「信頼」と「評価」の経済学~受け入れられるために必要な心構えとは?

2023年8月28日(月)

 コノミです。

 

 私たちが生きていく上で、人から「信頼」を得て「評価」されることはとても大事です。頭で分かっていても実現するのは簡単じゃないですよね。ここでは、「評価」を得るために必要な心構えを紹介します。

 

 人類の歴史は「信頼」を増やす歴史です。「信頼」が無い時代は争いが絶えませんでした。こうした社会では暴力こそが解決方法でした。

 現代では制度と政府が「信頼」です。制度はお互いの「信頼」を頼りにしています。ある実験によると、匿名の近隣住民と物を分け合うという傾向は、狩猟採集民族よりも現代アメリカの村の住民のほうが高かったそうです。部族では日常的に助け合うのですが、それはお互いをよく知っているからです。互恵性が強く働くのです。現代社会において「お互い様」の穴を埋め、「信頼」をつくっているのは制度なのです。

 政府は、政府以外による暴力の行使を違法とし、制度というメカニズムで秩序を保つことで、大規模で複雑な社会を運営しています。裏を返せば、政府が破綻するのは「信頼」が崩壊する時です。その主な理由となるのは不平等です。今、経済市場も雇用市場も細分化され、不平等があちこちで生まれやすくなっています。政府の「信頼」が揺らいでいます。マイナンバー制度も厳しい局面を迎えています。(ベンジャミン・ホー「信頼の経済学」慶應義塾大学出版会)

 

 確固たる信頼がある社会であるからこそ、他人から「評価」されることが価値を持ちます。「評価」は「21世紀の通貨」とまで言われています。ただし、「評価」を直接コントロールすることはできません。「評価」は、行動することによって物語を生み出し、行動した人をとりまくネットワークを通じて広まることで、ようやく定着するものなのです。

 そして、人の「能力」についていったん獲得した評価は定着しやすく失われにくい一方で、人の「性質」に関する評価はいつでも議論の的にされます。特に昨今のデジタル社会では、つながりが広がり、悪い評価は世界中にさらされるリスクが高まっています。(デビッド・ウォーラーら「評価の経済学」日経BP)

 故ジャニー喜多川氏の性加害問題が炎上しました。男性アイドルグループを次々と世の中に送り出した功績は誰もが認めるところですが、彼の評価は地に堕ちてしまいました。しかも、当の本人は亡くなっていて、信頼を挽回できる「謝罪」というチャンスすらありません。未来永劫、この悪評はついてまわるでしょう。

 

 重要なのは、現代社会は「信頼」が揺らぎつつあること、こうした不安定な社会におけるふるまいとして、私たちが広大なネットワークの中で生きていることを強く自覚して、「評価」されたいという気持ちを抑制しつつ正しく行動することです。こうした態度があなたにチャンスをもたらすことでしょう。