「観光立国」は、閉塞日本社会のブレイクスルー!

2019年4月15日(月)

 コノミです。

 今年のゴールデン・ウィークは10連休ですね。どこに行こうか楽しみですが、その反面、どこに行っても混雑するんだろうなあって思っちゃいます。外国から来る観光客はどう思ってるのでしょう?

 

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 2017年のインバウンド数(訪日外国人旅行者数)は2,869万人でした。2003年当時の小泉純一郎首相が「観光立国」を宣言しました。あれから15年、観光業の産業化に向けてようやく展望が開けました。(アレックス・カーら「観光亡国論」中公新書クラレ

 

 世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)の試算だと、観光産業は全世界のGDPの10%にものぼります。金額でいうと約170兆円です。しかも、国際観光市場の成長力はかなり強く、外部からの影響があってもそれほどブレないみたいです。

 国際観光客数は2015年で11.9億人です。2030年はさらに1.5倍の18億人が見込まれています。経済成長が鈍っている日本にとって、大変魅力ある分野だと思います。(デービッド・アトキンソン「世界一訪れたい日本のつくりかた」東洋経済新報社

 

 一方、観光インフラの整備は課題です。

 一つは「オーバーツーリズム」の問題です。これは、観光のために現地の環境が悪くなったと大勢の人が思う状態になることです。京都なんかに行くと以前と比べて観光客が増えて夜も賑やかですけど、騒がしくなったようにも思えます。品が無くなった感じがします。

 

 観光地が投機の対象となることも問題です。マンションやホテル、コンビニエンスストアができると、せっかくの古い町並みもまだら模様になって美観を損なっちゃいます。有名な建物のスポット(点)だけでなく地域全体(面)で観光地の魅力を守るという発想が必要です。スペインのバルセロナ市では、旧市街のホテル建設や店舗開発をゾーニング手法を使って制限しているそうですよ。

 

 二つ目は、観光資源の保全と活用です。日本には世界にない歴史文化や自然環境があります。でも、せっかくの宝が持ち腐れになっています

 みなさんも有名とされる観光地に行ってがっかりすることはありませんか?「古いだけで価値があるのかどうかわからない」「だから、何?」って突っ込みたくなることはありませんか?

 日本の文化財ハコモノだけ作って、内容の説明が不十分です。歴史文化であれば、当時の背景や人間ドラマの行動展示をするなどして、見に来る人がわくわくするような試みがあってもいいと思います。もちろん多言語対応は必要です。 

 日本の美しい自然や景観も、自然のダイナミックさが多い日本だからこそもたらされています。現地で何がしかの説明があると感慨深いものです。山梨県の某温泉施設では、浴室の壁に「フォッサマグナ」(注;日本の代表的な地溝帯)の解説が展示されています。「生きている地球」に思いを馳せながら、「ありがたいな~」とお湯を楽しむことができます。

 

 日本の文化庁の予算は年間1000億円程度です。維持管理だけで手一杯です。人口が減少して税収が減れば自ら経費を捻出していかなくてはなりません。そのためにはもっと入場料をとってもいいです。

 日本の有名な国宝や文化財の入館料・拝観料の平均は593円ですが、海外は1,891円と3倍もの開きがあります。モノの価値に見合った対価を支払うという気持ちを育てないといけません。富士山の入山料だってもっと値上げしてもいいと思います。

 

 そして、いちばん気になっているのは、日本が均質な社会から抜け出せるかどうかという点です。 日本は「横並び」や「護送船団方式」という言葉があるように、とっても平等を重んじる国です。農業や教育、医療・介護などで改革が進まない理由の一つとして、関係者間で公平でなくなるという点が問題としてよく挙がります。

 国内旅行も似た雰囲気があります。観光地の努力は大量の観光客を効率的にさばくことに向けられてしまいますし、日本のどこに行っても大体同じようなサービスを受けることになります。

 果たして、目も肥えていてリクエストに対して融通が利く個人旅行になじんでいる外国観光客に満足してもらえるでしょうか?(デービッド・アトキンソン「新・観光立国」東洋経済新報社

 

 これからの観光は、お客一人一人に個別に対応できるサービスをオプションで盛り込むことが重要です。そこで大事になってくるのが、支払ってくれる金額に応じてサービスの差をつけることが「当たり前」という感覚です。ちなみに、サービスの差をつけることが全体の底上げにつながることは、飛行機のビジネスクラス理論で証明されています。

 

 今、日本には閉塞感が漂っています。みんなをとにかく平等に扱うという理想は限界にきていることを痛感します。この閉塞感を突破するためには「脱均質化」を図る覚悟が必要です

 これは観光分野にも当てはまります。観光は外国の人を直接受け入れます。日本では「当たり前」とされていたことが外国から見ると必ずしもそうでないということに気づかされるビッグチャンスです。これからは旅行の個別化・差別化が一層進むでしょう。「観光立国」を目指すことが閉塞日本社会のブレイクスルーになると思います。

 

 今年のラグビー・ワールドカップ、2020年の東京オリンピック、2025年の大阪万博と日本では大型の国際イベントが続きます。歴史文化、自然環境、おいしい和食という有力なコンテンツを持つ日本は世界の中でも有利な立場にあります。このチャンスを活かせなければ外国からそっぽを向かれることでしょう。 一連のイベント終了後に「観光立国」といえる状態になっているかどうか、これからが正念場です。