カスハラに犯罪心理学は役に立つ?

2023年12月11日(月)

 ソシエッタです。

 

 政局の雲行きが怪しくなってきました。政治資金パーティ問題で複数の重鎮議員の更迭が取り沙汰されています。不安な年越しになりそうです。

 さて、コロナ明けの年末商戦が始まります。デパ地下には客が殺到し、イライラが募るでしょう。ここで気を付けたいのはカスハラです。カスハラは「カスタマーハラスメント」の略です。消費者からの悪質なクレームにより従業員が受けるハラスメントです。言葉の暴力だけでなく、ひどい場合は土下座を求めたりします。

 「お客様は神様」という消費者優位の雰囲気がカスハラを生む土壌になっている可能性があります。つまりは心理的な問題です。カスハラ被害を最小化するため、犯罪心理学を用いた対策は有効なのでしょうか

鈴木マサカズ「銀座からまる百貨店お客様相談室」講談社

 心理分析によると、カスハラ加害者の持つ攻撃性には、自分の要求を押し通したい、相手に制裁を与えたい、体面を保ちたいという側面があります。そして、男性、働き盛り、年収が高いといった傾向があります。要はプライドが高いのです。クレームを論理的に伝えられるだけの能力も備えています。

 高齢化が進み、孤独感を抱える人が増えると、社会的立場と自己像との乖離から不満を感じ、他人を巻き込んでいく人が増えていくでしょう。(桐生正幸「カスハラの犯罪心理学」インターナショナル新書)

 

 アプローチとして、犯罪者プロファイリングを応用し、客との関係性を分析してデータベース化することが挙げられます。企業の中には、生成AIでカスハラ客を再現し、職員の対応力を高めようとしているところもあります。

 こうした「分類」は危険です。それは犯罪心理学の歴史から見えてきます。かつてヨーロッパでは、身体的特徴から「犯罪性」の分析が試みられました。「遺伝」論を主張した科学者もいました。でも、近年の犯罪は、犯罪者の資質というより、育ってきた環境による影響がウエイトを占めています。カスハラ問題に犯罪心理学を当てはめることは、短絡的「排除」を生み出すおそれがあります。(内山絢子「面白いほどよくわかる!犯罪心理学西東社

 

 それにクレームは、適度なものであればサービスの向上につながります。その蓄積が日本独特のきめ細やかなサービスを育んできたのです。クレームを完全に抑え込むのは本質的解決ではありません。

 重要なのは体制です。応対は複数人で、年代のバリエーションがあるといいでしょう。必ず組織的に対応することです。相手の境遇が遠因となっている可能性もあります。社会福祉分野の専門家の支援を仰いでもよいでしょう。

 消費者の意識改革も重要です。「こっちはお金を払ってるんだ」という感覚ではなく、相手にリスペクトを持つことです。そうしないと、人ではなくAI店員が応対するという味気ない社会になるでしょう。