諸先輩が間違えてきた!「職の選び方」

2020年6月1日(月)

 レーブだ。

 

 新型コロナウイルスの影響で今年の新入社員は不安が大きいことだろう。OJTで仕事を覚えることもままならない。頭を切り替えて、自己研鑽に時間を使っておきたい。

 

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「コンフィデンスマンJP」ポニーキャニオン

 

 世の中は長寿社会だ。人生を豊かに過ごそうと思えば一定の貯蓄が必要となる。「稼ぐ」ための「職の選択」は重要だ。ただし、ダニエル・カーネマンの研究によると年収800万円が幸福度のピークとされている。また給料と仕事の満足度の相関係数は0.15と案外低い豊かな人ほど幸福な傾向にあるものの、国レベルで見ると平均所得と平均幸福度に直接の関係は見られない。これは「イースタンパラドックス」と言われている。そして、職場で過ごす時間は長い。「満足度」を高めるためにも「職の選択」は重要だ。しかし、この「職の選択」が難しい

 

 2012年にコーネル大学が1500人の老人に「人生で最も後悔したことは?」と質問して最も多かったのはキャリア選択への未練の言葉だそうだ。日本でも厚生労働省が36万5000人を対象に調査を行ったが、入社から3年以内に会社を辞めた割合は大卒でも3割超。離職動機のトップは「思っていた仕事と実際の内容が違う」ということらしい。

 

 定説と事実が異なるということを頭に入れておくことが大切だ

 例えば、「好きなことをやりなさい」という決まり文句がある。ところが、「好きなこと」を仕事にすることが最終的な幸福感につながるかどうかは分からない。

 2015年、ミシガン州立大学が「好きなことを仕事にするのが幸せだ」と考えるタイプと「仕事は続けるうちに好きになるものだ」と考えるタイプに分けて、調査を行った。その結果、最初のうちは前者のほうが幸福度が高いが、長い目でみると後者のほうが幸福度が高いことが分かった。

 仕事のスキルについても、オックスフォード大学の調査によると、「好き」を仕事にするタイプよりも「仕事は仕事」と割り切るタイプのほうが高かった。「情熱は後からついてくるものだ」という考え方を心理学では「グロウス・パッション」と呼ぶが、「熱い」人間は続かないことが多い。冷静な選択が大事だ。

 

 また、「自分に合った職を探そう」、「自分の強みを活かそう」と性格診断や才能診断に走ることもあるだろう。しかし、これらによって適職が見つかる保証など無い。一つだけ有効と言われる方法を挙げるとすれば、人間のパーソナリティを「攻撃型」と「防御型」の2つのタイプに分ける考え方だ。「攻撃型」であれば、コンサルタント、アーティスト、テクノロジー系などより柔軟な発想が求められるような仕事が向いている。防御型であれば、事務員、技術者、弁護士など実務能力が必要な仕事が向いている。(鈴木祐「科学的な適職」CrossMedia Publishing)

 

 いずれにせよ、「定説」の危うさを認識しておくことは最初の一歩だ。さらに、新しいテクノロジーが登場すれば、古い職種が消滅し、新しい仕事や役割が生まれる。まだ生まれていない雇用は見えない。ロボットやAIが進化するだろうが、人間が「比較優位」をもっている仕事というのは常に生まれ続ける。したがって、長くて豊かな人生を送るためには、思考の柔軟性や敏捷性がいっそう必要となる。(リンダ・グラットンら「LIFE SHIFT 100年時代の戦略」東洋経済新報社

 

 ではどうすればよいか?

 

 答えは、「選択する力」を身に付けることだ。「伝説の経営者」ジャック・ウェルチは「選択と集中」と表現したが、選択した時点で結果の9割は決まる。

 誰しも最初は自信が無い。まずは、優秀な人や一線で活躍している人の選択方法から学ぼう。そうやって自分の目を肥やしていく。この時、実績を積まず情報だけを集めたような人間ではなく、ある程度失敗も重ねながら実績を上げた人間を「選ぶ」ことが大事だ。

 また、「こういう場合はこうする」といった「自分ルール」を設けよう。自分が重視するのはこれだ、と決めたらブレずに選択する。そうした試行を重ねることによって、揺らぎのない基準づくりにつながる。綿密なデータ分析よりも余計なことに頭を悩ませないことのほうが百万倍も重要だ。(土井英司「『人生の勝率』の高め方」KADOKAWA

 

 人間が厄介なのは自分と他人をすぐに比較してしまうことだ。このため、迷いが生じてしまう。「職の選択」はどうしても慎重にならざるを得ない。だからこそ、自分が自分であり続けられるような「自分ルール」を大事にしておきたい。

 そうした考え方が尊重され、当たり前となるような社会にしていかなければならない。もう、御託を並べるのはよそう。さあ、実践だ!