「その財政政策の効果はあるの」と問い続けてみません?

2023年12月18日(月)

 フィナよ~。

 

 もうすぐ来年度分の予算・税制改正の案が決まるわね。物価高が続く中、岸田政権も必死の予算編成を行っていると感じるわ。でも、財政政策というものは、常に国が置かれている状況を冷静に捉えた上で打ち出すことが重要よ。

 結論から言うと、日本の現在位置における財政政策は、国の債務が大きく、高齢化が進んでいるため、効果は小さいわ。唯一効果を期待できるとしたらジェンダー平等への貢献かしら。だって、日本はジェンダー・ギャップ指数が世界125位(2023年)と最低クラスだもの。(宮本弘曉「日本の財政政策効果」日本経済新聞出版)

 

 通常は、景気後退期に政府支出が増えると消費者の信頼感が高まるんだけど、高齢化は将来の税負担や不確実性に対する懸念をもたらすから、信頼感は高まらない。さらに、高債務経済が不安を増幅させる。

 こういう時に所得税を減税するのって「悪手」ね。家計を支援する良策に思えるけれど、国民の不安を一段積み上げることにしかならないわ。そもそも源泉徴収で税負担を見えにくくしているから減税効果も見えにくいし・・・。

 むしろ、企業の「もうけ」とのバランスを考えるべきね。サラリーマンの給料はこの20年間で20ポイント下がっているけれど、企業の内部留保金は484兆円(2021年度末)とふくらんでいる。消費税が増税される一方で、所得税法人税の税収はこの30年間に約10兆円も減少している。経済規模は30%以上も拡大しているっていうのに、おかしくない?(大村大次郎「消費税という巨大権益」ビジネス社)

 

 こうした「ちぐはぐさ」は少子化対策にも表れているわ。児童手当があっても税金の扶養控除が受けられないから、実質的な支給額は年間6~7万円しかない。教育費のことを考えると厳しい金額よ。

 本来なされるべき所得の平等化が不十分だと財源が確保できず、結局、対策が中途半端になって逆効果をもたらすわ。日本は政府介入によって子供の貧困率が逆に上昇している珍しい国よ。「人」を軽視し続けたツケは重いわ。人口減少は加速する一方よ。(大西広「『人口ゼロ』の資本論講談社+α新書) 

 特に、出産という人生設計に関わる極めて私的な問題を国家が介入して変えさせることは非常に難しいものよ。あのナチスだって、「結婚資金貸付制度」によって、若いカップルに貸し付けたお金を、子どもを1人産むごとに4分の1ずつ返さなくてもよいという仕組みとして用意したけれど、多くのカップルは「もっと子どもを産もう」とはならなかったわ。(小野寺拓也ら「検証ナチスは『良いこと』もしたのか?」岩波ブックレット

 財政政策については、その効果を常に問い続けることが大事よ。「何もやらないよりはマシ」という感覚でいると「逆効果」までも見過ごしてしまうことになるわ。目を肥やし、凝らすことが大切ね。