「リカレント教育」で自分に再投資、「コロナ氷河期」を乗り越えろ!!

2021年2月8日(月)

 レーブだ。

 

 新型コロナウイルス感染症「緊急事態宣言」が1か月間延長された。新規感染者数は減少傾向にある。さらに、ワクチン接種に向けた準備が進められている。終息に向けて期待が高まる。

 しかし、経済が回復するまでどれくらいの時間を要するだろう。リーマン・ショックでは7年もの歳月を要した。雇用環境は厳しい状態が続く。時間差で「コロナ就職氷河期」が押し寄せてくる。(前川孝雄「コロナ氷河期」扶桑社)

 

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 足元では、新規労働者の採用計画が縮小している。全国の民間企業の求人総数は前年の80.5万人から68.3万人へと15.1%も減少した。有効求人倍率は雇用指標の中で景気変動に最も早く反応するが、リーマン・ショック時よりもやや早いペースで悪化している。

 今のところ、完全失業率リーマン・ショックほどではない。しかし、これは「見かけ」でしかない。企業が従業員に休業手当を支払うことを条件に助成される「雇用調整助成金」が速やかに拡充されたからだ。または、従業員をリストラすると非難を浴びるため、企業が慎重な姿勢を見せているだけかもしれない。

 

 これからは、いつまでも同じ企業に勤められるとは限らない。転職も視野に入れなければならない。一人ひとりの「生産性」がよりシビアに評価される。(鈴木亘社会保障と財政の危機」PHP新書

 解決策として、スウェーデンの取組が参考になる。同国では、1990年代に失業率が急上昇したが、政府が資金を投入し、大学に行かなかった人に大学レベルの教育を受けさせた。景気が悪い時に「逆張りの投資」をしたのだ。こうした政策の影響からか、スウェーデンではいくつになっても「学ぶ」姿勢が自然に備わっている。日本もこれにならい、国民への投資を行うべきだ。(川崎一彦ら「みんなの教育スウェーデンの『人を育てる』国家戦略」ミツイパブリッシング)

 

 そのためには、政府が「リカレント教育」を推進することだ。「経済財政運営と改革の基本方針2020」(骨太の方針)でも全国的な推進がうたわれている。ところが、国際比較でみると、25~64歳のうち大学などで教育を受けている人の割合は、イギリス16%、アメリカ14%に対し、日本は2.4%と低い。OECD平均の11%と比べても見劣りする状況にある。

 課題としては、①費用がかかる、②時間がない、③実践的なプログラムがない、④学習に関する情報を得る機会がない等が挙げられている(平成30年度内閣府生涯学習に関する世論調査」)。こうした課題を克服しなければならない。(渡邉洋一「『新しい学び』でキャリアアップ!」幻冬舎

 

 そこで、国が提供する「リカレント教育」プログラムを提案したい。具体的には、特定の年齢を対象に、一定期間、「学びのきっかけ」を提供するのだ。ここでいう特定の年齢とは、30歳、40歳、50歳といった節目を想定している。

 これらの年齢に達した者全員に案内を出し、それぞれの誕生月に1か月間、無料でオンラインによって講座を受講できるようにする。受講するかどうかは当人任せになるが、国が証明書を出せばインセンティブにはなろう。就業している者については、勤め先の協力義務を課す、教育休暇制度を整備する、といった環境づくりも必要だ。むろん、入院しているなど受講したくてもできない場合は受講期間を前後にずらしてもよいこととする。

 

 講座の内容は、その時々において重要とされているスキルのエッセンス(さわり)とする。今であれば、英語や中国語といった語学、プログラミング、ITシステムなどから選択できることとする。注意したいのは、これらはあくまでも「学びのきっかけ」であって、より深くしっかり学びたい場合は別途、独自に学ぶべきだ。

 こうしたスキルに加え、お金のリテラシー社会保障のしくみ、健康づくりといった、賢く生きていくために必要な最低限の知識に関する講座を必修課程とする。また、50歳であれば「退職後の生計の立て方」というふうに、それぞれのライフステージに沿った講座をオプションとして用意してもいいだろう。

 

 日本人は初等教育などが充実しているため、読解力や計算力のレベルは国際的にも高い。これらを土台として、一定の人生経験を積んだ上での「よりよく生きていくための学び」は一味も二味も違ってくるはずだ。

 また、講座の合間に受講者同士の交流用モジュールを設けて、横のつながりを作る試みがあってもいい。所属している組織から離れて視野を広げるのに役立つし、何よりも孤立感を減らせる。 

 とりあえず「モノ」だけ揃えておいてあとは自由に選びなさいという「リカレント教育」もあろう。しかし、悠長にしてはいられない。国としての方向性を示しつつ、強力に自己投資させていくことが大事だ。今こそ、みんなが一丸となって、「コロナ氷河期」という難局を乗り越えることが求められている。