あきらめたらそこで試合終了・・・でいいんじゃない。究極の「バーンアウト」防止法

2024年1月15日(月)

 レーブだ。

 

 23日にスラムダンクの映画『THE FIRST SLAM DANK』が1日限りで復活上映するらしい。スラムダンクと言えば、登場人物の「あきらめたらそこで試合終了ですよ」という名セリフがある。一見かっこいいが、職場で管理職が言うとパワハラになりかねない。

 

 バーンアウト燃え尽き症候群)が問題だ。バーンアウトは消耗感だけではない。有能感や達成感の低下も含まれる。身に覚えはないか。そろそろ、バーンアウトを取り巻く環境改善を進めよう

 

井上雄彦スラムダンク集英社

 バーンアウトの背景は2つある。一つは経営リスクが資本家から労働者に転嫁されたことだ。今や人件費はコストだ。安価な労働力に依存した結果、職場の人間関係は複雑になった。一方で成果は求められる。

 もう一つは製造業からサービス業への構造転換だ。サービス業は相手があって成り立つ。そこでは、営業スマイルやコミュ力が求められる。

 こんな環境でストレスがたまらないわけがない。バーンアウトは個人の問題とされがちだが、問題解決には組織的なマネジメントが必要だ。そして、より根本的には仕事に対する価値観がある。私たちは、仕事というものを、社会的、道徳的、精神的に繁栄するための確かな「道」と信じている。アイデンティティであり、存在意義であると捉えている。その結果、仕事が自分の全てとなり、精神が支配される。こうして知らず知らず追い詰められていく。(ジョナサン・マレシック「なぜ私たちは燃え尽きてしまうのか」青土社

 

 必要なのは「やめる力」だ。やめるのは「恥」と思われがちだ。しかも、やめる時には、その人の「生き方」までが問われてしまう。このため、たいていの場合、やめられず、バーンアウトしてしまう。

 しかし、自然界では我慢することに何ら価値はない。種を存続させるため優先される戦略ではない。こだわるのは人間だけだ。大きな視点で捉え、「やめる」文化を醸成するよう努力するべきだ。

 それに「やめる」ということは、すべきことを放置するということではない。臨機応変に対応するということに過ぎない。戦略を切り替え、そこに新たなエネルギーを投入すればいいのだ。(ジュリア・ケラー「QUITTING やめる力」日本経済新聞出版)

 

 「心の持ち様」が大切だ。「自分次第のこと」に集中すること。不安にいつまでも振り回されないようにすること、どうやっても解決できない問題もあると構えておくこと、そして、趣味など仕事以外に「興奮要素」を持つことだ。(片田智也「職場ですり減らないための34のやめる」ぱる出版)

 このように、「肩の力を抜く」ことを社会が容認できるよう啓発しなくてはならない。それは人としての尊厳を守ることにつながる。ぜひとも、「あきらめたら・・・いい人生がみつかった」というサクセスストーリーを上映して欲しい。