国の成長と衰退の秘密を『大分岐』から解く

2024年3月4日(月)

 コノミです。

 

 自民党の裏金問題は尾を引きそうです。これも国の衰退の表れなのでしょうか。お隣の中国では経済減速がみられます。習政権は焦っているでしょう。18世紀以降、それまで同レベルの生産水準を保っていたにも関わらず欧州に水を開けられたという『大分岐』の再来を恐れるからです。

 

 『大分岐』は2000年に米国の歴史学者ポメランツが唱えました。要因を民族の勤勉さの違いに求める人がいます。でも、誤りです。貧しい国の人々は富める国の人々より働いています。日本人もかつてアメリカ人宣教師から、「多くが怠け者で時間の経過に無頓着」と評価されていました。その国が置かれた経済環境で変わるものなのです。

 天然資源に恵まれているなど「地理的制約」に求める人もいます。これも誤りです。資源が豊富だから発展するとは限りません。むしろ、こうした地域は搾取の対象となり、その後の発展が妨げられています。ウクライナはまさにそうです。紛争の真っただ中にあります。(ハジュン・チャン「経済学レシピ」東洋経済

 

 では、国の経済成長・衰退の秘密は何なのでしょうか。「大分岐」論が教えてくれる鍵は4つです。一つは「法の支配」により、財産権や経済的自由が十分保証されていることです。民主主義であるかどうかは重要ではありません。

 二つ目は「国家権力の制御」が行われていることです。国の黎明期には専制的な中央集権システムも必要でしょう。でも、規模が大きくなるにつれて、財政運営を円滑に行う必要があります。後進国だったイギリスがスペインに勝ったのは財政力のおかげであり、それをもたらしたのは、議会が力を持ったことによるのです。

 三つ目は「文化・教育」です。西欧では国境や宗教の違いを越えて知識人のネットワークが生まれました。知識人が亡命も辞さない覚悟で知的文化を広げていくことで、イノベーションを生む土壌が培われていったのです。

(マーク・コヤマら「『経済成長』の起源」草思社

 最後の鍵は「人口制御」です。清王朝が欧州の後塵を拝することとなった最大の原因は、当時の人口増加という問題に向き合わず、農本主義的戦略を維持し、財政改革を進めなかったことです。(パトリック・カール・オブライエン「『大分岐論争』とは何か」ミネルヴァ書房

 

 こうしてみると、中国経済の復活の見通しは暗いです。焦る中国共産党によって、「国家権力の制限」がより排除されていくからです。

 日本はどうでしょう?最後の鍵にヒントが隠されています。すなわち、人口減少という問題に正面から向き合い、踏み込んだ構造改革を行えるかどうかにかかっています。そうやって、財政力をキープし、諸外国に後れをとらない道を進まなくてはなりません。かなり厳しいと思います。ですが、そうしないと日本に待っているのは「衰退への分岐路」です。