「中東」に関心のない日本人は世界から取り残される

2023年9月4日(月)

 トランだ。

 

 バスケットボールワールドカップは感動のフィナーレを迎えたな。日本はアジア地区1位でパリ五輪出場権を得たが、中東諸国もこの世界ではアジアなんだぜ。少し興味を持ってみないか。

 中東諸国はそれぞれが外国と結び付いている。例えばトルコはロシアと関係がある一方でウクライナから穀物を輸入し、ドローンを輸出している。両国の争いが日本の物価高騰に影響しているのは間違いない。つまり、中東の動きは回りまわって日本の国益に関わってくる。ここで中東を見る際の注意点を示す。

 

 

 まず強調したいのは、専門家やメディアの情報に振り回されないことだぜ。これらは

貴重だが個別すぎてミスリードしやすい。

 例えばイランは「おしん」の視聴率が90%だから親日とされている。イランで注目すべきは2015年の核合意だが、これではイランの脅威を抑え込むことはできない。合意は、核開発に対する制限事項の多くが期限付きだ。要は期限が終わればフリーということだ。こんなイランは実は親中なんだぜ。米国に与する日本は警戒されて当然だ。複眼的視点でとらえなくちゃいけない。(飯山陽「中東問題再考」扶桑社新書

 

 その上で、中東の置かれている状況を歴史と経済から理解しようぜ。中東は支配エリート層が中央集権によって近代国家を整備し、民衆から収奪を行ってきた。君主制の国もあるが、基本は大差ない。西欧の「民主主義」とは全く違うぜ。それでも「もっている」のは、豊富な石油があるからだ。おかげで医療や福祉サービスが安価で提供され、税金が安い。国に歯向かう理由が無いんだ。

 だが、豊富な石油は諸刃の刃だ。「石油の呪い」と呼ばれている。必要な物資があればオイルマネーで輸入すればいい。頑張って国内工業を育てる必要はない。ところが、石油産業の雇用吸収力は大きくないし、きつい労働は移民がやるから国民の就労機会は増えない。女性だとなおさらだ。こんな調子では先進諸国との差は縮まらない。

 トルコやイスラエルのように、ある程度経済的に成功を収めた国もある。また、バーレーンアラブ首長国連邦のドバイは、石油産業の限界を感じ、観光業や金融業に力を入れている。だが、全体的に不安定で、紛争の温床となっている

 

 もう一点はイスラム教だ。中東諸国はイスラエルを除いてゴリゴリの宗教国家と思われがちだがそうじゃない。サウジアラビア、イラン以外は、憲法に主教条項を持つだけの「名目的な宗教国家」だ。対立が生じた場合に都合よくイスラム教義が利用されているに過ぎないんだぜ。(末近浩太「中東政治入門」ちくま新書

 中東は日本にとって馴染みが薄い。しかし、アメリカによる一極支配が崩れ、中国とロシアの脅威が大きくなっている今、これらの国と関係のある中東の行動は目を凝らして見ておく必要があるぜ。

「地図でスッと頭に入る中東&イスラム」(昭文社