教育はPISAをよりどころにしよう!

2020年4月6日(月)

 エディカです。

 

 2020年度の新学期スタート・・・始まったわね。新型コロナウイルスのおかげで学業も大きな影響を受けているけど・・・焦っちゃだめ。むしろ、こんなときこそ時間を上手に使うことを考えてみて。

 

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 昨年度は「センター試験」に代わって導入される「大学入学共通テスト」をめぐって大きな方針転換があったわ。一つは、英語について民間試験を導入する予定だったのを止めたこと、もう一つは数学と国語について記述式試験を導入する予定だったのを止めたことね。

 いずれも「戦後最大の改革」と呼ばれた制度改正の目玉だったから関係者のショックは計り知れないわ・・・・。そして、その激震は新しい「学習指導要領」にも及ぶかも。すでに、今回の改革は「話すこと・聞くこと」を重視しすぎているという批判もあるわ。(紅野謙介「国語教育 混迷する改革」ちくま新書

 

 でも、ちょっと待って!確かに改革の進め方には課題があったかもしれないけれど、理念については耳を傾けて欲しいわ。

 日本は明治以降、欧米に追いつき追い越せでやってきた。世界でもトップクラスの経済大国となって「答えのない時代」に足を踏み入れた。そして今、「答えのない世界」で方向性を示して組織を引っ張っていけるリーダー教育が求められている・・・

 

 世界でも、産業革命以降、製造業が経済成長の牽引役となり、少数のリーダーの指示を理解し作業ができるワーカーが多数必要だった時代は終わろうとしている。AIが人類の知性を超える「シンギュラリティ(技術的特異点)」が2045年頃にやってくるとされている。今、AIではかなわない人間の能力が求められているわ

大前研一日本の論点2020~21」プレジデント社)

 

 こうした時代の変化をとらえると、教育改革が目指そうとした「話すこと・聞くこと」の重視や「大学入学共通テスト」における記述式試験の導入は決して変な話じゃない。むしろ、状況に応じた判断力を養うための思考力、適切な判断を行うためのコミュニケーション能力を養うという点でとても重要だと思うの。

 

 そして、もう一点強調しておきたいのは、「大学入学共通テスト」という全国的なシステムによって底上げを図ろうとする国の意図ね。

 これまでの私たちの社会は、少数のエリートがいれば十分で、一部の生徒が学校で成功すればよかった・・・・でも、今、学校での成績低下が経済的コストを伴うようになって不公平を生むだけでなく、社会全体が「非効率」になっているわ

 

 こうしたことを思うと、これからの教育は、PISA(Programme for International Student Assessment;学習到達度調査)で好成績を修められるような教育システムやカリキュラムを目指すべきよ

 PISAはOECD経済協力開発機構)が教育政策にエビデンスを適用しようという考えから始まったしくみで、2001年に最初の結果が公表されたわ。PISAで高い成果を上げる教育システムの多くが、複雑な思考スキルの習得や現実世界の問題解決へのスキルの活用を重視している。また、PISAで成績上位の国は、能力や進路等のグループ別のクラス編成を行わず、全ての生徒に学ぶための平等な機会を提供しているわ。

 

 

【参考】PISA2018年調査問題例(一部改変)(文部科学省国立教育政策研究所

     (略)

 3つの資料を読んで、あなたはラバイヌ島の大木が消滅した原因は何だと思いますか。資料から根拠となる情報を挙げて、あなたの答えを説明してください。

 

 ラパイヌ島の森を破壊したのはナンヨウネズミか?

     (略)

 ネズミの数は、47日間で2倍に増えるという研究結果があります。それほどの数のネズミが育つには多くのエサが必要です。リボ氏とハント氏はこの説の根拠として、ヤシの実の残骸にネズミがかじった跡が残っている点を指摘しています。

     (略)

 

 

 日本はPISAで最上位にいたけれど、自由記述形式の成績が芳しくなかったことから教育改革に舵を切ったのね。他にエビデンスに基づいた明確な指針が無い以上、このPISAの結果を指針としてとらえることは正当化されるわ。逆にそうしないと、教育ってほとんどの人が何らかの形で体験しているから、それぞれに考えがあって簡単にまとまらないわ。

アンドレアス・シュライヒャー「教育のワールドクラス」明石書店

 

 そうした上で、中学や高校での過ごし方を見直すことが大事ね。ちなみに大前研一氏の提案・・・中高一貫教育にして1年分の授業を浮かせ、その1年間でみっちり社会人教育(ボランティアなどの社会経験、語学、プログラミング、経営学、運転技術などのスキル、消費者教育など)を行えというの・・・大賛成ね。

 

 私からは、「大学入学共通テスト」についても、高校3年の最後に行うのではなく、高校2年時に行うことを提案するわ。そうすれば、採点もじっくり行えるし、早めに結果が分かれば、入試の準備と社会人教育を効果的に行うことができるわ。

 将来の日本が必要とする人材を明確にして、より柔軟に、試験制度や教育カリキュラムを考えて欲しいわ。