「保育園落ちた」から5年・・・日本は死んでいる?

2021年6月21日(月)

 エディカです。

 

 「保育園落ちた、日本死ね」から5年経ったわね。2016年2月、匿名ブログで書かれ、その年の流行語大賞にもなったけど・・・流行語は死語になったかしら。

 

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 みんなは保育園に何を期待しているかしら。今は、新型コロナウイルスへの感染が怖いけど、実は、子どもを保育所等に通わせることには大きなメリットがあるわ

 例えば、子どもの「言語発達」を促すことができる。1歳を過ぎた子どもの言語発達には、家族以外の子どもや大人と関わりを持たせることが重要なの。

 早期教育も行われることになるわね。攻撃性や多動性といった周りの人と軋轢が生じるような問題行動が減少するみたい。そして、母親が高校卒だと・・・その効果がより大きくなるらしいの。次世代の格差縮小につながると期待できるわ。

 

 でも、本当に格差縮小につながるかは微妙よ。ご存知の人も多いでしょうけど、保育所に入るには「調整ルール」があって、ひとり親家庭に次いで、フルタイムの共稼ぎ家庭の子どもが優先されるようになっているの。だから、結婚や出産を機に仕事を辞めた世帯には恩恵が届きにくい・・・セーフティネットの観点からは問題ね。「保育園落ちた」人もきっとこういう家庭だったのでしょう。(酒井正「日本のセーフティネット格差」慶應義塾大学出版会)

 

 でも、当時の政権は「日本死ね」に反応したわ。少子化対策の目玉として、女性就業率80%に対応できるよう、32万人分の保育の受け皿整備を打ち立てたの。「子育てと仕事の両立」を狙ったわけね。 

 その結果、保育所等の数は平成27年に28,783施設だったのが、令和2年には37,652施設と7割以上も増加(もっとも、「認定こども園」が増えたおかげだけれど・・・)、利用児童数は274万人、待機児童数も12,439人と前年から4千人以上も減少したの。こうしてみると、成果は出ていると言っていいわね。(厚生労働省保育所等関連状況取りまとめ(令和2年4月1日)」)   

 

 でも、肝心の「少子化対策」にどれだけ貢献しているのかしら。保育所等を整備すれば出生率の引き上げに貢献するけど、すでに整備されつつある日本では、今以上の出生率の引き上げは限界があるんじゃない。

 また、「児童手当」のような現金給付も出生率を引き上げるようだけれど、効果はそれほどではないみたい。お金があっても親は子どもを増やそうって気にはならないの。「ゲイリー・ベッカーの理論」によると、子どもの「量」と「質」にはトレードオフの関係にあるの。現金給付があれば、その分、親は、私立の中高一貫校に通わせて有名大学に入学させるとか、海外留学させるとかして子どもの学歴を高めようとするんじゃない。

 それから、母親の就業率の向上にも期待が寄せられるけど、過去の分析をみると、保育所を増やせば母親の就業率が上がるっていうものでもないみたい。(山口慎太郎「子育て支援の経済学」日本評論社

 

 こうしてみると、「両立支援策」といっても、受け皿整備だけでは「子育てと仕事」の二兎を追うことは無理ね。少子化対策への効果も薄いし・・・。

 ここは、発想を逆転させるべきよ。少子化対策の目標を「量」から「質」へ変えていくこと、そのためにも母親の就業率を上げることね。

 まず、「子育てを社会全体で担う」体制づくりが大切。手っ取り早いのは義務教育課程における学力の底上げを図ること、投資を惜しまないこと。本年度から小学校の35人学級が開始されているわ。児童一人ひとりのニーズに応える教育がしやすくなるでしょうね。

 また、2019年10月から始まっている幼保無償化については、早期教育の効果を考えて、対象を3~5歳にするのではなく、親にとって一番きつい0~3歳前にシフトすべきね。

 保育の質も大事にしたいわ。そうなると、保育士を確保することが必要ね。でも、資格を持っていても実際に就業している人は3分の1・・・背景には待遇の問題があるわ。保育士の給与月額は約30万円(平均勤続年数約11年)だけど、忙しすぎて見合わないみたい。新型コロナウイルス感染症対策も大変だし。規定人数の見直しが必要かもよ。(前屋毅「疑問だらけの幼保無償化」扶桑社新書

 そして、ジェンダー平等を徹底することも忘れちゃだめね。男性の家事・育児負担割合が高い国ほど出生率も高くなっているわ。育児休暇が取得をしやすくなるよう全員に取得を義務づけること、誰しもが家事・育児が必要になることを学校で教えていくこと、この両面作戦が求められるわ。

 

 今は「量」を追うのではなく、子ども一人ひとりの「質」を追うことよ。そうすれば、仮に人口が減少したとしても、国全体の生産性はキープできる。そうして、人口構造が大きく変わった時に反転するチャンスを伺うの。日本を死なせないための一手先を見据えた戦略が必要よ。