代は今、内向型の人を欲しています。これから「まぶしくなる」のはあなたです。

 

 私たちは、外向型の人間を称賛する価値観にどっぷりつかっています。特に近年のイノベーションは、「見た目」に重きを置く「舞台装置」となりました。典型はスティーブ・ジョブズです。Tシャツにジーンズというラフな出で立ち、ポケットからiPodをさりげなく取り出すプレゼン。彼の後にメディアに取り上げられてきたIT分野の人たちも、いかにも独特の感性を持っていそうな格好をし、そのコメントにはキラリと光るものがあり、聴く者を魅了します。ビジネス書コーナーでもてはやされる自己啓発本も、「見た目が100%」など、外面的な魅力に焦点を当てたものが主流となりました。

 

 このような「煽り運転」のおかげで、つい無理をして自分らしさを失っている人もいるのではないのでしょうか。プレゼンでは絶対に笑いをとろうとして逆にスベってしまう。「できない人」とレッテルを張られるのがいやだと、カンで即断して後で後悔するはめになってしまう・・・などです。

 無理をする必要はありません。内向型の人には外向型の人には無い良さがあるのです。むしろ、時代が不明瞭さを増している中、内向型の持つ良さにスポットライトが当たりつつあります。自信を持って下さい。そして、あなたのすぐそばにひっそりといる「シャイな人」の良さをつぶさないようにする配慮が必要です。

 

 内向型の良さは「じっくり考える」ことです。自分が言おうとしている言葉の意味を慎重に選びます。即座に反応するのが得意ではありませんが、長期記憶もしっかり活用し、常に本質を捉えようとします。予測される問題点にもいち早く気付きます。

 決して目立つ存在ではありませんが、観察者であり、リーダーとなる素質を持っています。集中力があり、ガヤガヤした環境は苦手で、エネルギーをチャージするには一人になる必要があります。ちなみに、高感度な人(HSP)の70%は内向型とされています。(ジル・チャン「静かな人の戦略書」ダイヤモンド社

 

 ビジネス書のせいで勘違いされているかもしれませんが、リーダーにカリスマは要りません。短期的成功が必ずしもその後の成功を意味しません。むしろ、チームワークが重要です。

 内向型と外向型の両方のメンバーで構成されたチームであれば非常に効果的です。スティーブ・ジョブズの場合、もう一人の「ジョブズ」、ウォズニアック・ジョブズがいました。コンピュータ革命はウォズニアックによる孤独な作業の中で生み出されました。自伝の中で彼は言います。「ひとりで働け。独力で作業してこそ、革新的な品物を生み出すことができる。」と。一人による集中的実践に効果があるのです。心理学者のチクセントミハイによれば、芸術、科学、ビジネス、政治の分野で並外れて創造的な人物の多くは孤独な思春期を過ごしていたそうです。内向型の人にとっては勇気づけられる言葉です。(スーザン・ケイン「内向型人間の時代」講談社

 さらに、謙虚な人がいいチームを生み、メンバー同士が助け合うようになります。リーダーが内向的かつ謙虚であれば言うことありません。優良企業に共通するのは謙虚なリーダーに率いられていることです。自分のエゴを育てるのではなく、自分が経営する企業を育てるリーダーが必要なのです。

 

 時代が背中を押してくれています。これまでは、優れた表現力と社交力があれば成功するという通念が浸透していました。でも、インターネットでつながる環境は「壁」を壊しました。ニーチェは、「自分に近いものはよく見えるが、遠く離れたものはよく見えない。」と言いましたが、ソーシャル・ネットワークは遠く離れた人々とのつながりを見えるようにしました。「炎上」もしやすいですが、書き言葉による「発言」がしやすい環境が整いました。内向型の人にとっては落ち着いて対処できる「居場所」にもなります。

 

 世の中が混沌とする中、新たな適者生存が始まっています。「進化のトレードオフ理論」によると、環境次第で生き残るための「重要事項」は変化します。今の「重要事項」は「雑草の戦略」です。雑草のタネの発芽のタイミングはばらばらです。こうした多様性を持つからこそ、荒れ地であっても種を保存させることができるのです(稲垣栄洋「競争『しない』戦略」扶桑社新書

 ちまたのビジネス書に惑わされることなく、多様性を尊重し、内向型人間の秘める能力を引き出して世の中に役立てることが、世界を救う王道となるのです。