「日本モデル」に引導を渡して「緊急経済アラート」を発動せよ!

2020年7月20日(月)

 コノミです。

 

 新型コロナウイルス感染症の再拡大が止まりません。そんな中、「Go To キャンペーン」が始まろうとしています。

 感染による死亡リスクは怖いです。かといって、再度緊急事態宣言が出されることによって経済状態が回復不能に陥るのも怖いです。でもコトは「命」が大切か「経済」が大切か、という単純な二項対立じゃないはずです。そして、一番良くないのは、「どっちも怖い~」と身動きできなくなってしまうことです。

 

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 感染の影響を甘く見る対策は間違いなく議論を呼びます。6月にスウェーデン政府の感染症対策の責任者が、対策に改善の余地があることを認めました。同国の対策は、感染防護策はとらずに国民に集団免疫力をつけさせるという「荒療治」でした。結果、近隣諸国に比べて突出した死亡者数を出すこととなりました。

 誰しも感染のリスクは避けたいです。医療提供体制をパンクさせてはいけませんが、それ以前に経済活動が停滞するリスクを忘れてはいけません。何かのはずみ(ウイルスの遺伝子変異など)で死亡率が上がることになれば、私たちは行動制限を率先して行うでしょう。そして、スウェーデンと同じ後悔をするでしょう。

 そうであるならば、これまでのような任意の協力+持続化給付金(+休業協力金)という「お願いベース」の対策ではなく、腹をくくって、法的措置+営業補償へと舵を切るべきです。これまで世界に誇ってきた「日本モデル」の限界を素直に認めるのです。新しい措置は「緊急経済アラート」と名付けます。そして、より大事なのは、いったん舵を切ったら、元の「お願いベース」に戻さない覚悟です。

 

 ある保育園の保護者の行動を分析した研究があります。子どものお迎えに遅刻してくる保護者を減らすため保育園側が罰金を科したところ、予想に反して遅刻は増えました。理由は、それまで感じていた罪悪感をお金で解決できるようになったからです。このため、保育園側は罰金ルールを無くしました。すると、遅刻はますますひどくなってしまいました。このように、一度崩れたモラルや規範を機能させることはとても難しいのです。(山村英司「義理と人情の経済学」東洋経済新報社

 人々の心理は変容しつつあります。感染再拡大を横目に、「でも、死ぬことはないでしょ」と「ウィズ・コロナ」を受け容れつつあります。危険です。

 「お願いベース」の対策では、感染増加→経済活動の自粛→感染減少→経済活動の再開→感染増加という煮え切らないサイクルにはまってしまいます。その結果、感染を完全に抑えられず、経済回復もままなりません。

 

 今、必要なのは厳格な法的措置と確実な補償です。そして、法的措置を取る以上は徹底さが必要です。感染者の行動を「逆探知」することを法的に担保します。スマホから行動履歴を調べるのが効果的でしょう。台湾では「台湾モデル」と呼ばれる取組みによって感染が徹底的に抑えられています(人口2360万人。7月18日時点のコロナ感染者数451名。死者7名)。一連の取組みの一つに、スマホを活用した感染経路の追跡と感染者接触者全員への警告メール送信があります(NEWSWEEK 2020.7.21)。

 

 他にも、感染者が行動制限に反する行動を取っていた場合は罰金を科すことが考えられます。感染対策を怠っているお店で感染者が出た場合はお店側にも罰金を科します。悪質な場合は営業停止とします。

 その代わり、営業(再開)補償をしっかり行います。お店や企業の規模に応じた一定額を暫定的に給付します。そうしておいて、過去の営業成績を踏まえて最終金額を算出し、給付します。財源は、持続化給付金と雇用調整助成金を再整理の上、国庫からとします。国家財政は厳しくなりますが、経済が機能しなくなるよりはマシです。守るべきは経済社会システムです。(冨山和彦「コロナショック・サバイバル」文藝春秋

 ただし、経済全体の規模については、コロナ前と同じレベルに戻す必要はないです。無駄も多かったはずです。これを機会に生産性を高める視点も必要です。

 失業者には、人材が不足している介護分野などで働いていただく方法が考えられます。人材の再配分と思い切った財政投入を行いながら、国家経済の運営をしていくことが重要です

 

 経済は必ずしも全ての場合について自動回復機能を持っているわけではありません。放っておくとエンジンは停止に向かいます。財政規律は大事ですが、一時的にでも燃料を大胆に投入し、回復を見届けてから税金で回収するという長期バランス感覚が求められます。(長沼伸一郎「現代経済学の直観的方法」講談社

 今、求められるのは中途半端な対症療法ではなく断固とした外科手術です。全員が痛みを覚悟することです。「日本モデル」は祈りでしかありません。「緊急経済アラート」は正真正銘の救命措置なのです